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どこもかしこも新しい2021年型MT-09
ヤマハ発動機は10月28日、ロードスポーツモデル「MT-09」の2021年型モデルを正式に発表しました。
第一印象として、さらに斬新な「顔」になったほかは、これまでのMT-09の印象から大きく離れていない印象…?
ですが、これはかねてから噂されていたようなマイナーチェンジではなく、全面的に刷新されたフルモデルチェンジ。
エンジン・フレーム共に一新され、3psのパワーアップと4㎏の軽量化に成功しています。
それ以外にも今回のモデルチェンジの中で注目されるべき点は、IMU制御を得て電脳が格段に進化したこと。
各部の進化が、あのエキセントリックな走りにどんな輝きをもたらしたのか?
今回は、2021年型MT-09のディテイルを現行型MT-09と比較しながら、おおよその乗り味予想もしていきます。
※本稿は10/28にヤマハ発動機株式会社より発表になった情報及び、同社の欧州・北米サイトに掲載された情報をまとめてお伝えし、それらを基に走行性能を予測することを目的として構成しています。
それゆえ、今後発表される情報いかんによっては本稿の通りでないこともあり得ますので、その点につきましてはご了承下ださい。
現行型の独創性をおさらい
ここでは2021年型の進化の内容をより深く理解するため、伏線とするべく現行車の特長をおさらいしておこうと思います。
「MT-09の凄いところは?」
と訊けば、
「他社のラインナップにはない3気筒DOHCを搭載していることだ」
と多くのライダーが答えるでしょう。
もちろんそれも間違いではないのですが、MT-09の特長を語る上で必ず語らなければならないのはフレームの製法。
MT-09のフレームは一般のアルミダイキャストよりも素性密度の濃いCFダイキャスト技術を用い、左右2分割ボルトオン構造の溶接レスフレームユニットに搭載するという画期的なもの。
ピボット付近の構造もユニークで、通常スイングアームの外側に見えているはずのフレーム後端を、
スイングアームの内側に絞り込むという独創的な構成になっています。
モタード+ロードスポーツの異種混合というユニークなコンセプトがもたらしたライディングポジションもまた特異なもので、
ライダーの背筋をほぼ直立させ、両手を添えるハンドル幅もロードモデルにしては若干ワイドな印象。
3次元的に形成されたタンク+シートの造形も相まって、かつて私が所有していたオフロードバイクWR250Rに跨った時の印象を思い出させるようなライディングポジションになります。
跨ってすぐ感じるのは、一般的な大型のロードスポーツに跨った時のものとは全く異質な唯一無二の感覚。
恐らく、試乗をされる機会があったなら跨ってすぐに思わず「おぉ~っ!」と声を発し、ステップに足を置いた瞬間、「えぇ~!?」という声を漏らしてしまうかもしれません。
というのも、足の甲がクラッチカバーの下に来ているこの景色を見ることになるためです。
冷静に考えれば、エンジンは3気筒で左右の大きさが4気筒よりもコンパクトなはず。
これはピボット付近をギュッと絞り込んだフレーム形状のおかげなのですが、それでもちゃんと剛性を出しているCFダイキャストフレームは鋳造技術の粋を集めた傑作として恐るべしなのです。
2021年型はこう変わる!
さて、こうした現行車の特長を伏線として、発表されたばかりの2021年型を見ていくことにしましょう。
フレームワークの大幅な変更に大注目
まずは2021年型MT-09のフレームワークをご覧ください。
いかがでしょうか?
これまでのお話を踏まえて上の写真を見れば、「なるほどこれはフルモデルチェンジだな」と納得される点が多いことと思います。
このフレームは新型のCFアルミダイキャスト・デルタボックスフレーム。
溶接レスの左右分割構造はそのままに形状をツインスパーに近いものとし、ピボット部が外側に位置する形に変更されたのがわかりますね。
これによって、新型では縦・横、ねじり剛性のバランスを調整し、横剛性は従来より50%向上。
恐らくピボット付近の形状を外側に移した狙いもそこにあるのではないでしょうか。
それでいながら、フレームの最低肉厚は3.5㎜→1.7mmと約半分の厚みになっているといいますから、この進化は驚異的です。
加えて、サブフレーム(シートレール)もスチールパイプからCFアルミダイキャスト製に変更され、この部分だけでも1.5kg軽量化に成功。
肉薄でも強度が出せて備品点数を減らせるのがCFダイキャストの特長。
それを余すとこなく活かしながら、軽量化と強度性能向上を高次元で両立させるのが、この車体における進化の”骨子”というわけですね。
さらに、現行車ではトラス構造だったスイングアームをシンプルな造形に変更して250gの軽量化に成功。
剛性もUPしているということですので、路面に吸い付くようなスタビリティーの高さが期待できます。
こうした進化により、シャーシ全体ではトータルで2.3kgの軽量化を実現。
ヤマハ伝統の鋳造技術、その最先端がここに惜しみなく注ぎ込まれています。
また、写真からもお分かりのように、ホイールも新形状になっていますね。
このアルミ製ホイールはスピン鍛造という製法で作られており、前後トータルで700gの軽量化を達成。
それだけでなく、最薄部がなんと2mmという驚異的な肉薄構造となっており、リヤホイールでは慣性モーメントを11%減少させているといいますからこれは相当なものです。
車体諸元の変化から新型の「感触」を予測する
具体的に車体関連の諸元を現行車と比較していくと次のようになります。
2021年型 MT-09 (※数値は輸出モデル) |
2018年型 MT-09 | ||
全長/全幅/全高 | 2,090mm×795mm×1,190mm | 2,075mm/815mm/1,120mm | |
シート高 | 825mm | 820mm | |
