YAMAHA TRACER9/GT欧米ヤマハサイトで発表!今度のはマジですっごいよっ!

11月に入ってから毎週のようにお伝えしているのが、欧米から入ってくるYAMAHAの新車情報。

全面的に刷新された2021年型MT-09の概要をお伝えして、次週にはMT-09SPの発表もあり、これらのバイクたちの刷新ぶりに驚かされたばかりです。

MT-09のエンジン・シャーシは、いくつかの波及モデルのベースになっていますので、今回の大幅なモデルチェンジがそれらのモデルをどんな形にしていくのかというのも、音叉ファンにとっては実に楽しみなところ…。

と、思っていた矢先の11月18日。

早々と欧州ヤマハからトレーサー900の後継モデル「TRACER9」が、なんと「TRACER9 GT」と同時に発表されました!

TRACER9 TRACER9GT

欧米のヤマハサイトに掲載されたTRACER9/GTの概要。

読めば読むほど驚くその内容。

読み終えた時は思わず、

「よもや、よもや」

と声を出してしまいました。

これはまさしく「ビヨンド ザ トレーサー」。

今回は大きな変貌を遂げたTRACER9/GTについてお伝えしていきます。



目次

TRACER がロボフェイスに

いつものように、まずは外観から見ていきましょう。

何を置いても凄いのがYZF-R1譲りのこのロボット的な面構え。

ロボッと的な面構えは最近のヤマハのトレンドで、今回は一層トランスフォーマーっぽさを盛ってきましたね。

複眼的なLEDのヘッドランプは、左右1灯づつが上下を分担する形。

これは私も乗っているMT-10SPと同じもののようで、1灯でもかなり明るいランプ光量を発揮します。

ビッとしたイメージのウィンカーもまた、シャープな「顔」を際立たせていますね。

その根元でにらみを利かせているポジションランプも印象的。

TRACER9 GTではその中に、車体の傾斜度に合わせて作動するコーナリングランプが設けられています。

ヤマハ車においてこの装備は、既にFJR1300シリーズにコーナリングライトが装備されていますが、

ライト上部に3段階に調光されるコーナリングライトがあります。

FJR1300ASで夕暮れの峠道を試乗した際、これは意外なほど便利に感じました。

TRACER9 GTへの搭載はスポーツツーリングモデルとしての走行キャパシティーを広げるうえで、理にかなったものだと思います。

また、スクリーンはFJRのように電動ではありませんが、

ここは従来通り、ワンタッチで5mm単位で10段階の操作ができるるようになっています。

スクリーンの上げ下げにいちいち工具を要する車種もある中、必要に合わせて即応できるのは便利ですね。

左右分割メーター、カッコいい!

この写真でそれ以上に気になるのはメーターの配列。

あえて分散させて視認性の良さを向上させた3.5インチTFTフルカラーのダブルメーター。

いやぁ、これは発想の転換といいますか、私のようにデジタル好きな方なら思わず惚れ惚れしてしまうデザインですね。

しかも、左側のメーターはファンクションメーターになっていて、各種ライディングアシスト機能の設定を行えるようになっています。

トラクションコントロールやスライドコントロール、その上リフトコントロール(ウイリー制御)といった装備があるのがわかりますね。

頭脳派スポーツツアラー

それらを司る電脳システムは、MT-09同様に小型軽量化された新開発の6軸IMU。

小型化された6軸IMUユニット

IMUについてはMT-09の記事でもお伝えしていますが、念のためお伝えしておきましょう。

まず6軸IMUの6軸とは、

  • 前後
  • 左右
  • 上下

の直線的な3軸方向に

  • ピッチ
  • ロール
  • ヨー

という3軸の回転方向を合わせた計6軸の挙動。

IMUというのは、イニシャル・メジャーメント・ユニット(姿勢計測装置)の略で、各部のセンサー群から得られたこれら6軸の挙動情報を計測・統合しながら、エンジン出力を瞬時に調整し、その時点のマシンの姿勢に最適な姿勢を保とうとする運転支援機構のことを言います。

元々はサーキットにおいて、マシンの微細な操作を支援することで、ライダーに戦術を練ることに専念させる目的で開発が進み、ヤマハでは2015年モデルのYZF-R1から搭載されている機構。

IMUはTRACER9/GTに、SS譲りのエキサイトメントをプラスしながらセーフティーライドを支援し、スポーツツーリングモデルとしての頼もしさを格段に向上させているのだと思います。

今回はGTの内容がすごいっ!

