郵便局から始まるEV2輪の未来!Benry:e導入でいよいよ加速開始

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郵便局へEV2輪の配備開始

本田技研工業と日本郵便株式会社は、2017年3月23日に締結した協業に関しての覚書に基づいて、2020年1月17日より

郵便配達業務で電動二輪車の使用を開始しました。

今回配備されるのは、2019年3月の東京モーターサイクルショーのワールドプレミアとして披露された電動二輪車「BENLY e:(ベンリィ イー)」。

手初めにこの3月までに新宿・渋谷・上野・日本橋の都内4局で200台を導入し、業務上の実用性を見ながら2020年度は2000台を首都圏の近距離配達エリアと、一部の地方主要都市の郵便局にも順次配備が進められ、2021年初頭までには都内の郵便配達二輪車の2割ほどがEV化する見込みです。



正直、今の国産EV2輪ってどうよ?

まもなく訪れる電動モビリティーの時代。

これまで私はモーターサイクルジャーナリストという立場から、現在国内でリリースされている国産EV2輪の現状を知っておこうと思い、一般発売されているヤマハe-Vinoと、法人向けリースという形でリリースされているホンダのPCX ELECTRICについて試乗させていただきました。

ここでは少し、その時のインプレッションから「今のEV2輪」についてお話しておこうと思います。

ヤマハ e-Vinoの場合

例えば出川哲郎さんが番組で乗っているヤマハの「e-vino」の場合は一充電当たり約29㎞。(メーカー諸元によります。)

 

しかしながら、以前ヤマハさんからお借りした時にはオプションのスペアバッテリーキットもついていましたが、

それを使っても50㎞には届きません。

いろいろな走行条件によっても違うとは思いますが、90㎏のおっさんが居住エリアである多摩の丘陵地で乗った結果、11.9㎞でメーターの亀のマークが「やばいよやばいよ」と言い出してしまいます。

なので、こうした丘陵地では2本のバッテリーを使って走れるのは頑張っても30㎞弱がいいところ。

さらに、アクセルを全開にして平地を走っても速度は30㎞/h以上出すことができず、上り坂ではみるみる速度が落ちてしまうので、使い方や使う場所もかなり限定される印象を持ちました。

またバッテリーの0からの充電には約3時間が必要。

出川さんの番組「充電させてもらえませんか?」って、撮影現場は見ている以上に大変なんだなぁと実感しました。

PCX ELECTRICはこんなスクーター

以前、PCX ELECTRICにも長期試乗をさせていただきましたが、

こちらは最高出力5.7ps(4.2kw)/5,500rpmにして最大トルクは18N・m/500。

スペック通り、初速からしっかりとしたトルク感があり、坂道で速度が落ちるようなこともなく、静粛な乗り味は車体の良さも含め、かなり上質な印象を受けました。

ただ、1充電あたりの航続距離は41㎞(メーカー諸元によります。)なので、往復を考えると行動半径は約20㎞程。

最初は、「これでショートツーリングを?」と画策したのですが、それは現実的ではありませんでした。

つまり現状では、メーカーが示すEVの航続距離は直径で示されているものと考え、その中間を折り返し地点とした半径を移動可能距離と考えた方が良いようですね。

燃料を入れたしながら長距離を移動できる内燃機車とはこの辺りが違うのだと実感しました。

PCX ELECTRICには脱着式の48vリチウムイオンバッテリーが2本搭載されていて、この2本を時間差をつけて放電させ、1っ本目が放電しきっても、ガソリン車でいうリザーバータンク的に2本目がフォローするシステムになっています。

車体にも給電コードがついているので、そこからの充電も可能なのですが、(※この場合の充電時間は約6時間。)

