TIMEWARP RIDERS CLUBでは、10月に愛知で行われたXSR700の披露展示会の模様を以前お伝えしました。
今回はYSP三鷹のご協力を得て、市販状態のXSR700の試乗車に乗る機会を得ましたので、そのインプレッションをお届けしたいと思います。
目次
みんな待ってたネオレトロ
既に街中でもちょくちょくみかけるようになったXSR700。
割と見かける頻度も多くなったので、XSR700 とすれ違うたび、「なるほど、待っていた人が多かったんだなぁ」という印象を持ちます。
MT-07と貴賓的な部分が共通なため、「とにかく乗り手の意思に従順なバイクでは?」と前評判も高いバイク。
チラ見するくらいですが、XSR700はオーナーの年齢層も、若い方から年配の方まで割と幅広いように思いますね。
ネオレトロの外装を得たXSR700はかわいらしくもあり、懐かしくもあり。
前回の展示では跨ってエンジンをかけるまでという条件付きで、走行までは許されていませんでいた。
ちなみに関連記事はこちらです。
今回は街の中で実際に乗ることができるとあって、試乗予約を入れた段階からかなりワクワク。
YSP三鷹さんの周りの一般道を20分程度の試乗。
しかしこれだけでも、実際街中を走らせてみると、いろいろ発見があるものですね。
まず跨った感じは?
前回の記事でも話題にしましたが、XSR700は見かけによらずシート高が高いバイクです。
このシート高は、ベースとなっているMT-07 の805mmよりも30mm高い835mm。
同じネオレトロのXSR900よりも5mm高いんですね。
同じ角度で比べると高さ的にだいぶ違うのが解りますよね。
シートの肉厚感もありますし、フレームもシートレール周りも専用になっているのが見て取れます。
しかし、実際に街中で扱ってみると、不思議とこれが気にならないんです。
筆者は、身長161㎝で座高92㎝というドラえもん的短足の持ち主ですが、それでもXSR700に跨る足は親指の根元までしっかり接地していました。
835mmという高さの数値だけを見るとかなり高いわけですが、XSR700はタンクとシートの間あたりがスリムにできているんです。
このおかげで、脚を素直に下におろすことができるので、ちゃんと足が地面に着くんですね。
また写真でハンドル周りの差も見ていただくとわかるのですが、XSR700 のハンドルはMT-07 よりライダーに近い位置にあって高いんです。
加えてMT-07 よりちょっと幅広な感じがします。
前回10月の愛知でMT-07 にも試乗しているわけですが、比べてみるとMT-07 の方が跨ってカチッとポジションが決まる感じ。
対してXSR700の場合は、このハンドルのおかげでかなり自由度が高いゆったりとしたポジションになっていました。
さていよいよXSR700で街中に乗り出しますよ。
結論を先に行ってしまうと、どんな乗り方も受け入れてくれる魔法のようなバイク。
「腰高」が至高のハンドリングを生む
実際に街の中で走らせてみると、やはりこのポジションは「楽」そのもの。
前回乗ることができたMT-07 は179㎏なのに対してXSR700は186㎏なのですが、その差は全く気にならないですし、むしろ取り回しの軽い印象を受けます。
恐らくこれは腰高でアップライトなポジションのおかげ。
ライダーの視線もちょっと先を見通すことができ、視界自体もMT-07 で体験したよりワイドになっていますね。
やっぱり走ってみるとこのあたりは、「なるほどよくできてるなぁ」と感心させられます。
今回は市街地での試乗なので、特にワインディングでの乗り味はわかりませんでした。
しかしレーンチェンジやUターンなど、通常走行上ありがちな動作をするたびに、この腰高な車体構成についてつくづく感心させられます。
つまり、コーナー動作をするとき、高い位置にある腰を振り子にして、スパスパっとメリハリのある動きが決まるんです。
この辺はMT-07 より若干鋭い感じさえしました。
乗り手を魔法使いにするCP2エンジン
