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スーパーカブC125がバイクオブザイヤーを獲得
これまで、大型でパワーのあるバイクばかりが長くもてはやされてきたわけですが、ここへきて大注目なのがホンダのスーパーカブシリーズ。
昨年末スーパーカブC125は、AMAC:一般社団法人日本二輪車文化協会が選ぶ「第2回バイクオブザイヤー2019」において、総合6520ポイントを獲得し、その栄冠に輝きました。
映像協力・AMAC:一般社団法人日本二輪車文化協会
2017年の東京モーターショーでいち早くその姿が公開されて以来、私にとってもずっと実車に乗ってみたかったのですが、メディア向けの広報車も引っ張りだこというフィーバーぶり。
恐らくこれほどにわかに注目を浴びて、一番びっくりしているのはカブ自身もかもしれませんね。(笑)
今回、ポジドラで広報車をお借りすることができましたので、早速その魅力をお伝えしていこうと思います。
C125、その外観に酔いしれる
今回お借りしたスーパーカブC125は「パールニルタバブルー」というカラー。
自然光の下で見てみると、パールの奥ゆきがきらめいていて、これだけでもかなりの所有感を感じるのではないかと思います。
通称「カモメハンドル」や、水色のレッグシールド、そして赤いシートは昭和33年発売の初代C100をオマージュしたもの。
古(いにしえ)の形の中に光るLEDの灯火類が「現代の顔だち」を創っています。
進化は灯火類のLEDだけにとどまらず、ICタグによるキーレスシステムも採用。
この装備は、実用車としてのカブとは一線を画する、スーパーカブC125のキャラクターを印象付けているところです。
また給油時のシートの開閉も他のモデルとは違い、開閉はシート左下のボタンを押して「カチャっ」と開ける方式。
この開閉は、ICタグを持っていないとできないようになっています。
ちなみにシートを開けると、右側にボタンがあり、
これを押すことで、右のサイドカバー(書類ケース)が開くようになっています。
外観だけでなく、こうして使い勝手やその感触にまで、しっかりとした質感が与えられているのには驚かされますね。
また、インターフェイスとなるメーターも一部デジタルになっているのですが、絶妙なところでアナログ感と融合しているのがホンダの仕事の素晴らしさ。
実際このギアインジケーターは、ど真ん中に大き目の文字で表示されるので視認性がよく、大変重宝しました。
やはり4速ロータリーシフトにこれはありがたい装備ですね。
テールビューのLEDも、丸みのあるレトロでモダンな姿の中に自然な形で融合しているのが素敵。
チェーンケースなどのメタルパーツに与えられた印影のある質感が非常にエレガントです。
キャリアにちょこんと載っているのは、今回お借りしたスーパーカブC125の広報車に取り付けられていたはTAKEGAWA製のピリオンシート。
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この稿ではタンデムをしていないのですが、スーパーカブC125のデザインを犯すことなく、むしろかわいらしさをUP させている点が素晴らしいですね。
また、カブのシートといえば、本稿ポジドラの運営元、posidriveもカブにピッタリの疲労軽減シート「Dr.モペット」を販売していますので、こちらもよろしくお願いたします。
価格:14,300円 |
110とも違う「秀逸」な走り
実はこの稿の一つ前に、スーパーカブ110の試乗記を書いていました。
ホンダ スーパーカブ110試乗インプレ【カブと暮らす和みの日々】
ですので、今回はこのスーパーカブ110と入れ替える形でスーパーカブC125をお借りしているわけですが、
それだけに、2台の差がはっきりわかりますね。
車重はスーパーカブ110の99㎏に対し、スーパーカブC125は110㎏と11㎏増量。
しかし、重心の低さゆえ、マシンを引き起こして取りまわしてみても、その重さはあまり感じられません。
ハンドル周りにも漂う品格。
質感のあるスタータースイッチを押すと、スーパーカブ110よりも落ち着いたやや太めのエンジン音が左右の足の間で静かに歌い始めます。
走り出してまず感じるのは、ロータリーギアに与えられたシフトフィーリングの上質さ。
ここまでスーパーカブ110に乗ってきたので、同じ力で1速に蹴りこんでみるのですが…。
スーパーカブC125は軽くタッチするだけでカタっと変速してくれるので、思わず左足の不躾なふるまいをペダルに詫びたほどです。