こうしてバッテリーを取り外し、専用のバッテリーチャージャーを使ってお部屋の中で充電すれば、約4時間で満充電になります。

しかし、このバッテリーの重量は1本10㎏と重く、これを2本抱えてマンションの部屋に上がるのに苦労しました。

さらに、充電中は電子レンジを作動させているときのようなゴァ~という低周波音が大きく響くのが非常に気になりました。

後述していきますが、脱着型のバッテリーの採用は、今後のEV2輪の発展に欠かせない形態。

このPCX ELECTRICは現在リース販売のみなのですが、一般化に向けては私が体験したようないくつかのことがハードルになっているようです。

配達業務でのEV2輪アドバンテージ

ベースとなるBENLY e:には原付一種規格のBENLY e: Ⅰと、原付2種規格のBENLY e:Ⅱがあるのですが、

写真はBenry:e1

 

2019年度中に納入されるの200台の内訳は、BENLY e: Ⅰが50台、BENLY e: Ⅱが150台となるそうです。

また、それぞれの諸元ををガソリン車のベンリィと比較すると、なかなか面白いことが見えてきますよ。

最大出力/発生回転数 最大トルク(N・m)/発生回転数
ベンリィ 4.4ps(3.2kw)7,750rpm 4.2/6,000
BENLY e: Ⅰ 3.8ps(2.8kw)3,000rpm 13N・m/2,000rpm
ベンリィ 110 7.9ps(5.8kw)7,000rpm 8.6/5,000rpm
BENLY e:Ⅱ 5.7ps(2.8kw)3,900rpm 15N・m/1,500rpm

ご覧のようにいずれも馬力でいえばガソリン車に劣るものの、倍以上のトルク性能を有しているのがお判りいただけるかと思います。

例えば、私が住む多摩の丘陵地などと平地で求められる性能は違ってきますから、配達区域の立地などに合わせて2つのタイプを使い分けていくのでしょうね。

今回のBENLY e:Ⅰ/ⅡにはPCX ELECTRICに搭載されているものと同形状の脱着式バッテリーが搭載されています。

気になる1充電当たりの航続距離はBENLY e: Ⅰで87㎞で、BENLY e:Ⅱでは43㎞であるとのこと。

郵便の配達は一日当たり約20~30㎞だということなので、休憩時に充電されるという話もありますが、PCX ELECTRICでは充電に4時間。

なので、恐らく局内で充電済みのバッテリーに交換して業務を継続するようになるのではないかと思います。

いずれにしても、燃料を必要としないのは、配達業務にはかなりのアドバンテージであることは間違いなさそうですね。

そして、拠点が適切なバッテリー管理を行っていくこと。

これが、将来のEV2輪にとって大切な布石となっていくのです。

郵便局から始まるEV2輪の世界

今回は郵便局の配達バイクにEV車が導入されたという話題ですが、これは分厚い本の表紙部分の話題にすぎません。

もしあなたが今、欧米・アジアを旅行すれば、日本におけるモビリティーEV化についてその広がりの小ささに気づかされることでしょう。

例えば欧州では、昨年バイクの世界選手権レースMotoGPにMotoEクラスが新たに開幕しています。

このクラスはイタリア発の多国籍企業、発送電大手のエネル社が手掛ける電動市販車をベースとしたワンメイクレース。

これまでのバイクにあったエキサイトメントが将来の2輪EV化の中で共存していける道を切り開いていくれているわけですね。

一方でこれはEU中心のメーカーによる電動車の規格の覇権競争の一端でもあり、エネルは同社の規格による車両と共に電源設備の普及を積極的に進めています。

映像引用元;エネルジカHP/エゴ・コルセ

そして、特に注目するべきは、アジアにおいてバッテリー交換ステーションなどのEVインフラの整備が進んでいること。

台湾のgogoro社のバッテリースワップステーション

こうした部門への中国系企業の進出も盛んです。

つまりEV二輪において我が国は後塵を喫しているというのが現状。

そんな状況を打開するべく、日本の4メーカーは昨年初めに、EV2輪のシステムを共同で開発しインフラを共有するためのコンソーシアムを立ち上げたところです。

さて、そんな世界のEV事情を踏まえたうえで、話を郵便局に戻しましょう。

「郵便局からEVが発進。」

実はこれは、郵便局にバッテリーのスワップステーションを設置していこうという構想の入り口。

郵便配達車のEV化はまさに日本のEV2輪普及の出発点なのです。

日本の2輪EV化と一口に言っても、ステーション設置の費用や、利用単価、利用可能な車種の開発など、まだまだハードルは高い現状もあります。

しかし、全国に数多ある郵便局の給電ステーション化は、航続距離や、バッテリーの安定管理といったEVの課題克服に道を開くものです。

こうして2輪から加速していく我が国のEV化の道筋が具体的に見えてきたというのは、我々ライダーとしては記憶にとどめておくべき話題ではないでしょうか。

じゃぁ、郵政カブはどうなるの?

