ホンダADV150試乗インプレッション 150㏄がここまで楽しいとは!!

目次

侮れないぞ、149㏄ATアドベンチャー

2020年2月14日に発売されたADV150。

「このバイク、気になっているんだよねー」

とおっしゃる方も多いのではないでしょうか?

年間販売計画が3,000台であるのに対し、既に約4,000台のオーダーがあるというのはものすごい人気ぶりですね。

その開発コンセプトは、「限界を超えていく都会の冒険者」ということですが、具体的にそれがどういうことなのか?

今回はADV150がある生活を一週間ほど体験させていただきながらその内容を詳しく解説していくことにします。



「ベースはPCX」それを忘れる大柄な車格

ADV150はPCX150をベースに開発されたオートマチックアドベンチャーバイク。

わたしも当初そう聞いて、

『以前試乗経験があるPCX125の外装をX-ADVっぽくしただけの車両なのかな?』

などと勝手に甘い想像を抱いていたのですが…。

スマートなPCX・ワイルドなADV

ADV150の車体を引きおこしてみると、その感覚は既にPCXとは別のモノ。

PCX150はADVよりもハンドル位置が低く、その形状もライダー側へ「ハ」の字に絞られていて、

このクラスのスクーターとしては標準的なポジション。

これに対して、ADVのハンドル周りは全体に位置が高く、

ガッシリとして幅のあるテーパーハンドルは実にオフロードライクな外観です。

全体のルックスも、PCX150よりかなり大柄な印象で、

PCX150よりも3㎏増となるADV150ですが、ハンドル幅と高さのおかげで引き回してみてもその重量はあまり気にならず、

どちらかといえばADV150の方が取り回しがしやすいように感じました。

短足を恨む足つき性と、広い視野をもたらすライディングポジション

シート高はPCX150より31㎜高くなっていて、身長162㎝/座高81㎝という超短足な私ですと、

両足を接地させるのはちょっと難しく、片足でかかとが少し浮く感じになりますね。

ただ、高めに設定されたハンドル位置のおかげでライダーが直立するために視点が高く、前方の視界をかなり広く感じました。

また、跨ってさらに感じるのは、ADV150はステップボード上の足のおさまり具合が絶妙であること。

これはもう、クラス上のクルーザーバイクを思わせるようなゆったりとしたライディングポジションですね。

また、タンデムステップは足を置く面が広く、質感もいいですね。

ちなみに、わたしは必要があってよく親子タンデムをします。

たいてい、スクーターの場合は車体幅が大きく、子どもの足がステップに届かないケースも多々あるのですが、

ADV150では写真のように、身長124㎝ほどの娘でも、両足を自然な形でステップに置くことができました。

関連記事;「そうだ親子でバイクに乗ろう!親子タンデムの始め方まとめ」

諸元上で比較した車両の寸法差は次の通り。

ADV150 PCX150
全長(mm) 1,960 1,925
全幅(mm) 760 745
全高(mm) 1,150 1,105
軸距(mm) 1,325 1,315
最低地上高(mm) 165 137
シート高(mm) 795 764
車両重量(kg) 134 131

