次期SR400登場間近?セル付のウワサとその周辺を考える

ご承知の方も多いとは思いますが2017年8月31日、現在発売されている国内モデルのほとんどが生産終了となってしまいました。

これは国内基準が新たな欧州規制同等のものに移行するためで、排ガス規制のさらなる強化とABSの標準装備化が義務付けられるんです。

この規制強化を境に移行生産されないモデルもあるようですが、新規制に適合させた形で車種とし今後も存続が決まっているモデルというのもあるようです。

この中には超ロングセラーモデルであるYAMAHAのSR400も含まれています。

あえてクラシカルなイメージを保ってきたSRですが、新規モデルにはセルモーターが搭載されるという噂もあります。

新期SRの新車予測も楽しいところですが、既にSNSなどを中心に「SR+セル」への異論反論が巻き起こっているようですね。

要するにこれは、「便利」vs「趣き」というお話。

その視点で今回は、SRファン・ヤマハファン強いてはバイクファンならずとも一緒に考えていただきたい「SR+セル問題」です。




目次

「SRという存在」

ファンでない人の為にもこのバイクの凄いところをお伝えしておきましょう。

近年バイクも、コンピューター制御ライダーの操作を補正できるようになったり、バイクに搭載されるデジタル技術は相当のものになっています。

当然、そうしたバイクでは外見的なデザインもそれに見合ったある意味近未来的なものになっているわけですが、SRは今もクラシカルなフォルムのままです。

参考;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/sr400/img/sr400_gallery_002_2016_002.jpg

SRの発売は1978年と言いますから、まもなく40周年を迎えるわけですね。

工業製品で形が変わらず何十年も愛され続けているロングセラーというのはいろいろあるとは思います。

でも、例えば乗用車で40年間姿かたちがほとんど変わらない車種ってあるでしょうか?

仮にですよ、40年前の車がそのまま売られ続けたとして、時代の移り変わりに耐えながら多くの人に愛され続ける。

恐らく、通常市販される車種には他に無いと思います。(ハーレーだってあれでいて結構変更ありますからね。)

自動車やバイクのスタイルは、売れ行きもそうですが環境基準や安全基準の強化など、時代の要求に応えながら変化を迫られるのが常です。

バイクに至ってもそれは同じで、一つの工業製品が登場以来の型を維持するというのは極めて難しいことだと言えます。

つまり「形を変えず、普遍的に存在し続ける」それこそがSRの凄さだと言えるでしょう。

今後予想されるモデルチェンジの内容

さて、多くの車種に生産終了を迫る新規制の内容ってどんなものなんでしょうか?。

基本的にエンジンは始動時に内部にガスを一時的に濃くして始動しなくてはいけません。

一時的にどうしても排気ガスが濃くなってしまうのです。

これまで始動時のガスの濃さは、今まで大目に見られていたのですが、ココをかなり薄くしなくてはいけなくなったんですね。

更に空冷車種の場合は外気温に影響をもろに受けやすく、特に冷感時の始動時には濃い目の混合気が必要になり、単気筒ゆえに燃焼室が大きいSRには厳しい規制内容だと言えます。

またABSにして関しても標準装備化が義務になるので、SRにとって新装備がどうなるかが話題になっています。

ディスクブレーキであれば現行の形状でもABSの採用はそう難しいことではなく、始動時のガスについてもインジェクションの設定を見直すことで対応してくるという見方が強いようですね。

しかし一方では、今回の規制によってこれまで40年にわたり守れれてきたSRのアイデンティティーであるキックスターターがなくなってしまうのではないかともささやかれています。

既にネットではCGによる予想が出ていますね。

参考元;https://young-machine.com/2017/08/26/920/

それによると、ライト類や足回りにはABSを意識してXSR900のものとおぼしきアルミホイールが付いた型になっています。

同車のパーツ流用であればライト類もLED化したりする。

つまり外装を含めかなり「近代装備」を盛りながらSRらしくまとまるという予想のようです。

外見的にはこういうまとまり方もありだとは思います。

そして、CGではセルスターターになることが予想されているので、大事なキックスターターが見当たりません。

この予想に関してはネットの反応は、

  • 「インジェクションなのにキックというのはナンセンスである」
  • 「キックこそ硬派といつまでも言っていては新しい層に受け入れられない」
  • 「新世代のSRが見たい」

とSRの刷新、ことにセルスターター採用を望む意見が散見されます。

一方でSRのビンテージスタイルを惜しむ声として、

  • 「SRを買おうとする人に、セルを望む人なんているの?」
  • 「SRにセルがついていたら、それはSRじゃないね」
  • 「とにかくSRはそのままでいてほしい」

といった声が多く聞かれます。

長年ヤマハ乗りを自称する筆者としては、ヤマハはあえてこれまでのSRの持ち味、立ち位置を一切変えることがないだろうと考えています。

つまり中身は変わってもセルスターターとこれまでのスタイリングを堅持してくるはずだと思うのです。

YAMAHA SR FILE.(8)