IMUは主にエンジン出力を調整しながら姿勢を最適に保ってくれるシステムですが、

GTではこのIMUと連動する電子制御サスペンションが装備され、ライディングアシストをさらに強化しています。

これはKYB社と共同開発の電子制御サスペンション「KADS(KYB Actimatic Damper System)」。

IMUとECU、そしてHU(Hydraulic unit)から得られる情報に連動し、サスペンションコントロールユニットが、減衰レベルを最適化する仕組みになっています。

しかも、減衰力の調整機構には、ヤマハ初となるソレノイド駆動

この駆動方式は減衰力の調整幅を広げられることと、かつ作動が素早いのが特長で、以前これに似た構造を持つ電サス装着車に試乗した際、私のMT-10SPよりも格段に速い作動速度を体感しました。

例えば、ワインディングを走ってみると、マシンが「次、こういう感じで走りたいんですよね?」という感じで常にライダーの一手先を読んで、次の操作に移りやすくしてくれる。

恐らくそんなフィーリングがTRACER9 GTにも与えられたのでしょう。

※この時の試乗車はKawasaki ZX-10R SEです。

その他の電制パーツ群もグレードアップ

GTだけの装備と言えばクイックシフターもその一つ。


GTのシフトロッドはクイックシフターのセンサースイッチが付いています。
Tracer9のシフトロッドは普通のロッド

しかもこれはUP/DOWNの両方に有効なクイックシフター。

これでクラッチ操作を発進・停止時だけにすることも可能なので、かなり楽になりますね。

また今回は、スタンダードモデルのTRACER9と共通する部分でも電制パーツのグレードアップが見られます。

ハンドルを見ていくと、右側には2021年型MT-09と同様に電子スロットル(YCC-T)が採用されてワイヤー類が少なくなり、


写真は2021年型MT-09

ブレーキもタンク別体式のラジアルマスターになったことで、外観としても手元がかなりスッキリしています。

左側のスイッチ群では、これまでトレーサー900GTのみの装備となっていたクルーズコントロールシステムが、

TRACER9/GTでは両車共通の標準装備となりました。

やはり高速巡行を要するツーリングでは必需品。

一般の幹線道路でも、燃費を稼ぐのに有利な装備ですので、両車共通の装備となるのは歓迎すべきことでしょう。

また、GTではグリップウォーマーも標準装備されています。

初めからついているのはうらやましいですね。

関連記事;1人でできた!グリップヒーターのセルフインストールの方法とポイント

またこのほかに、GTではシートがダブルステッチになっていて、表皮もグレードアップしています。


TRACER9 GTのシートにはほかのヤマハの上級グレード車と同じく、
アルカンターラ調の表皮が張られています。

TRACER9のシート

このシートは、両車とも高さを2段で調整できる新設設計。

その上このモデルチェンジでシート高が低いとき:850mm→810mm, 高いとき:865mm→825mmと40㎜も下げられたのは私たち日本人にとってありがたいところでしょう。

積載性もさらにUP 

欧米では、GTにこの大きなパニアケースが標準となるようです。

ただ、現行モデルの例からも、日本ではTRACER9/GT両車にわたってオプションになるようです。

(それにしてもでっかいパニアケースですね。)

そうであっても、テールはパニアケースだけでなく、トップケースも受け入れやすい形状になっているので、マシンを手に入れてからじっくりオプションの購入を検討するのもいいでしょう。

テールランプは現行車のものに似ていますが、これは新作。

写真では今一つわかりにくいですが、つぶつぶ感を抑え、面発光する形になっているのだそうです。

スポーツツアラーを極める専用の骨格

全面的にアップデートされたMT-09のフレーム。

従来通り左右ボルト締結式としながら、アルミの分子結成密度を高めたCFダイキャストフレームは形状はツインスパーに近い形となり、ピボット部の激変で剛性を上げています。

関連記事;

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これまでの例に倣えば、この骨格の上にトレーサーとしての外装を纏い、そのキャラクターが構築されるわけですが、

今回は違います!