もしも、店頭試乗車などで2台を比べるチャンスがあったならば、数値以上に大きな違いを感じるのではないかと思います。

感性になじむ走行性能

ADV150の磨き抜かれた乗り味、その強さと安心感を様々な場面で感じることができます。

メーターの視認性はおおむね良好

跨ってまず目に入るのが、この反転液晶のデジタルメーター。

アドベンチャーバイクとしての雰囲気を醸し出す上下2分割のメーターは、位置が高く視界に対して視点移動が小さいのが好印象。

特に、スピードメーターのフォントも大きさが適度にあるので視認性は良好です。

グラフィックで示される右下の燃費計は、上手く使えば給油までの距離を少し伸ばせそう。

カレンダー機能はお仕事の足にするのにちょっと気の利いた表示。

ファンクションボタンで切り替わるオドメーターも便利です。

ただ、カレンダー・時計・オドメーターがほぼ同じフォントで一列に並べられているため、中高年ライダーにはやや見づらく思う瞬間があるかもしれませんね。

パワーユニットには専用の味付けが

スターターボタンを押すと、エンジンがトルゥルゥルゥルゥっと優しく歌い始めました。

エンジンはPCX150と同じ水冷4ストロークOHC単気筒のKF30E型を搭載。

駆動ユニットもPCXのそれを流用してはいますが、低中速には未整地走行も考慮したADV150専用の味付けがなされているとのこと。

アクセルをグッと開けてみれば、立ち上がりに感じるトルクフィーリングは確かに期待以上で、加速感の厚みはメットの中で口元が思わずニヤけてしまうほどのものです。

手になじむ操作感

交差点などの停止時には、アイドリングストップが作動。

無音の信号待ちからアクセルを開ければ、スターターの存在を意識することなく自然な形で加速を開始してくれます。

これはライダーの感性によく馴染んで、非常に使いやすいですね。

ちなみにこのアイドリングストップには、一定電圧以下になった時に自動的にオフになる機構も備えていますが、

画像参照元;https://www.honda.co.jp/bike-accessories/ADV150/

オプションのグリップヒーターなどの電装パーツを追加して、電圧が心配な場合には任意でシステムをオフにすることもできます。

守備範囲の広い上質なサスペンション

125㏄+αのパワーと重心の高さが相まって、機敏な動きが心地よいADV150。

その乗り味の心地よさを語る上で特筆しておきたいのが、サスペンションの動きの良さです。

フロントフォークのストローク量はPCXの100㎜から、クラス最長の130mmに延長されていて、

リアサスも、同様にPCXの90㎜から120㎜のストローク量を持っています。

そのリアサスには3段レートのスプリングに、リザーバータンクを備えたダンパーが組み合わされ、

この景色は見るからに異彩を放っています。

走らせてみると、この前後サスは振動の収束が早く、路面の継ぎ目の超え方などが絶品。

「150のスクーターでこれはスゲぇなぁ!」

という声が自然に出てしまうほど、クラス上の上質な乗り味が楽しませてくれます。

ブレーキはタッチも秀逸

フロントブレーキはABS付きの2ポットキャリパーを備え、ウェーブディスクが目を引きます。

初期からズィーンと立ち上がっていく制動力はコントローラブル。

急な制動をかけてもロングストロークのサスペンションのおかげで、バランスを損なわずにスっと止まることができます。

またホンダ車には前後連動のコンビネーションブレーキが採用されることが多いのですが、

PGXにはABSのタイプとコンビネーションブレーキのタイプとがあります。

このADV150ではオフロードでのパフォーマンスを考慮し、リアブレーキにABSは非装着。

コンビネーションブレーキの採用はありません。

リアにも配されたディスクブレーキも同じくウェーブ形状のものを採用していて、レバーの入力対する反応が繊細なのが好印象。

さらにタイヤは、前後ともPCXからワンサイズUPされたデュアルパーパスタイヤを装着。

PCX150 ADV150
100/80-14M/C 48P 110/80-14M/C 53P
120/70-14M/C 55P 130/70-13M/C 57P

この幅のあるタイヤは直進時の安心感を増していて、寝かしこみの安定感も十分、優秀なサスとの協働で得られる高い接地感が、車体の動きを非常にとらえやすくしてくれています。

例えば、コーナーインではブレーキでフロントサスを沈め、リアブレーキでパワーコントロールしながらアクセルを開けていく、といったスポーティーな動きができてしまうのもADV150の凄さ。

操る感覚はもはや、スクーターの概念を改めるほど豪快なものです。

アドベンチャーバイクとしての走破性

写真から既にお気づきのように、今回撮影ロケは一面砂利で覆われた川岸で行いました。

この場所は暖かい時期にはバーベキューを楽しむ家族連れで混み合うところなので、ガレ場とはいえ、車の往来で平らにならされたところも多く、普通のタイヤでも走ることはできます。