最近ではカブだけでなく、ベンリーやキャノピーなどで配達をしている日本郵便社員の方々も多く見かけますね。

でもやはり、郵便配達=カブというイメージを強く持っている方もいるでしょう。

ましてカブを愛するならば、多くの人が「郵政カブ」の行く末を心配しているのではないかと思います。

かつてホンダ車の開発をしている本田技術研究所二輪R&Dセンターの方にお話を伺ったことがありますが、ホンダが2輪のEVを開発していくにあたって考えたのは、

「やっぱり始めるならカブからだな」ということで、EV CUBを製作し、2015年の東京モーターショーには脱着式バッテリーを搭載したEV CUBを出展していました。

しかし、カブといえば一回の給油で走れる距離におけるスーパーバイク。

ここまで本文を読んでくださった方ならお気づきのことと思いますが、現状でも10㎏×2本のバッテリを要するEVシステム。

細身なカブの容姿の中に組み込む工夫も相当にトライされたということですが、カブのスタイリングを保ちながらカブらしい航続距離をEVとして求めるには限界があるということで、現時点においてEVカブの量産化は断念されたのだそうです。

郵便局で廃棄処分を待つカブたち

郵便配達車においても、今後多くのカブがEVのBenry:eに置き換えられていくものと思いますが、恐らく山間部などへの配達ではまだまだカブが活躍してくれるはず。

また、今後の技術革新で小型の高性能バッテリーが登場すれば、カブの姿をしたEVの登場もない話ではないでしょう。

カブは不滅

バイクファンならそう信じたいですよね。

まとめ

最新の発表では、製造工程なども含めると、内燃機よりもEVの方が環境負荷が大きいと言われ始めてもいます。

しかし、待ったなしの気候変動や、世界的にも未曾有の超々高齢化社会の到来など、たとえメーカーがしたくても昔通りのモノづくりを許さない社会背景がありモビリティーのEV化は今後さらに進んでいくでしょう。

「70年代終盤~80年代のバイクの方が面白かった。」

というのは非常によく聞かれるライダーの声です。

では、EV化でバイクはつまらなくなるのか?

これは限りなくNOだと思います。

例えば、ハーレーダビットソンも昨年から、EVバイクの「ライブワイヤー」の販売を開始。

ハーレー ライブワイヤー

最高出力105psを発揮する水冷式モーターを組み合わせることで、0-100km/h加速3.0秒というロケット加速は新たなハーレーの魅力となるでしょう。

特に、バイクの醍醐味は、パワーを操りながらコントロール下に置き、マシンとの一体感に我を忘れて楽しむ「忘我」の感覚を得られること。

一昨年前のEICMAで、台湾の大手バイクメーカーKYMCOが発表したEVスーパースポーツ車、Super NEX(スーパーネクス)には、

KYMCO(キムコ)Super NEX

なんとクラッチや6速ミッションの他、音響発生装置までを装備。

バイクの「声」と共にマシンを操る忘我感(エキサイトメント)を味わえるように工夫されています。

国内でも、EV+MTを組み合わせたバイクが開発中というニュースもちらほら聞こえてきていますから、これはEVバイクの開発トレンドになるかもしれませんね。

そんな流れを知る限り、

「EV=つまらない」という発想はあまりにも悲観的かつ短絡的なもの。

メーカーの開発エンジニアさんたちはEV2輪に、今のライダーが考えもしなかった異次元の楽しみをもたらすべく必死に努力されているのだと信じています。

日本のEV2輪、その夜明けが郵便局からやってくる!

これは大いに期待しましょう。


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