ヤマハNIKEN登場!大型3輪LMWの乗り味をバーチャルインプレッション

2015年のモーターショーではMWT-9という名称、そして試作車としての展示だったヤマハの大型3輪バイク。

その後もヤマハは企業広告などでMWT-9を「チラ見せ」するなどして、開発中であることはアピールされていました。

そしてモーターショーを前にして、その走行シーンを写した公式動画が配信され、世界から一層の注目を集めることとなりました。

2017年10月25日12:35から開かれたヤマハのプレスカンファレンス。

柳社長によって来季の市販がアナウンスされ、ここでついにその姿がベールアウトされました。

今回は、ヤマハが満を持して発表した大型3輪バイク「NIKEN」(ナイケン)がいったいどんな乗り味になるのか、これを予想したいと思います。




目次

その名は「NIKEN

「ナイキかよっ!」

なんて誰かが突っ込んでそうですが、このNIKEN(ナイケン)という名前。

これは2刀の剣を表す「2剣」からきているそうです。

「力強い鋭敏さ」と「繊細なしなやかさ」

どうやらこの1台の中には、そんな相反する2つの性格を兼ねそろえたマシンだということのよう。

このことは、「NIKEN」の乗り味を予想していくうえで、非常に大きなキーワードになっていきます。

前2輪という視覚的イメージ

ここではLMWについて解説するため、この機構を持つトリシティー155ABS をマジェスティーSと比較することで、一般的な2輪との違いを考えていきたいと思います。

LMWを持つバイク、外見上の大きな特徴は、やはり前に2輪を配した3輪であるということ。


これはヤマハがの、非常に独創的な機構です。

重いんじゃないの?

ヤマハのLMWは「リーニング・マルチ・ホイールズ」の略で、このロゴが表すように、2本の前輪を傾ける(リーンさせる)のが特徴。

しかし、この前2輪の3輪形状はやはり2輪よりも視覚的に重量感を抱かせます。

筆者もトリシティーについては「自重が少し重い」と聞いていたので、コーナーでの切り返しには重さを感じるだろうと予測していました。

メーカーのカタログにあるトリシティー155ABSの重さは165㎏、比較したマジェスティーSの重さは145㎏。

確かに押して歩く場合においては若干の重さを感じますが、普段中型以上のバイクに乗っている人なら、さほど驚くような重さではないと思います。

また、歩く程度の極低速での切り返しなども、少々の重さを感じますがこれも慣れでカバーできる範囲ですね。

20㎏といえば相当な「ハンディ」になるところですが、乗ってみるとトリシティーの方が軽々とした印象を受けます。

これは常に前2輪で重さを受け止め、重心荷重が左右方向にも分散されているためで、市場でもこのことが実感できました。

言ってしまうと、2輪では気を付けなければいけない繊細な操舵操作も、ある程度バイク任せにできる。

このため、20㎏重いはずのLMWの方が安全に速く、そして気軽に走ることができるんですね。

(エンジンは多少の違いはありますが同じ155㏄で同じ馬力、なのに平均燃費はトリシティーの方が上だったりします)

走ってびっくりLMW

実際の走りを見てみます。

これはトリシティー155ABSでのコーナー旋回中の写真です。おわかりになりますか?

トリシティーはコーナー手前の速度が割と速い状況でも、この機構のおかげで躊躇することなくマシンを寝かしこんでアクセルを開け、安定して素早いコーナリングが可能なんです。

結構元気よくバンクしてますが、前輪外側が傾きながら踏ん張っていますね。

しかもこの日のテストコースは、アスファルト舗装の上に細かな砂利が浮いていて、特にコーナーでは滑りやすい路面。

同じ路面でスラローム走行もしましたがトリシティーは、がっしりとした安定感を保ちながらも、しなやかで軽々と切り返していきます。

しかしこうした路面では2輪の場合、砂利に前輪のグリップを奪われるものです。

そのため、あとに比較したマジェスティーSではとても怖くて同じことはできなかったんです。

どうしても速度を落としてマシンにバンクを抑えて旋回動作に入ることになるんですね。

これは、いつも乗り慣れた2輪バイクなら、バイクの方で「危ないんでブレーキかけてください」と教えてくれていることかもしれません。

LMWではこのようにライダーがちょっと神経を使うところを、「それなら任せてください、難しいことは僕がやりますから、とりあえずアクセル開けてください。」

そんな風に言っているかのようです。

少なくとも「これが同じ路面か」と思ったのは事実。

そこから考えると、LMWは路面状況をあまり気にすることなく、知らぬ間にアグレッシブな走行ができる、というかできてしまっている。

これがトリシティー155ABS、そしてLMWについて試乗した実感です。


トリシティー+MT-09=「NIKEN」? 

「NIKEN」はMT-09 にトリシティーが持つLMWを組み合わせたものだと言えるでしょう。

つまり、トリシティーとマジェスティーSとの比較の中で感じたこと、これをMT-09 の乗り味に足して想像する。

そんな方程式でNIKENのインプレッションを導き出そうというわけです。

発表されている範囲で諸元を元に気になる車格を比べてみました。

諸元 MT-09  NIKEN

全長/

全幅/

全高

2,075mm

815mm

1,120mm

2,150mm

885mm

1,250mm

車両重量 193㎏
エンジン DOHC4バルブ水冷直列3気筒

メーカーから渡されたプレスキットにはNIKENの車体重量は乗ていませんでした。

マジェスティーS対トリシティーで重量差が20㎏だったことから想像すると、スケール的に40㎏は増量して235㎏になるかもしれません。

 

※2017年11月10日加筆、EIMCA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で諸元発表あり。

NIKENの重さは263㎏、

結構ありますね、やっぱり。

でも、エンジンは115馬力でクイックシフター付き!

