茨城県のトミンモーターランドで、カワサキC2加盟店が主催するのZ900RS試乗会が催され、筆者もついに実車に試乗することができました。
東京モーターショーでその姿が公開されて以来話題沸騰中のカワサキZ900RS。
『カッコいい!』
『いや、あれは「Z」じゃない。』
いろいろな意見もありますが、実車に触れながら「Z1の再来?」をテーマに、モーターショではわからなかった細部の作り込みや、乗り味などもお伝えしていこうと思います。
目次
新世代のツッパリテール
カワサキが北米市場に向けてZ1(900 Super Four)を発売したのは1972年。
さらにその国内版としてZ2(750RS)を発売したのが1973年のことでした。
当時、抜群の運動性能を誇って世界中のライダー達の伝説となった「Z」。
あれから35年の時を超え、ダブルネームを拝命する新しい「Z」がやってきました。
もう既に、このエンブレムに色々な物語を想起されている方もおいでですよね。
筆者の場合、一番「Zらしさ」を感じるのがこのテールのデザイン、いわゆる「ツッパリテール」です。
見てください、このツッパリぶり。
モノサスのおかげで、リーゼントのひさしの部分がぐんと伸びたように見えて、いい感じに尖がってます。
スリムに尖がったツッパリテールは、180/55/ZR17のタイヤも「ブリっ」とより太く見せていますね。
この辺、何となく「色気」のようなものを感じます。
よく見ると灯火類はすべてLED。
もちろん、ナンバー灯までLEDなんですよ。
この辺はやっぱり「今っぽい」ですね。
モーターショーでは見えなかったこんなところ
スリムにまとめられたテールの内部には、ETCが標準で装備されています。
それもなんと2.0の方。
これはいいですよね。
でも、小物入れスペースは車載機で満員といった感じ。
「じゃぁ車載工具はどこ?」というと考えたもので、
シートの後端の裏側に蝶ネジでついていました。
流石に蝶ネジを外してみることまではしませんでしたが、外したらもっと出てくるんでしょうか?
見えているだけのツールしか入っていないとすると、ちょっと心細い気もしますね。
「シートを開けていいですよ」といわれたのですが、パッと見ただけではシートオープナーがどれかわかりませんでした。
実はシートオープナーの鍵穴は、シートの下というか裏側のこの位置にあって、耐水用のゴムカバーに覆われていました。
オーナーになったとしたら、ちょっとこの辺は慣れるまでに迷いそうなので、マーキングをするなどの工夫が必要かもしれません。
「Z」として素敵に思う部分
いわゆるZ1の「火の玉カラー」は日の差し加減でどんどん表情を変えていきます。
茶系のカラーはメタリックが入っていて、オレンジも同じように見る角度や日の加減で色が変わって見えます。
ずっと見ていましたが奥行きがあって、本当にあきない色ですねぇ。
特にこのカラーではタンクの前部に「Z」の文字があしらわれているのもシャレオツです。
もう一色の、これはRS側の色といったら変ですが、たぶんこれは印刷などで見ると「黒」に近い色になると思います。
これもこうやって自然光の下で実車をみると、クリアの奥行きの中でパールコートがキラキラしてちょっと宇宙感のあるきれいな色でしたよ。
継承されたティアドロップタンクのスタイルと共に、きっとこの辺のこだわりはちゃんと「Z」してるんだと思った点でした。
やっぱりカタログではなくて、野外で実車に触れてみると印象が増していくので、たまりませんね。
跨ってわかる「再来」以上のまとまり良さ
やっぱりこうやってちょっと角度を変えただけでも、この色はさっきと違って見えるから面白いですね。
さて、シートもその時代感を受け継いでモコモコした形です。
跨ってみると、しっかり腰のある感じで腰の収まりもいいですね。
きっとこれならロングツーリングも楽にこなせると思いますよ。
これはとても良く考えられていると思った点ですが、シート先端が絞り込まれてタンクとサイドカバーと一緒に流れるようなラインを作っているんです。
近づくとここら辺の事なんですがわかりますか?