今回のTRACER9/GTでは新型MT-09のメインフレームをベースとしながらも、専用チューニングを施した新フレームが採用されました。

まずMT-09ベースのメインフレームには、ヘッドパイプ手前にステーが増設され、シリンダーヘッド左右のエンジン懸架ブラケットにも専用チューニングが施された点が異なりますます。

また、リアフレームもTracer9/GT専用のものとなり、高速安定性やタンデム居住性を向上。

ここにはサイドケース、トップケースの計3バッグの搭載を考慮したステーやブラケットが予め装着されており、積載時の直進安定性・旋回性の向上が図られました。

先ほどのこの部分ですね。

加えて、スイングアームまでがTRACER9/GT専用となったことも特筆すべきでしょう。

 

スイングアームは高い剛性と軽量化の両立を図ったアルミパネルを溶接したボックス構造。

今回のTRACER9/GTではその長さをMT-09比で60㎜延長しています。

それでもホイールベースの長さは従来通りの1,500㎜。

つまりこのロングスイングアームはトラクションをライダーに伝えやすくし、高速走行・旋回時の安心感が向上したものになっているようです。

スポーツツアラーとしてのニーズ真摯に向き合い、そのキャラクターを相当に追い込んで造り込んだ新フレーム。

開発の方々にお話を伺ったたわけではありませんが、この造りからはそうした彼らの想いが伝わってくるような気がします。

ホイールは新製法で前後-700gの軽量化を実現

ピアノのフレームづくりから培われてきたヤマハの鋳造技術。

先述のフレームもその粋を集めた傑作ですが、ホイールもアルミ材の開発と新工法の確立によって生み出された新造品となっています。

これはヤマハが独自に開発した“SPINFORGED WHEEL”という製法。

これにより、鋳造ホイールでありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランスを達成しているといいますから、これは興味深いですね。

そのうえ、現行車のトレーサー900比で前後約700gの 軽量化を果たし、リアの慣性モーメントを11%低減。

回転物は重さが増すとその場に留まろうとする力が強くなるので、ホイールを軽くすればいろいろな方向に動きやすくなります。

バイクの場合は上下動だけではなく、ロール方向の動きもありますよね。

ホイールの軽量化は路面追従性の向上をもたらし、操縦性もかなり変わってくるというわけです。

恐らく現行車と比較比較した場合、その違いはかなり大きく感じられるのではないかと思います。

 

また、標準装着タイヤはブリヂストン社と共同開発のBATTLAX SPORT TOURING T32。

2021年型MT-09ではスポーツライクなBATTLAXのS22を装着するのですが、ここからも両車のキャラクターの差が伺えますね。

 

ここまでのことを踏まえながら、諸元上で現行のトレーサー900と車体の差を見てみると次の通り。

TRACER9/(GT) トレーサー900
全長×全幅×全高 2,175mm x885mm x1,430mm (1,470mm) 2,160mm/850mm/1,375mm
シート高 Lo:810mm, Hi:825mm Lo:850mm,Hi:865mm
軸間距離 1,500mm 1,500mm
キャスター/トレール 25°00′/108mm 24°00′/100mm
最低地上高 135 mm 135mm
車両重量 213kg 【220kg】 214kg〈215kg〉

全長×全幅×全高ともに増しているので、2台の実車を並べた時には恐らく、車体が少し大柄になった印象を受けるでしょう。

今の段階でわかる資料や写真からにははっきりと示されていませんが、GTの全高は40mm高いのは、ひょっとしたら専用に大き目なスクリーンが装着されているのかもしれませんね。