キャタライザーの影響かMT-09より1馬力落ちですが、十分でしょう。

全高が上がっていますから、ハンドルが高くなって、ライダーは恐らく少し直立する感じになるでしょうか。

また全幅は大きく見えますが、たったの7㎝増。

筆者も定規片手に驚いていますが、ハンドル幅に収まった前2輪、そしてそれを外側で支えるサスペンションの配置をよく見ると「なるほど」とうなずけます。

エンジンは両車とも、定評のあるクロスプレーンDOHC3気筒。

MT-09 に試乗した感想からすると、極めて振動のないシルキーな感じ。

シュルっと走るのに軟弱な感じでは決してなく、力強いトルク感を感じさせてくれるのがこのCP3の面白いところです。

そしてMT-09 には、走行D-MODEというモード選択式の電子デバイスがついています。

モードは「STDモード」、「Aモード」、「Bモード」の3つ。

スタンダードを軸にA・B二つのモードを比べると、Bモードはおとなしい印象。

雨の日やゆったり走るときに使いたいモードです。

しかし、Aモードにしてみると、結構元気のいいキャラクターになります。

油断すると簡単にフロントをリフトしてしまうほどパンチのあるエンジンになります。

更に、(2モード選択+OFF)から介入度を選択できるトラクションコントロールがついています。

これによってコーナーの侵入から、特に立ち上がりにかけてグッとアクセルを開けてバイクの方が後輪の滑りを抑えてくれるわけです。

MT-09 はアップハンドルのツーリングイメージが強く、外観上はスーパースポーツほどのスピード感を感じません。

確かに最高速をどこまでも求めていくようなマシンではなく、フレンドリーなバイクでもありますが、ひとたびその気になればアグレッシブなライダーの要求もしっかり受け止めてくれる。

そんな「表裏一体」感をこのMT-09 は持っているんです。

見た目以上の限界性能

LMWの3輪なら、ライダーが涼しい顔をしながら、マシンを寝かしてどんどんアクセルを開けて大胆になれる。

これはスクーターのトリシティーにして同じでした。

それが2輪でも相当イケてしまうMT-09 とドッキング。

プレスカンファレンスで流れていた映像では、NIKENのフルバンク映像も流されました。

これまでの話を総合すると、LMWのおかげで重量増はあるものの、MT-09 よりも速いスピードで難なくコーナーにアプローチできるようになるはずです。

フロントに絶大な安心感、これに加えてトラクションコントロールがリアの滑りをコントロールする。

しかもABSは標準装備。

思い出していただきたいのは、トリシティーの場合、フロントフォークは前2輪の間に位置していたこと。

NIKENでは前2輪の外側にあります。

つまり、「より大きく外輪を粘らせることができる」=「結構な速度でコーナーアプローチができる」。

トリシティーでも相当「楽」をさせてもらいましたが、NIKENではかなり次元の高い走りをニコニコしながらできてしまうでしょう。

それでありながら、高い安定感は幅広いスキルのライダーにも鋭く対応し、距離を伸ばしてのんびりと走るおおらかさも持っているものと思います。

この「鋭さ」「と「おおらかさ」こそ、NIKENが表す「2剣」の真意だと思います。

MT-09 でもこれは同じでしたが、懐の深さと引き出しの多さ、これが今まで体験したことの無いレベルで豊かになっている。

NIKENの乗り味としては、きっとそういうそういうことだと思います。



まとめ

今回は待望のLMW大型3輪バイク「NIKEN」についてレポートしました。

3輪という外見から、トライクのように「自動車免許でも乗れるんじゃないか」という意見がネット上に散見されます。

トライクの場合は車体が固定された状態で自立していますから、3輪自動車として考えられているわけです。

しかし、自動車免許でNIKENに乗りたい方には残念なお知らせですが、LMWでは自立ができないので、二輪の操作が解らない人には恐らく乗れません。

また、車体の大きさからやぼったいイメージを持つ人もあるようですが、乗ってみると早い段階でそれは裏切られるでしょう。

現在二輪メーカーはこれまでにないほどの勢いで二輪事故の削減に取り組んでいます。

四輪では、自動化で事故を無くそうという方向性がありますがバイクは完全な自動化は無理。

尊敬するモーターサイクルジャーナリストの柏秀樹先生もそうおっしゃっておられました。

なぜなら、バイクは人の意思と身体にバランスを与えられて働く乗り物だから。

なので人の意思に関係なく、バイクが勝手に急ブレーキをかけたり、回避行動をとったとしたら、ライダーは簡単にバイクから振り落とされてしまうでしょう。

今回のモーターショーではロボット的なバイクも展示されました。

でもそれは人の感覚をより高度に研究するためのもの。

メーカーはこれからも、あくまで人の感覚を中心においてバイクをつくろうとしているんです。

その中で人の感覚を助けながら、バイクをもっと楽しいものにしたい。

更には事故を無くしていきたい。

LMW、そしてNIKENはこの課題に対してヤマハが出した答えの一つなのです。



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