このXSR700に搭載されるエンジンはMT-07 と同じCP2と呼ばれる688㏄の並列ツインエンジン。
並列ではあるのですが、270℃クランクのおかげで、Vツインのような太いトルクを初速から感じることができます。
ツインエンジンというと、「ドカドカドカっ」と走っていくイメージを持つ方もおいででしょう。
しかしこのエンジンはとてもきめ細やかなシルキーな印象で「スルスルっ」と走っていきますね。
初速の太いトルクに任せてタリラリラ~ンとのんびり走ると本当に気持ちいい感じがするエンジン。
定評通りライダーの意思に対して思わずニヤけてしまうほど従順でした。
ただそれだけではなくて、結構ワイルドな一面も見せてくれます。
アクセルを「すぃー」と開けていくと、まるで掌で魔法をかけているかのように思ったとおりの加速をしてくれます。
伸びやかで、「ドわぁー!!」という太いトルクがぐんぐん伸びていく感じ。
これは乗っている人の心をかなり豊かに楽しませてくれますね。
XSR700があんまりちゃんということを聞いてくれるので、ちょっといたずら心がわいてきました。
5速にいれたまま速度を50・40km/hと落としていき、30km/h になったところでアクセルをワイドオープン。
筆者のXJR1300Lならかなりギクシャクしてしまうサディスティックな状況です。
しかしXSR700はこれも素直に、ノッキング1つする様子もなくトロロロローンと小気味よく立ち上がっていきます。
きっとライダーが反抗期の娘を持つお父さんなら、かなり癒されるかも…(笑)
「その気」にもこたえるスポーツな顔
エンジンがとにかく従順で必要な時に思い通りのトルクがモリっと出てくれるので、レトロな外見以上に鋭敏でスポーティーな走り方もできちゃうんです。
XSR700はネオレトロタイヤのピレリ―のデーモンを履いています。
ちょっと乗っただけでしたが、このタイヤの接地感もかなりのものでした。
交差点を曲がって、グッとアクセルを開けながら立ち上がっていくと、太いトルクを受け止めながらしっかり地面を蹴っていく感じがしっかり伝わってきます。
「MT-09 よりXSR900の方がスポーティーだ」と言ったのは、尊敬するモータージャーナリストの宮崎敬一郎氏。
このXSR700も「その気」になれば、結構イケちゃうスポーツバイクであることはこの時点で察しがつきました。
バイク+ABSってすごいんだね
また、今年新発売されるから、ABSは標準化され、このXSR700にもABSが装着されています。
筆者はバイクでABSを体験したことがなかったので、前後に車がいないのを確認し、この点も試してみました。
まずは60km/hくらいの速度でリアをロック…、しないですね。(当然ですが)
グッとペダルを踏む締めるんですが、後ろで「カタタタッ」とABSの作動音がしてピタッと止まってくれます。
フロントはもっと自然な感じで、ABSの作動をあまり感じさせないのですが、「フロントロック!」とばかりにレバーを握っても、安定してギュイッと停まってくれます。
これはこれは頼もしいですね。
当然SSバイクほど過激な感じは当然しないわけですが、それでもABSの装備も併せて、かなり引き出しの多いバイクであることは間違いないでしょう。
XSR700の気になるところ
さて、とにかく気持ちのいい乗り味のXSR700 ですが、気になる点もいくつかありました。
メーターはかわいいけど…
この日はフルフェイスのヘルメットをかぶっていったのですが、このメーターはご覧のように結構手前にあるんです。
先述のように腰高のポジションで、かなり見晴らしも良くなるのですが、残念なことにメーターが視界に入らないんです。
だいたいメーター類は見ようとしなくてもそこにある方がうれしいのですよね。
多分オープンフェイスのヘルメットならなら気にならないかもしれませんが、フルフェイスだとXSR700のメーターはちょうどチンガードにすっぽり隠れてしまいます。
なので、見ようと意識してちょっと視点を下に下げないといけない感じなので、この辺はもう少しライト側にしてほかったですね。
