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日本の交換式BT電動二輪は、大阪から出発する!
皆さんは電動バイクと聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか?
恐らく耳馴染みのない非力なスクーターであったり、実用には今一歩及ばないネガティブなイマージかもしれませんね。
しかし、「EVなんてどうせツマラナイ」と決めつけてしまうのは次期早々です。
モビリティーの電化は世界的な課題。
世界の二輪メーカは今、電化に向けて真剣に取り組んでいるところです。
昨年4月、日本の二輪4メーカーは、「電動二輪車用交換バッテリーコンソーシアム」(以下コンソーシアム)立ち上げ、日本国内における電動2輪車の普及に向けた共同研究開発を行うことを発表しました。
そして2020年9月、コンソーシアムは都市部における大規模な電動二輪車の実証実験を開始します。
今回は一般社団法人日本自動車工業会の二輪EV普及検討会が、国立大学法人大阪大学と大阪府と連携して行う交換式バッテリー電動二輪車実証実験「e(ええ)やんOSAKA」と連携して行うもの。
バッテリー交換式電動二輪車の普及が今後の都市交通にどういったメリットをもたらしてくれるのか?
実に興味深い実験です。
交換式バッテリー二輪って何?
電動車は排気ガスを出さないため、低炭素社会の実現に有利とされているわけですが、やはり目下の泣き所は航続距離の短さと充電時間の長さです。
日本でもパーキングエリアやショッピングモールなどで電動車用の充電ステーションを見ることができます。
しかし、急速充電でもその充電時間は、80%充電するのに15分~30分かかるのだとか。
また急速充電を繰り返す中で、条件によってはバッテリーそのものの寿命を早めてしまう可能性があるというのも、燃料車からの乗り換えをためらわせる要因と言えるでしょう。
そこで、こうした電動車のネガティブな面を大きく解消できる方法として注目されているのが交換式バッテリーによる電動車の普及です。
昨今のアジア諸国では、低酸素社会の実現に向けた動きが活発になっているようで、
↑台湾メーカーGOGORO社の交換バッテリーステーションの一例
こうした交換式バッテリー2輪のためのインフラも整備されてきています。
この動きに1歩出遅れた感のある日本メーカーですが、彼らもこうしたアジアメーカーと提携するなどして、それぞれ独自の基礎研究を行いながらノウハウを蓄積してきたところです。
現状、国内メーカーのバッテリー交換式電動二輪車では、既にヤマハがe-VINOを一般発売し、ホンダもPCX ELECTRICを法人向けにリースしています。
しかし、上の写真を見てもお分かりのように、バッテリーの規格も両車で違い、車体のシステム自体も全く異なる方式を採用しています。
なので、各メーカー間でバッテリーの規格を統一すれば、どこのステーションが自分のバイクに適合するかをいちいち確かめなくて済みますし、単一規格のインフラであればその整備もスムースになるはずですよね。
つまり、コンソーシアムは、バッテリー交換式電動2輪車の共通規格を検討・共通仕様の開発を目的とし、電動2輪車を環境に優しい持続可能な都市交通戦略に一つとなるよう、メーカーの垣根を越えて設立されたものなのです。
バッテリー交換式2輪が克服すべき課題
昨年私は、「現時点の国内メーカー製EV2輪到達点」を知るべく、上記2台をそれぞれのメーカーさんからお借りして試乗取材を行いました。
ヤマハe-Vinoの場合
まず原付一種の規格で造られているe-Vinoですが、ルックスは旧Vinoに準じた かわいらしいスタイル。
この見かけ通り、パワーも実にかわいらしく、平地でも30㎞/hを出すのがやっと。
なので、1300㏄の白いオートバイに速度違反で捕まることはまずないでしょう。
ただ、私は東京の丘陵地帯に住んでいるので、e-Vinoに自宅周辺の連続した丘を越えさせるのは、この車両にとってほとんどイジメのような状況で…。
坂の頂上付近ではアクセル全開で30秒間だけパワーを盛ってくれるブーストボタンを押しつつ両足で地面を蹴りながらながら、まさに人機一体となってライダーも一緒に頑張っていました。
メーカーが公表するバッテリー1本当たりの航続可能距離は30km/hの定地走行で29㎞。
しかし、満充電から約3㎞でバッテリーメーターが欠けはじめ、約12㎞でパワーセーブモードのカメさんが出現。
バッテリーの残りも風前の灯火となり、「やばいよやばいよ」と言う出川哲郎の気持ちを肌で感じられるようになります。
しかし、充電さえすれば給油が必要ないというのは魅力。
オプションで予備バッテリーを搭載することもできるので、例えば平地の街で半径10㎞以内の脚にするには有利なのかもしれません。
ただ、漫画「ゆるキャン」でビーノでキャンプに行く女の子の話がありますが、e-Vinoでは多分無理ですね。(笑)
使い方はかなり限定されるものになると思います。
ちなみに、0から満充電までに要する時間は3時間ほど。
職場や学校で「充電させてもらえませんか?」と聞いてOKならば良いのですが、やはり充電時間を待たずに満充電のバッテリーと交換できるバッテリーステーションの必要性を感じました。
Honda PCX ELECTRIC の場合
一方のPCX ELECTRICは原付二種としてき企画された車両。
一見、燃料車のPCXと同じように見えますが、
ボディーワークはバッテリーの積載量を確保するために設けられたパワーユニットハンガーにより、ホイールベースが65㎜延長された専用のもの。
このおかげで、乗り味はかなり安定感のあるものになっています。
また、丘陵地でも速度が落ちるようなことはなく、加速も実にスムースで速力にしても十分。