このおかげで、実にモモの収まりが良くニーグリップがとてもしやすいんですね。
先日お伝えしたXSR700のシート高は835mmでしたが、Z900RSは800mmと比較的低めにできています。
(XSR700の関連記事はこちら)
それに加えてこの腿周りのデザインが脚をまっすぐ下におろすのを助けてくれて、足つきはすこぶる良好です。
162㎝の筆者でも両足を親指の腹あたりまで接地させることができましたよ。
きっと街乗りも助かると思います。
懐かしくも新しいと思えるところ
そしてメーター周りに目をやれば、なかなか気の利いた装備が充実しています。
タコメーターにはETCのインジケーターがついてるんですね。さすが国内仕様。
メーターパネルはこんな感じで、スピードメーターは240km/h まで目盛られたフルスケール。
そそられる人もいるかもしれませんが、もちろん国内仕様なので180km/hでリミッターが作動します。(安全運転を!)
そして2つのメーターの間にはデジタルのメーター類があります。
シフトポジションインジケーターは大き目で見やすいのでおじさんでも助かりますね。(笑)
燃料系も大げさじゃないのがいいと思います。
さらに、時計の下にはファンクションメーターがあり、ボタンで切り替えていくと燃費計にもなります。
ロングツーリングにはありがたい装備ですよね。
良くまとまっていて視認性の良いのはもちろん、アナログとデジタルのいいところをうまく組み合わせたメーターだと思います。
テールはもちろん、ウインカー、そしてヘッドライトもLED。
筆者のXJRにも「いつかは」と思う装備ですが、標準装備はうらやましいです。
デザイン上目立つところなのでもう一歩こだわってほしかったなぁと思うのはホーン。
この位置ならダブルでシンメトリーにするか、一個なら目立たなくしてほしかったと思うのは筆者だけ?
単なる懐古主義を許さない「スポーツレトロ」の一面
フロントの足回りだけを写してみると、最新のスポーツにしか見えません。
スポークイメージのアルミホイールに120/70/ZR17のラジアルタイヤはボリュームを感じさせます。
更に41πの倒立サスには、300mm径のディスクを掴むモノブロックキャリパーをラジアルで装着。
もちろん、新世代の基準にあわせ、ABSを標準で装備します。
リアもスポークホイールをオマージュしたこのホイールデザインはとても素敵な形ですよね。
先述の通りタイヤサイズは180/55/ZR17。
サイレンサーは4本出しの曲線美が美しかったZ1からすると相当にコンパクトなもの。
後述しますがこれは、厳しい環境規制の中で音質の面で大変よく造り込まれた感じがします。
「ノーマルでこんないい音出してくるんですから、僕らも頑張っていいもの作っていきますよ」といっていたのは現場に見えていたワイバンマフラーのスタッフの方。
上質な太さのある音を奏でます。
また、よく見るとアルミのスイングアームには、Vフックのレーシングスタンドに対応するためのボルト穴までついています!
ちなみにうちのXJR1300Lにはありません。
マフラーデカいなぁうちのXJR。
これで思い出しましたが、Z900RSにはセンタースタンドがなかったですね。
この辺が、Z900RSは単なるクルーザーネイキットではないことをチラつかせています。
モノタイプとなったリアサスは、フルアジャスタブル。
横から調整機構に手が届くので、圧側・伸び側、そしてプリロードの調整などがやりやすそうです。
そして「先代」たちと決定的に違うのは、エンジンを水冷としたこと。
充実した足回りに受け止められるエンジンパワーは最高で111PS とやはりパワフル 。
Z900のエンジンを中低速向けにアレンジしたもので、最大トルク98Nm<10.0kgm>/6500rpmを発生します。
パッと見は、昔のネイキットによくある空冷「風」のフィンをあしらったデザインですが、ヘッド周りには、
当時世界初となったZ1のDOHCエンジンヘッドをモチーフにした、心憎い演出が施されています。
このレトロな外観からは、電脳イメージはないのですが、このZ900RSには
トラクションコントローラーまでちゃんとついているんですよ。
設定は2段+OFFとシンプルなもので、流石にSSバイクのような細かい設定はありません。
今回は路面も低温だったので、この効き具合を試すには至りませんでした。