走行中は4速からNに入ることの無いように安全対策が施されているのですが、停止すれば4速からNに入れることができ、信号待ちからの再加速も楽々。
ですが、せっかくシフトインジケーターがあるにもかかわらず、信号待ちでうっかりギアをニュートラルに入れ忘れてしまい、4速発進してしまうことが何度かありました。
それでも、アクセルを急がなければ、4速のままでも立派に加速するのがスーパーカブC125の凄いところです。
そんな粘りのあるエンジンは、109㏄のスーパーカブ110に対して、15㏄UPの124㏄。
スーパーカブ110ではアクセル開度に加速が追いつくまで若干のラグがあります。
対して、スーパーカブC125はアクセルに対して非常に従順な反応を見せてくれるので、
ウインカーを出して流れに乗れのが簡単なのも、スーパーカブ110とは一味違うところ。
これをクラッチ操作がいらないソフトタッチの変速で楽しめるのですから、まるでオートシフターがついているかのよう。
ひとクラス上のスムースな加速感には思わず惚れてしまいそうです。
2台のエンジンを諸元的にみると、その差は以下の通り。
最高出力 | 最高トルク | |
スーパーカブ110 | 8.0ps/7,500rpm | 8.5N・m/5,500rpm |
スーパーカブC125 | 9.7ps/7,500rpm | 10N・m/5,000rpm |
数値的にはわずかな差ですが、2台を乗り比べればこのトルクの山の盛り上がりの差に「これがたったの15㏄差か?」と思われるはずです。
そして、エンジンの豊かなトルク感もさることながら、車体の操安性もまたクラス以上のもの。
曲がる・止まるといった基本的な動作が非常に上質なのがとても好印象です。
その動きの良さを支えるのが、テレスコピックサスや、チューブレスタイヤを履いたキャストホイール。
さらにディスクブレーキを擁する足回りが、見た目と乗り味の両面で「ネオレトロ」という言葉の意味を十分に楽しませてくれます。
現時点でABSは未装備ですが、今後の規制に合わせて6月発売のCT125ハンターカブがABSを標準で装備することから、
スーパーカブC125への装着も時間の問題といったところでしょう。
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燃費もやっぱりカブだった
今回の試乗では、なかなか遠くに行く機会に恵まれませんでしたが、このスーパーカブC125が映(バ)える撮影ロケーションを求めて、都内をあちこち走り回っていました。
広報車のメーカー返却時は満タン返しが原則。
青山のホンダ本社前にあるガソリンスタンドで給油していつものように燃費計測したところ、満タン法(ヤマハRevNote)による計測では以下の通り。
ホンダが公表している1名乗車時の燃費が66.1㎞/Lなので、ちょっとアクセルの開け方がラフだったかと反省。
ですが、今回は最高燃費70.1㎞/Lを記録しているので、おおよそカタログ通りではないかと思います。
それにしても、東京多摩の自宅付近で満タンにして、たった151円で青山のホンダ本社前にたどり着けるのですから、この経済性の良さは、やはりカブならではですね。
(普段乗っている某1000㏄スポーツは都内リッター約10㎞なのでつくづくそう思います。)
C125が映える場所ってどこだろう?
先日はカブの魅力を探るべく、ホンダさんから広報車をお借りして、スーパーカブ110の試乗インプレをお伝えしたところです。
メーカーさんから広報車をお借りすると、ご紹介する車両の個性が活きる場所が良いと毎回ロケ地にはこだわっているのですが、
スーパーカブ110のインプレをお伝えした時は、のんびりと一緒にカブと過ごせる時間が楽しかったので、牧歌的な風景を求めて牧場をロケ地に選びました。
関連記事;ホンダ スーパーカブ110試乗インプレ【カブと暮らす和みの日々】
さて、今回の主役は現行のシリーズの中で最先端を行くスーパーカブC125です。
昭和33年デビュー以来の「スーパーカブ」という普遍的なデザインを踏襲しながらも、LEDの灯火類や油圧ディスクブレーキ、またICタグを使ったキーレスエントリーなどの近代装備を備えたカブだけに、『スーパーカブC125に最もふさわしいロケ地はどこだろう?』ということについては、ずいぶん頭を悩ませました。
悩んだまま、もはや半分破れかぶれのような気持でC125に跨り、ほとんどノープランで都内を流していたのですが、今だからこそスーパーカブC125が光るロケ地があることに気づいたんです。
たどり着いたのは今年オリンピックに向け着々と準備が進む新しい国立競技場の前。