音もなく滑るように走る感覚は爽快で、乗り味そのものはかなり好印象でした。
しかしながら、やはり気になったのが航続距離の短さ。
HONDAが公表する1充電あたりの航続可能距離は41㎞ということでしたが、このとき約18㎞走ったところでバッテリー残量は既に49%を消費。
だいたい公表値通りなのですが、これは「41㎞くらい走れますよ」ということではなく、「大体20㎞走ったら引き返してくださいね」という意味であることを知ったのでした。
PCX自慢の広いラゲッジスペースを犠牲にして搭載されるバッテリーは2本。
多少の時間差をもってこの2本から電力を消費していくわけですが、燃料車と同等な走りを実現するために2本を協調しながら使うシステムになっているので、40㎞の航続が可能というのは「バッテリー2本で」という意味になります。
そして、実用面で一番気になったのはバッテリー単体の重さ。
なんとこのバッテリー、一本の重さが10㎏もあり、横にいた妻も「これは女性にはきついわね」と言っていました。
付属の電源コードを使えば家庭用電源100vでバッテリーを搭載したまま充電することも可能なのですが、我が家のマンションの駐輪場には電源がないため、10㎏×2本を走行ごとに両手に持って運ばなければなりません。
恐らくこれは、仕事帰りで疲れていたら、ちょっと苦行かもしれませんね。
また、0から満充電までの時間は約6時間。
しかもこの充電中はぐぉーんという電子レンジのような低い音がかなり大きく、居間での充電は家族からNGを食らったほどなので、ワンルームにお住まいならばこれはかなり難儀すること必至です。
法人向けリースのみの展開となっているのもこれを知れば納得できるわけですが、それをしても動力性能が燃料車と比較してもそん色がない点は大いに尊重されるべきことでしょう。
そもそもEV2輪って、ツマラナイの?
ここまでご紹介してきたのは、主に電動スクーターの例。
「変速機もなければ音もない、そんな電動車なんて面白いわけがない」
と、やがてEV化していく2輪の世界を悲観視する方も少なくはないと思います。
しかし、2輪のEV化は決して悪いものではなく、むしろ電動だからできる面白いバイクというのも既に考案されています。
例えば、2018年に発表された台湾メーカーKYMCOの「SUPER NEX」。
このバイクは電動車でありながらクラッチや6速ミッションを持ち、従来の燃料車が持つ官能的な操作性と共に、音響発生装置で「バイクの声」をも演出しているというEVバイク。
電動車は高回転でのトルクが伸びないので、これを補いながら「異次元のSS」ともいうべき動力性能を発揮知ると言われています。
しかも、定格出力1kw以上・全長2.5m以下という軽二輪に相当するため、大型免許も車検もいらないというのも大きな魅力です。
加えて、今年6月にイタリアのメーカー「2election」が発表した「EMULA」というバイクに至っては、音の再現をするのみならず、
2ストロークや4ストロークのガソリンエンジン車(単気筒~多気筒車まで)の多彩な振動、操作感を再現できるMcFly(マクフライ)テクノロジーを搭載した電動バイクになっています。
発売は未だ未定ということですが、これらの乗り味は早く味わってみたいものですね。
こうして海外メーカーの躍進が目立つEV2輪、昨年からMotoGPに電動車クラスのMotoEのレースが一部併催されるようになったことも、電動二輪の可能性や期待値を大きくしているわけですが、日本メーカーも相当に健闘中。
昨年マン島TTで六連覇を達成した「神電 八(しんでん はち)」の活躍や、ヤマハのTY-E、さらには昨年のモーターサイクルショーで発表されたホンダの電動オフロードマシンCR ELECTRIC PROTOTYPE(CRエレクトリック プロトタイプ)の存在は、日本の電動二輪車の未来が決してツマラナイものではないことを証明してくれています。
こうしたハイパフォーマンスEVバイクの場合、今はほとんどが充電式のものですが、将来的にこうしたバイクのノウハウが市販車に活かされ、それらが街を走るころには交換式バッテリーを積んだものになって、環境に優しいEVツーリングが実現するかもしれませんね。
可能性は育てるもの
現時点のバッテリー交換式電動二輪車は、一般的に使うにはいくつかまだハードルが残っているのが、ここまででの話で具体的にお分かりいただけたのではないかと思います。
ただ、現時点でも運行管理のできる事業所であれば、かなり優位なものになるのではないかと思います。
コンソーシアムの幹事を務める本田技研工業は今年(2020年)1月、日本郵政に交換式バッテリー(PCX Electricと同等のシステム)を持ったベンリーeを納入し、2019年度で200台、今年度はさらに約2,000台納入する計画だと発表しました。
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耐久性を必須とする郵便車で電動2輪が鍛え上げられるのであれば、日本のEV車の一般化には大事な礎になると思います。
さらにステーションでバッテリーを交換できるインフラが整ってくれば、ネガティブな面の多くは解消されるはずですね。
それでも、現時点のシステムでは一日の交換頻度がかなりの回数になるのは必至。
一回の交換にライダーが払うコストがガソリン並みであったなら、燃料車の方が維持費が安いという皮肉な結果になってしまうので、そのあたりをどう解決していくのか?
電池単体の重量の軽減や、航続距離の延伸を含め、「e(ええ)やんOSAKA」の社会実験を私は大きな期待感を持って見守りたいと思います。
協力;株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
ヤマハ発動機販売株式会社