スタッフさんのお話によると「どっちも介入が自然なので、作動を意識することはない」とのこと。
アグレッシブ方面としても、安全装備としても、なるほど、これは「ネオ」だな、と思いました。
実車をくまなく見た上でのルックスに対する物議
- 「リアサスはツインショックじゃなきゃ」
- 「Zっつったらマフラー4本出しなんじゃねぇの?」
- 「空冷じゃなきゃZとは呼べないな」
確かに『Z原理主義』みたいなものがあるとすれば、そういうことなのかもしれません。
しかし試乗車に乗ってしまうと、きっとこれらを残念なデザインだとは思わないでしょう。
このZ900RSは先輩バイク達のオマージュではあるけれども、決して「焼き直し」ではないというのが実車に触れた総合的な印象です。
つまり外見をまねて「再生」するのがゴールなのではなくて、Z1の持っていた、ちょっとヤンチャで味わい深い乗り味を「今の規制、今のバイクでやったらこないるんや!」というバイクだと思います。
つまりそれは乗ればわかる
跨ってマシンを起こした段階で、218㎏とは思えないほど車体を軽く感じます。
サスがしなやかに反応してこの重さを請け負ってくれているのが良くわかりますね。
さらにエンジンをかけると、低く柔らかい「るぉんっ!」という音でエンジンが目覚めます。
「ブオンっ」とか「バオンっ」ではなくて「るぉぉ!」という丸い上質な音。
アクセルを開けるとやはりエキサイティングな音になっていくんですが、中低速で流すことを考えるとこの音色は心地いいものです。
素敵な 低音を感じながらクラッチを繋げ、ゆるっとスタート。
普段XJRの太いトルクに慣れているせいか、低速のトルク感はさほど太くは感じませんでした。
しかしアクセルを開けると「ぐぉっ!」と押し出すような加速で、直線がぐんと伸びていきます。
走行中のサスは、全体的に堅めのイメージでした。
これは、跨った段階では『柔らかく良く動いなぁ』と感心していたのですが、恐らく初期がしなやかな感じで、サスを沈めた奥の方はしっかりする設定なのだと思います。
つまり、ゆっくりと街を流すペースだとしっとりとした感じ。
でも、ワインディングなどに持ち込めば結構「その気」にも応じてくれそうなキャラクターを持っていることを予感させます。
フレームのしっかり感もそれを手伝うのだと思いますが、ピッチングの動きが少ないようにも感じました。
多分もっとスピードを乗せた場合のハードブレーキングにも対応するような味付けなのだと思います。
遠目に見てレトロな外見、しかし乗ってみると完全なるストリートファイター。
「充実した装備群がちらつかせていたのはコレだったのか」と思いました。
まとめ
バイクで初めて200km/h オーバーの世界を夢見たZ1。
免許制度や時代が壁となってその所有を阻む条件が多かっただけに、多分多くの人が様々な想像を掻き立てたのだと思います。
それから45年。
平成ももうすぐ終わると言いう今。
ドラマもファッションも建築も、ちょうどそのころの輝きを振り返えりつつ、斬新なものとしてそれらを取り入れようとしています。
Z900RSも間違いなくそんな輝きの一つ。
ただ、オマージュと「再生」は違うもの。
Z1の再来というフレーズも良く聞きますが、Z900RSは「再来」である以上に「切り札」として登場したバイク。
レトロな見た目だけにマイルドさを期待すると、スパルタンな一面を驚かされます。
「ちゃんとツッパってるじゃん」
乗ってみればきっと、そんな面白さに出逢えると思いますよ。
関連記事;「新しさを懐かしむKawasaki Z900RS 誕生!ネオレトロが繋ぐ過去と未来」
試乗取材協力店のご紹介
今回の試乗は東京八王子にあるカワサキフリーダムナナ様にご協力をいただきました。
カワサキフリーダムナナでは、Z900RSをはじめカワサキ車はもちろん、KTMの車両にも試乗することができます。
ツッパリ系ネオレトロ、その乗り味を体験したい方は、ぜひこちらにお問い合わせください。
またそのほか、カワサキC2加盟店の試乗車のお取り扱い店があるのでこちらも伺ってみてください。
更にその他の地域では、カワサキ取扱店にお尋ねいただくと良いでしょう。
当日取材にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
35年ではなく45年じゃないですか?
岩崎様
おっしゃる通り45年でした。
訂正させていただきます。
ご指摘ありがとうございます。