とはいえ、場所によっては唐突な大きさの石にハンドルを取られることもあるので、以前XJR1300Lでここに来たときは相当に苦労したのを覚えています。

その記憶もあり、今回はメーカー広報車ということでかなり緊張してこのガレ場に臨んでみたのですが…、

車体の軽さと、足周りにあたえられたゆとりのおかげで、不安定にゴロつく石も恐怖感なく踏みしめることができました。

次第にこの状況を愉しめるようになり、川面をバックにした映像を得ようとさらに川に近づいてみるのですが、

ゴツゴツと石が大きく突き出て、砂利の深さが徐々に増していく中、スタンディングで重心を変えながらこのガレ場をクリアできるのが不思議です。

しかし、最低地上高がPCXよりも28㎜UPされた165㎜であるとはいえ、過信は禁物。

ある程度で切り上げたわけですが、特にスタックすることもなく、楽しみながらここまでこれた走破性はスクーターとして及第点だと言えるでしょう。

高速道路も俊敏さは十分

これまで、250㏄のいわゆるビックスクーターで高速道路を走行した経験はありますが、150㏄クラスの小型車種では初めて。

今回の試乗を前に、150㏄クラスのスクーターユーザーに、高速での印象を伺ったところ、

「エンジンを高回転で回し続けることになるので、長距離では音や振動で疲れが増しますよ。」

とのこと。

今回はそれを覚悟して高速に入ってみました。

私自身も初めは、

『原付2種に近いもので高速を走しるのって、相当必死に走ることになるんじゃないだろうか?』

と、かなり疑いながらゲートをくぐっていったのですが、

ADV150はインターチェンジの加速から、その疑念を大きく裏切り、トルクの厚みを保ったまま、60・70・80㎞/hと実にスムースな加速を見せてくれました。

その先、速度を盛っていくにも十分な余裕があるり、レーンチェンジで追い越し車線の流れに乗るにも「必死な緊張感」は無論なく、むしろ自然にこなしてくれますね。

また250㏄スクーターにある重さを感じないので、操ってみての所作がライダーの意思通りに決まってくれるのが素敵です。

また、71mm上下する可動スクリーンのウィンドウプロテクションが抜群。

両サイドのノブを引いてスクリーンを立ち上げておけば、ライダーに当たる走行風は和らげられ、メットの耳元に当たる風音もかなり穏やかなものになります。

この日の気温は一桁後半くらいでしたので、このスクリーンにはだいぶ助けられました。

恐らくこれなら、高速でロングツーリングに出ても、長く快適にライディングを楽しめるのではないかと思いますね。

また、懸念されたエンジンの音の上昇ですが、元々の音量をそう大きくは感じない上、スクリーンで整流された走行風が音の雑味を上手く消してくれています。

振動についても同様で、回転数を上げても車体がそれを上手く往なし、ライダーの疲労につながるということはなさそうです。

ただ、シートは先端部にかけてウレタンの厚みが薄くなるので、ここは若干の痛みを感じる可能性も…。

そんな時には弊社のバイク用尻痛軽減マット「バイク座シート」があれば、この素晴らしい乗り味をさらに快適にしてくれるでしょう。

バイク座シートの製品詳細はこちらです。

市街地走行での扱いやすさはもちろん、悪路では高い走破性を発揮し、高速でも快適性豊かな走りを楽しめるADV150。

これはまさに「スクーターの概念を超えた、ボーダレスなアドベンチャーバイク」。

開発コンセプト「限界を超えていく都会の冒険者」の言葉通り、可能性あふれる素敵なバイクだと思います。

ユーティリテーも充実

乗り味から考えてみると、150㏄クラスのスクーターというよりも、小型ATアドベンチャーバイクという表現の方がしっくりきそうなADV150。

しかし、PCXベースということで、スクーターとしての機能も充実しています。

キーレスシステムはPCXゆずり

キーの出し入れが不要なHonda SMART KeyシステムはPCXシリーズと同様のもの。

ICタグを持っていれば、イグニッションのON/OFFはもちろん、ハンドルロックやシート・フェールリットの開閉も可能です。

メットインスペースはラゲッジ用と割り切るべし?

シートを開けた、メットインスペースは27リットル。

内部には凹凸や段があるので、搭載するものによっては工夫がいるかもしれませんね。

ちなみに今回は、三脚やレフ板スタンドなどの長物で、最大で70㎝ほどのものもありましたが、ご覧のようにすっぽりと納めることができて、機材の運搬がいつもより楽でした。

また、シートは半開・フルオープンの2段開閉なので非常に便利。

開閉の感触に質感を感じさせているのは、巻きばねをダンパーに使用したヒンジ構造。

ここは『シンプルながらよくできているなぁ』と感心させられます。

ただ、このスペースを「メットインスペース」として使うにはヘルメットの選択が必要なようで、

ディフューザーのついたヘルメットではシートを閉めることができませんでした。

(メットはArai SZ-R Ⅳ)