新しい国立競技場は、日本の希望を象徴し、最先端の日本を世界に発信していこうというている場所ですよね。
やはり歴代最先端を行くスーパーカブC125ならば、このくらい新しい場所でなくては、と考えたわけです。
しかし、「最新」を強調するために撮ったこの写真。
いざシャッターを押していくと、初代スーパーカブC100の「面影」が前回の1964年の東京オリンピックの時代にタイムスリップさせるような不思議な気持ちになっていきました。
カブの暦(こよみ)にみるC125の カブらしさ
初代スーパーカブC100が発売されたのは1958年8月1日。
和暦でいえば昭和33年、つまりちょうど、映画「ALWAYS3丁目の夕日」の時代ですね。
この年は高度経済成長に差し掛かり、世界初の即席めん「チキンラーメン」の発売や東京タワーの完工など、新しい日本が具体的に創生されていった勢いのある時代でした。
初代スーパーカブC100のエンジンは世界初のOHV4ストローク50㏄。
4.3ps/9,500rpmは当時としては圧倒的な高出力です。
また、今のようにVベルト駆動のスクーターがない時代、片手を開けられる自動延伸クラッチの登場はどれだけ人々に驚きを与えたのだろうと思います。
画期的であり前衛的だったからこそ売れた初代スーパーカブC100。
それゆえ、スーパーカブC125が先進性を身にまとっていても、それははカブ誕生以来の精神。
歴代の先端にあるスーパーカブC125もまた、カブらしいカブなのです。
カブはいつも時代の魁(さきがけ)
初代スーパーカブC100発売当時は日本の年間オートバイ総販売台数が30万台程度の時代。
その中でスーパーカブが、たった5か月で2万4千台を売り、翌年はなんと16万7千台もの販売台数を記録したというのはあまりにも有名なお話ですね。
しかも、広告は簡単な新聞広告だけで、主に口コミで売れていったというのですから驚きです。
スーパーカブの宣伝広告が始まったのは発売3年目の昭和36年(1961年)。
大学で広告の研究をしているわたしの妻からも、
「カブの広告は当時から実に画期的なものとして注目されていた」
としばしば聞かされていました。
そこで今回はホンダの広報の方にお願いして、いくつか当時の広告映像をいただいたのですが、これには物凄く驚かされました。
例えば「フライング」と名付けられたこの広告。
どうでしょう。
車両をそのままC125 に置き換えてリメイクしても、十分刺さるカッコよさですよね。
シンプルなコピーライティング。
ちなみに今は「もっともっと自分を連れ出すんだ」というのがホンダの企業コピーですから、勢いのある広告は何か一貫性のようなものを感じます。
「太陽がいっぱい…」というこの広告も同様ですね。
一人でたたずむ時間、傍らにそっといてくれるカブの存在がそれらしくていいと思います。
「フライング」もそうですが、カブそのものよりも、カブとの付き合い方というか、カブと一緒にいる時間の楽しさをイメージさせているのがこの広告の特長ですね。
そしていただいた広告映像の中で、わたしが一番しびれたのがコレ。
お気づきでしょうか。
カブの広告は、バイクのものとして初めて女性誌に掲載されたというお話も有名なのですね。
ここに出ているのはキャンプ場でハンモックに寝そべる女性。
ちょうど今も若い女性の間でアウトドア人気が高まっているところですが、この当時から女性をターゲットに、
『カブに乗ると、こんなときめきが待っていますよ』
と「コト」を売る戦略を行っていたというのにはビビりました。
昭和も令和もカブはカブ
これらの広告は、昭和36年の最初の広告「そばも元気だおっかさん」を手がけた、東京グラフィックデザイナーズの尾形次雄氏によるものです。
実は、この稿のトップの映像…。
「おっ!」と思われた方は相当「ツウ」なカブ主様ですね。
これは「そばも元気だおっかさん」の広告のロケ地が田園調布に今も変わらぬ姿で親しまれている「兵隊屋」というお蕎麦屋さん。
実はこのお店、スーパーカブ50周年記念車のカタログ撮影地でもあるんですよ。
第一弾のカブ広告となったこの作品は、集団就職でおそば屋さんに就職した青年が、「カブがあるおかげで仕事が順調、心配いらないよ」と郷のおふくろさんに手紙を書いたという内容になっていました。
つまり、カブの利便性を生活を豊かにする「コト」の中に練り込むように表現されていたんですね。
ところで、皆さんは「モノからコトへ」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?