価格:3,780円
(2017/9/3 16:13時点)
感想(0件)

変えないために変え続ける

これまでもヤマハはSRを数回モデルチェンジさせてきました。

と言っても、スイッチ類にプッシュキャンセルを採用したり、ブレーキがドラム式になったりディスクになるといった小変更。

ニーズや安全基準などに合わせて、多少の装備が変更しながらも、フォルムはほぼそのままというのがSRの良さですね。

参考元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/sr400/feature.html

これまでのモデルチェンジの中でも一番大ナタが振るわれたのが2008年。

今回同様、環境規制強化に対応させるため一度生産を終了されたんです。

「ついに」というか「とうとう?」とファンは騒然としたわけですが

しかしその後、コンピューター制御のセンサー類や電子燃料噴射装置を搭載、排気管には触媒を新たに採用して復活。

にもかかわらずヤマハは、モデルチェンジ後のSRを、それまで通りのルックスに仕上げてきました。

例えばそれはアルコールランプとアルコールランプ型のLEDくらいの違い。

従来通りの姿に安堵したファンも多かったようです。

これだけ電子制御化したのであればこの時点でセルモーターを搭載することも技術的には難なくできたはずです。

「ビックシングル」と呼ばれる400ccクラスの単気筒。

そのキック始動ともなれば内燃機に関する初歩的な知識も必要です。

手間を省くことをいいことだと思えば、SRのキックは、「煩わしいことこの上ない」

きっとそう思うに違いありません。

やはり、指一本で始動できるセルスターターの方が当然楽にきまっています。

しかし、ヤマハはSRの始動方式をキックスターターのみとしてこれを堅持しました。

つまり、様々な電子デバイスを必要とする環境規制の前に、アナログのシンプルさを身上とするSRはこともなげに消滅かと思われたのがこのときの「生産終了」。

そんななか、SRはわざわざエレクトロニクスを駆使して「これまで通り」を堅持したのです。

では、ヤマハは何故SRにキックスターターを残し、あえてコツのいる始動形態を残したのでしょうか?

キックという「儀式」

参考元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/sr400/index.html

単に古いということではなく、「シンプルさ」というのがSRの魅力の多くを占めるところです。

スチールフレームに単気筒エンジン、飾らず必要なものだけで構成された完成したデザイン。

そうした外見も長くファンを魅了して要因であることは間違いありません。

しかし、それ以上に始動がキックスターターのみというのが、SRの趣きでありアイデンティティーでもあります。

ライダーが自分の足でマシンを始動させるキックスターターは、今や希少な存在。

SRの場合慣れてしまえば楽に始動できますが、初心者が買ってきて一発で始動させるにはちょっとコツが要ります。

ご存知でない方のためにSRの始動について、少し解説しておきますね。

初めに(メインスイッチ)電源スイッチをオフにしたまま、キックペダルを数回踏み下ろし、ガソリンと空気(混合気)をエンジンの中に呼び込んで与圧します。

エンジン上部に小さな穴窓があり、ピストンの位置が分かるようになっています。

この窓でピストンが一番上に来るように、与圧をかけながら足で調整し、メインスイッチをオンにして一気にキックを踏み下ろして点火。

これがSRの始動方法です。

これ以上ないほどのシンプルな構造ゆえのものですが、ファンはSRの始動を「儀式」と呼んで愛好しています。

古くから友人もSRを所有していたので、筆者もこの「儀式」を経験しています。

最初は、踏み降ろすキックの重たさに気を取られてまごまごしてしまうのですが、何度かやっているうちにライダーの方が慣れて難なく始動できるようになります。

何度もやって初めてかかったときも「やったー」と思いますし、何度やっても「よしっ!さて、乗るぞ!」と胸踊る気持ちになるんですよね。

自分の意思がマシンに伝わった感じとでも言いますか、毎回それがちょっとした快感なんです。

「無機質なバイクにキック一発で魂を灯す。」

恐らくこれがSRの「儀式」です。

ヤマハSRメンテナンス&カスタムファイル【2500円以上送料無料】

価格:3,240円
(2017/9/3 16:15時点)
感想(0件)

「不便益」=SR

さて、「不便益」と言う言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?