メーカーの公式ホームページでは「ラゲッジボックス」と表記されているのは「なるほど」と思ったところ。

お手持ちのヘルメットによっては荷物のためのスペースとして割り切ることも必要なのかもしれませんね。

フロントインナーボックスは便利

PCXシリーズと同様に、ハンドルステムの左内側にはフロントインナーボックスが設けられていて、

これを開けると大き目のスマートフォンがすっぽり収まるスペースが出現します。

この中にはアクセサリー電源もついているので便利ですね。

ただ、この中にスマホをしまって充電する場合には問題ないのですが、防水性を高めるため蓋に設けられた突起と溝にコードを「ぎゅっ」と挟まれるので、

スマホをナビに使う際などはこの凸部分に一か所切りかけをつくって、そこからコードを通した方がいいでしょう。

精悍かつワイルドな表情

LEDの灯火類がつくるこの表情。

精悍な中にもワイルドさを感じる面構えですね。

夜間も走行してみましたが、このLEDヘッドライトのシャープな灯りは実に明るく、目にも優しい視界を確保してくれていました。

テールの灯火類も全てLED。

このテールランプには急制動の際点滅して後続車に危険を知らせる「エマージェンシーストップシグナル」を採用しています。

流石に乗車中にこれを確認することはできませんでしたが、ランプの面積が大きいので、その効果は大きいものでしょうね。



燃費の良さはアドベンチャーの必須条件

今回に市場における燃費は次の通り。

今回は市街地から少々のワインディング、高速道路からガレ場に至るまで、様々な走行シチュエーションの中での試乗でした。

ホンダが公表している1名乗車時の燃費が44.1㎞/リットル。

なので、アクセルの開け方次第ではもう少しこの数値に近づけたのだと思います。

燃料タンク容量は8リットルということで、航続距離はおよそ300㎞強といったところ。

「少ないガソリンで快適に遠くまで行けるというもの、アドベンチャーバイクとして必須要件なのだ」

と、ADV150が言っているようです。


まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回はADV150の試乗レポートをお届けしました。

実は私もそうでしたが、くADV150を始めて見る人なら、多くの人はその味は「125㏄の延長」と予想するのだと思います。

しかし、ご承知のようにADV150のデザインは、アドベンチャーバイクに新風を吹き込んだ745㏄のATスポーツバイクX-ADVの流れを汲むもの。

ただ、こうして並べてみても、ADV150の外観にはX-ADVの廉価版というような「安っぽさ」はみじんもなく、むしろ専用にあつらえられたパーツの一つ一つに質感の良さを感じます。

乗り比べてみてみるとこの2台はサイズこそ違え、アドベンチャーバイクとしてワクワク感を、シリーズ共通のテーマとして持っているのがわかります。

それは例えば外観もそうですが、加速感のモリッとした感じや、感覚的に使える馴染み良さもそうですね。

実はX-ADVにも試乗させていただいているので、その内容はこちらでお楽しみいただければと思います。

ADV150はPCXの…というより、ADVシリーズに与えられたもう一つの個性。

新ジャンルのATバイクとしてその世界観をお楽しみいただけるのではないかと思います。

ADV150 主要諸元

ADV150
車名・型式 ホンダ・2BK-KF38
全長(mm) 1,960
全幅(mm) 760
全高(mm) 1,150
軸距(mm) 1,325
最低地上高(mm) 165
シート高(mm) 795
車両重量(kg) 134
乗車定員(人) 2
燃料消費率*1
(km/L)
国土交通省届出値:
定地燃費値
(km/h)
54.5(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値
(クラス)
44.1(クラス 2-1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.9
エンジン型式 KF38E
エンジン種類 水冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm3 149
内径×行程(mm) 57.3×57.9
圧縮比 10.6
最高出力(kW[PS]/rpm) 11[15]/8,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 14[1.4]/6,500
始動方式 セルフ式
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
燃料タンク容量(L) 8.0
変速機形式 無段変速式(Vマチック)
タイヤ 110/80-14M/C 53P
130/70-13M/C 57P
ブレーキ形式 油圧式ディスク
油圧式ディスク
懸架方式 テレスコピック式
ユニットスイング式
フレーム形式 ダブルクレードル


車両協力;ホンダモーターサイクルジャパン株式会社

    ;ホンダドリーム川崎中原

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