バイク業界は今まさに「モノからコトへ」(以下、モノコト)
一時期は、バイクファンにのスペックやスタイルなどバイクそのものを前面にアピールすれば売れた時代もありました。
しかし、バイク人口がピーク時の10分の1ほどにまで縮小した現代は、質がいいだけではモノが売ない時代だといわれています。
「その商品で自分の生活がどれほど豊かになるのか?』
つまり、「コト」アピールすることで、バイクに興味の薄い人々に楽しさをいかに訴求できるかに、業界の存亡がかかっているわけですね。
今、メディアに掲載される広告も製品から得られる楽しさをアピールする内容が多くみられるようになって、メーカー・販社ともにバイクの楽しさをリアルに体験できるイベントを各地で開催しています。
私はこうした流れを「新しいもの」として受け止めていたのですが、今回カブの歴史を知り、実は初代カブがすでにハイセンスな「モノコト」広告を展開していたのには驚かされました。
昭和≒令和
一般にスーパーカブC125は初代スーパーカブC100をオマージュした「ネオレトロモデル」として受け止められているモデルです。
わたしも、これまでこのモデルに試乗することなく外見からそう受け止めていたところも多分にありました。
しかし今回の執筆を通して、スーパーカブC125は決して懐古主義のために造られたバイクなのではないことがはっきりと判りました。
誕生以来、「人になじみ、使う人の夢を羽ばたかせること」を考え続けてきたのがカブの歴史。
スーパーカブC125が持つ走りのフレンドリーさや質感は、間違いなくこれまでカブが歩んだ歴史の延長線上にあるものであることがわかります。
しかし、「実用車=雑に扱うことを許容するバイク」という観念が広まっているのでしょうか?
2017年のモーターショーで初めてスーパーカブC125が出品された際には、この先進的でエレガントな姿に「これはカブではない」という批評も多く聞かれました。
しかし、発売2年目を迎えた2019のバイクオブザイヤー選ばれたのは、スーパーカブC125。
「本質の時代」と言われてる中で、手にした多くの人々に、このバイクの本質がより深く理解されたことが、受賞理由なのだと思います。
試乗・執筆を終えた今、私もすっかりその魅力のとりこになってしましました。
スーパーカブC125諸元
スーパーカブ C125 | |||
---|---|---|---|
車名・型式 | ホンダ・2BJ-JA48 | ||
全長(mm) | 1,915 | ||
全幅(mm) | 720 | ||
全高(mm) | 1,000 | ||
軸距(mm) | 1,245 | ||
最低地上高(mm) | 125 | ||
シート高(mm) | 780 | ||
車両重量(kg) | 110 | ||
乗車定員(人) | 2 | ||
燃料消費率 (km/L) |
国土交通省届出値: 定地燃費値 (km/h) |
69.0(60)〈2名乗車時〉 | |
WMTCモード値 (クラス) |
66.1(クラス 1)〈1名乗車時〉 | ||
最小回転半径(m) | 2.0 | ||
エンジン型式 | JA48E | ||
エンジン種類 | 空冷4 ストロークOHC 単気筒 | ||
総排気量(cm³) | 124 | ||
内径×行程(mm) | 52.4 × 57.9 | ||
圧縮比 | 9.3 | ||
最高出力(kW[PS]/rpm) | 7.1[9.7]/7,500 | ||
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 10[1.0]/5,000 | ||
燃料供給装置形式 | 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 | ||
始動方式 | セルフ式 | ||
点火装置形式 | フルトランジスタ式バッテリー点火 | ||
潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 | ||
燃料タンク容量(L) | 3.7 | ||
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング式 | ||
変速機形式 | 常時噛合式4段リターン※ | ||
変速比 | 1速 | 2.500 | |
2速 | 1.550 | ||
3速 | 1.150 | ||
4速 | 0.923 | ||
減速比(1次/2次) | 3.363/2.571 | ||
キャスター角(度) | 26°30´ | ||
トレール量(mm) | 71 | ||
タイヤ | 前 | 70/90-17M/C 38P | |
後 | 80/90-17M/C 44P | ||
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ディスク | |
後 | 機械式リーディング・トレーリング | ||
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 | |
後 | スイングアーム式 | ||
フレーム形式 | バックボーン |
車両・画像協力、諸元参照元;ホンダモーターサイクルジャパン株式会社
協力・AMAC:一般社団法人日本二輪車文化協会
商品協力:posidrive
参照記事;本田技研工業株式会社/「スーパーカブはいかにして誕生したか」