またXSR900やBOLTなどと同じデジタルメーター。
デザインがシンプルで、(写真はとれませんでしたが)走行中に表示される文字も丸みがあって可愛らしい感じなのはとてもいいと思います。
ギアインジケーターも親切装備ですね。
ただ、スピードメーターの下にあるファンクションメーターがちょっと残念ですね。
時計 |
|
水温計 |
外気温計 |
トリップメーター |
無表示 |
メーター右下の上のボタンで切り替えていくんですが、時計を表示させたいときには時計だけ。
トリップはトリップだけ。
つまりファンクションは一つだけしか表示できないんです。
水温系や外気温計は呼び出す形で良いと思います。
でも時計とトリップはツーリング中に同時に見たいときもありますから若干不便かもしれませんね。
スイッチもコンパクトだけど…
先述の通り筆者は普段XJR1300Lに乗っています。
XJRのスイッチ類もその前に乗っていたSRX400 よりだいぶコンパクトなスイッチがついているのですが、今回のXSR700 のスイッチは新しくさらにコンパクトなスイッチになっています。
まず右側はXSR900同様、キルスイッチとスタータースイッチが一体になっています。
赤いスイッチを親指で手前に引くとスタート。
押し込めばエンジンストップです。
ハザードもこちら側にあってかなり小ぶりにまとまっています。
結構これは機能的でいいと思いました。
「問題は」といっていいのか左側。
ウインカースイッチもかなりコンパクトなのですが、ホーンの位置がもうちょっと離れていてほしい感じ。
試乗が冬なのでグローブも厚かったのがいけないのか、ついつい触っちゃうんですよね。
走行中、何度もホーンを鳴らしてしまい、横断歩道を渡っている保育園児を驚かせてしまう場面もありました。
まとめ
さて、少々気になるところもありましたが、恐らくこれら慣れでカバーできるものだと思います。
やはり繰り返しになってしまいますが「とにかく従順なバイク」というのが、XSR700全体のイメージでした。
そして展示会の時から予想していたように、やはりスポーティーにも扱える幅の広いキャラクターを持っていたのも印象的ですね。
数値だけで言うとシート高は気になっていたのですが、その点も意外に乗りやすく気にならないレベルだったのは好印象です。
まぁ、帰っていくときのXJR1300Lがどうにも重たく感じたことといったらなかったですね(笑)
実はこの後続けてMT-10SPも試乗させていただきました。
この模様はいずれお伝えしようと思いますが、XSR700はそうしたいわゆる「電脳バイク」とはまた別の楽しさがあることも確認できました。
「ネオレトロ」という言葉で言うと、あくまでXSR700は「ネオ」なバイクだと思います。
乗り手を気負わせることがなく、初心者からかなりバイク歴の長いライダーまで、幅広い層に豊かな楽しみをもたらすバイク。
見かけのレトロさもユニークですが、この幅というか奥行きの広さが「ネオ」な部分ですね。
皆さんも乗れますヨ!
今回の試乗車は、YSP三鷹さんにご協力いただいたもの。
今回のXSR700のほかMT-10SPやMT-09 、さらにはYZF-R25のオーリンズサス装着車にも試乗が可能です。
お店はナップス三鷹東八店と同じ東八道路沿いにあります。
東京都調布市深大寺東町8-32-3
9:00~19:00までの営業(水曜日・年末年始・お盆・GWはお休み)です。
ご試乗について042-488-4544までお問い合わせください。
二輪点では珍しく光軸テスターを持っているお店なので、筆者はオーナー車検の際よく利用させていただいています。
8耐参戦経験のある店長さんがしっかりとアドバイスをしてくれますので、整備に関することも尋ねてみてください。
YSP三鷹の公式ホームページはこちら。
また全国のYSPでも試乗車を持っているところに問い合わせれば、東京以外でも試乗OKですよ!
まずは、乗り味を体験してみたくださいね。