GTの車重5㎏増が乗り味的にどう影響するのかが気になりますが、それでもシート高は低くなっていますから、ライディングポジションもゆったりしているのでしょう。

また、キャスターが1°寝かされているので、直進での安定感が増し、豊かな気持ちを保ったまま距離を愉しめるの乗り味なのではないかと思います。

新しくなったCP3エンジン

今回のモデルチェンジではMT-09同様、ストローク量を3.1mm上げ、圧縮比はそのままにしながらも排気量をこれまでの845ccから889ccへと拡大。

その内部パーツは、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、カムシャフト、クランクケースなど主要パーツの多くは新設計されて軽量なものに。

燃料系も大幅に一新され、従来シリンダーヘッドに直付されていたインジェクターをスロットルバルブ側に移設してバルブ傘裏に向けて噴射するなど、燃焼改善と軽量化されたことにより、燃費が従来比で9%改善(欧州値)しています。

TRACER9 /GTの場合タンク容量が18リットル。

これは現行車のトレーサー900と変わらないのですが、この燃費改善で航続距離の延長が期待できますね。



また、厳しい排ガス規制のユーロ5にも対応し、排気系も刷新されました。

触媒部とサイレンサーが一体化した無駄のないデザイン。

これは今後のバイクのトレンドになるかもしれませんね。

エンジンに関する諸元上で現行のトレーサー900と比較すると次の通り。

TRACER9/GT トレーサー900
原動機種類 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ
気筒数配列 直列3気筒 直列, 3気筒
総排気量 890cm3 845cm3
内径×行程 78.0mm×62.1mm 78.0mm×59.0mm
圧縮比 11.5:1 11.5 : 1
最高出力 87.5kW(119.0PS)/10,000r/min 85kW(116PS)/10,000r/min
最大トルク 93.0N・m(9.5kgf・m)/7,000r/min 87N・m(8.9kgf・m)/8,500r/min
始動方式 セルフ式 セルフ式
燃料タンク容量 18L 18L
エンジンオイル容量 3.5 L 3.40L
タイヤサイズ(前/後) 120/70ZR17M/C (58W) / 180/55ZR17M/C (73W) (前後チューブレス) 120/70ZR17M/C (58W)(チューブレス)/ 180/55ZR17M/C (73W)(チューブレス)

最大出力は3psと増強させ、さらに7%UPとなる最大トルクを1,500r/pm下の回転数位置で発生させているので、

低回転からの立ち上がりもよく、高回転までさらにのびやかになって、ライダーの意思により馴染みやすいキャラクターが期待できますね。


カラーバリエーション

ひとまずここでは欧州ヤマハのHPにあるすべてのカラーバリエーションをご紹介しておきましょう。

TRACER9

レッドライン

テックカモ

 

TRACER9 GT

アイコンパフォーマンス

レッドライン

テックカモ

 

ヤマハ発動機は今回のTRACER9/GTの日本発売について、TRACER9を海外輸出モデルとしたうえで、「TRACER9 GT ABSを2021年春以降に日本での発売を予定している。」としています。

2020年11月21日現在、北米のヤマハサイトでは、TRACER9 シリーズとしてはGTのみがランナップされており、カラーバリエーションは「アイコンパフォーマンス」一色のみ。

ですので、日本でも「アイコンパフォーマンス」一色のみとなるかもしれませんが、できれば3色での展開をお願いしたいですね。

価格について北米サイトのTRACER9 GTの価格が$14,899とありますから、日本円で約115万2,192円。

なので恐らく日本での実勢価格としては125~130万円くらいになるとみています。

だとすれば、この装備でこの価格は相当なお値打ち価格。

思わず愛車の下取り価格を見積もりに行きたくなったり?

私も密かに画策していますよ、フッフッフ。



情報・映像参照元

欧州ヤマハ/TRACER9
https://www.yamaha-motor.eu/gb/en/products/motorcycles/sport-touring/tracer-9/

欧州ヤマハ/TRACER9 GT
https://www.yamaha-motor.eu/gb/en/products/motorcycles/sport-touring/tracer-9-gt/

北米ヤマハ/TRACER9 GT
https://www.yamahamotorsports.com/sport-touring/models/tracer-9-gt

ヤマハ発動機/TRACER9/GT発表サイト
https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2020/1118/tracer9.html#_ga=2.119134657.931277799.1605762121-1489880502.1601910136

ヤマハ発動機/トレーサー900
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tracer900/

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