これは、京都大学デザイン学ユニット教授の川上浩司先生が提唱・研究されている、「自動化」にの中で現代人にあえて不便を見直すことで暮らしをより楽しくしようという考え方です。

例えば「富士登山が大変だから、誰でも行けるように頂上まで一気に行けるロープウェイをつくる」。

確かに便利ですが、それは既に登山ではないですよね。

これは苦労しながら、やっと頂上にたどり着いた喜びをかみしめたい人からすれば迷惑な話ですし、余計なお世話です。

こんな風に、不便であるからこそ発見したり、知恵を使って解決することを積極的に楽しもうと言うのがこの「不便益」という考え方です。

あえて人がエンジンをかけるのに手間をかけ、そこに愛着を見出していく。

どうでしょう。SRはまさに「不便益」の要素が満載ではありませんか。

ヤマハのSRのホームページにある「開発ストーリー:SR400」

この中の一節を引用させていただくと…。

「キックペダルでエンジンを掛けるオートバイがSRだからです。」

彼らはそう言っています。

ヤマハさんが「不便益」を知ってか知らずかは定かではありません。

しかし、図らずともかなり共通する理念があったのではないでしょうか?

人とバイクをヤマハはこう考える

ヤマハは「人機官能」という言葉をモノづくりのキーワードにしています。

この言葉は、クラシカルなSRと、同社のスーパースポーツバイクYZF-R1の両車のデジタルの立ち位置を見るとよくわかります。

参考元;http://www.presto-corp.jp:443/lineups/17_yzf_r1/index.php

例えばR1には最新のジャイロコンピューターが搭載されています。

これによってバイク自身がの姿勢を検知して左右方向、前後方向、そして旋回の速さなどを検知して、バイクが安定して走行するのに最適な状態を保てるようになっているんです。

まさにハイテクの塊のようなバイクなのですが、ヤマハの人はそうしたハイテク機能を「あえて黒子と考えている」と言います。

つまりコンピューターが出しゃばって「今働いて補助してあげてるよ」と思わせるのではなく、ライダーには気づかれないくらいの絶妙なタイミングでコンピューターを機能させているのだそうです。

現行SRの中身、先述したようにこれも今ではだいぶハイテクですが、外見上それを気付かせるものはなく、あったとしても極めて目立たないようにできています。

アナログかつシンプルが魅力のSRがデジタル化を迫られたとき、デジタルでわざわざアナログを再現しながらキックスターターのみの始動方法を残したのは、

バイクとの「有機的な付き合い方」をずっと残し、またそうしたいの願うファンい応える為だったに違いありません。

SRのキックやR1の電脳の立ち位置などを観ていると、ヤマハが「人機官能」という考え方を中心に据えて、人の感覚を常に中心に考えている姿勢がよくわかりますね。

セル化なら「X」を付けてほしい(まとめ)

実はヤマハは、SRを刷新して別のバイクその立ち位置をバトンタッチさせようとしたことがあります。

それが1987年に登場したSRXです。

参考元;https://en.wikipedia.org/wiki/Yamaha_SRX

↑初代SRX、キックにご注目。

SRのエンジンをベースにしながらワインディング走行も楽しめる軽快なスポーツバイクとして誕生したSRX。

2系統の吸排気システムを持ちながらも初代モデルはSR同様キックスターターのみの始動で、シングル+スポーツの楽しさを存分に味合わせてくれるバイクでした。

1990年にSRXがモデルチェンジをした際、こちらはスポーツバイクとしての方向性を強め、始動をセルスターターのみとしました。

参考元;https://en.wikipedia.org/wiki/Yamaha_SRX

90年式はセルになりました。

しかし、レーサーレプリカ全盛の時代にあってSRXのマイルドな性格は「中途半端」とも揶揄され、21世紀に後継車種がリリースされることはありませんでした。

流れるような美しいフォルムが魅力的で、当時から長年にわたって愛好するファンも多く、未だに根強い人気のある車種でもあります。

実は筆者もその一人で、最近まで愛機として活躍してくれていました。

ファンの視点から見ると、SRXなら現代版として存分に近代装備を奢ったバイクを登場させて欲しいとも思います。

また、近年中古市場でもSRXは人気が高くなっており、パワーバイクとの住み分ける形で、マイルドに楽しめるシングルスポーツを望む声も少なからずだと思います。

近年ヤマハは、MT-09とXSR900のように同一車体を使いながら別の車種を作り上げるプラットフォームという手法もお得意です。

更に70~80年代往年のバイクをオマージュした換装用外装シリーズもリリースしています。

そんな流れから見て、SRがセル化が検討されているとすれば、SRXをオマージュしたモデルも検討されているのではないか?

そんな風に妄想を膨らますのも楽しいですよね。

いずれにしても、これまでのお話を総合すると、やはりSRはSRとしてのABS化もスポークホイールのままで、キックスターターもそのまま。

きっとヤマハの開発チームの皆さんは「どこが変わったの?」と言われるのを楽しみにしているに違いありません。

「不便益」ちょっと面白いので、こちらもご紹介しておきますね。

不便益システム研究所 http://fuben-eki.jp/masterpiece



「次期SR400登場間近?セル付のウワサとその周辺を考える」への2件のフィードバック

    • ありがとうございます。
      バイクそのものが、不便益的乗り物ですが、中でもSRはその王道を征くものですね。
      今後のSRに期待しましょう。^_^

コメントを残す