最低地上高 | 140mm | 135mm | |
軸間距離 | 1,430mm | 1,440mm | |
車両重量 | 189kg | 193kg | |
フレーム形式 | ダイヤモンド | ダイヤモンド | |
キャスター/トレール | 25°00′/108mm | 25°00′/103mm | |
懸架方式(前/後) | テレスコピック/スイングアーム(リンク式) | テレスコピック/スイングアーム(リンク式) |
ホイールベースは10㎜短縮させながら全長が15㎜延長しているのは、
これまでスイングアームマウントだったフェンダーがテールマウントに戻ったこともあるでしょうが、恐らくトレール量が5㎜延長されたことも若干影響しているのでしょう。
この部分から考える乗り味は、低速での取り回し良さも向上し、ワインディングではこれまで以上の接地感を感じながら切れの良い旋回性を安心して味わえるものにのではないかと思います。
また、スイングアームを外側から支えることになったフレームが、意外にも車体幅は20㎜減少してよりスリムになった点も見逃せませんね。
シート高は5㎜ほどアップされていますが、腿周りはさらにスリムになって脚が下に降ろしやすくなる分、シート高UPもほとんど気にならないのかもしれません。
そして、全高は30㎜UPしているので、跨った感じは恐らくこれまでより少し大柄な印象になるのかもしれませんね。
基本的に車体の大きさの計測にミラーを含まないルールなのですが、
上の外観から全高のUPを判断すると、マスターやメーターの変更だけでなく、ハンドルも高くなり、ライダー寄りになっているように見えなくもないですね。
現段階で段数は不明ですが、ハンドルホルダーは可変ホルダーとなっているので、小柄なライダーにはうれしい設計なのではないでしょうか。
できればY’sギアでトレーサー900用のオプション(ハンドルバーライザー46,750円)↑のように自由度が大きい前後スライド式だと嬉しいですが…
マシンを引き起こしてスタンドを払い、ちょっと押して歩いてみた段階から既に、現行車よりもかなり扱いやすくなった印象に?
全体の重量が軽くなり、幅やホイールベースがコンパクトになっていることと合わせて考えると、そうした取り回しのスマートさも予見できます。
また、今回のモデルチェンジはフレームを強化し、車体中心部から外に向かって伸びる構体を軽量させてマスの集中が図る内容。
最低地上高も5㎜UPしていて全体に重心位置も高くなっているように見えます。
その上スイングアームの剛性を上げ、ホイールはマグネシウムホイールに迫る性能を持つ最新のヤマハハンドリング。
これはもう期待せずにはいられませんね。
肝心なエンジン、CP3はどうなった?
高次元に進化した骨格にマウントされる独創のクロスプレーン3気筒エンジン。
このエンジンもまた、大きな進化を遂げています。
フレームのボリュームからか、外観もかなりガッシリとした印象になりましたね。
諸元の変化を読み解こう
エンジン関連の諸元を現行型との諸元を比較すると次の通りになります。
2021年型 MT-09 (※数値は輸出モデル) |
2018年型 MT-09 | ||
原動機種類 | 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ | 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ | |
気筒数配列 | 直列3気筒 | 直列 3気筒 | |
総排気量 | 889cm3 | 845cm3 | |
内径×行程 | 78.0mm×62.1mm | 78.0mm×59.0mm | |
圧縮比 | 11.5:1 | 11.5:1 | |
最高出力 | 87.5kW(119.0PS)/10,000r/min | 85kW(116PS)/10,000r/min | |
最大トルク | 93.0N・m(9.5kgf・m)/7,000r/min | 87N・m(8.9kgf・m)/8,500r/min | |
燃料タンク容量 | 14L | 14L | |
エンジンオイル容量 | 3.50 L | 3.40L |
今回のモデルチェンジではストローク量を3.1mm上げ、圧縮比はそのままにしながらも排気量をこれまでの845ccから889ccへと拡大。
これにより最大出力は3psと増強させ、さらに7%UPとなる最大トルクを1,500r/pm下の回転数位置で発生させるというのが諸元上の主な変更点です。
その内部パーツは、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、カムシャフト、クランクケースなど主要パーツの多くは新設計されて軽量なものに。
燃料系も大幅に一新され、従来シリンダーヘッドに直付されていたインジェクターをスロットルバルブ側に移設してバルブ傘裏に向けて噴射するなど、燃焼改善と軽量化により、燃費が従来比で9%改善(欧州値)しています。
また、ユーロ5に適合するパワーユニットは、吸・排気系も大幅に見直され、
マフラーも左右にシンメトリーなテールパイプと1.5段膨張室サイレンサーを持つ新作となりました。
このスマートなマフラーの重量は1,400gに抑えられ、エンジンと合わせて1,700gの軽量化に成功。
フィーリングとしては恐らく、低速での取り回し良さが向上し、ことにストップアンドゴーの多い都市部での扱いやすさに優位性を発揮するものになるでしょう。
また、3psとその数値自体は小さく見える出力UPですが、車体のアップデートによって、数値以上のエキサイトメントを感じさせてくれるのは間違いなさそうです。
「マスターオブトルクの音」を追求
さらに今回のモデルチェンジではMTの語源である「マスターオブトルク」としての「音」の質感を追求。
それは、アクセルの開け始めは加速感に同調して聴覚的にもトルクを感じやすくし、スロットルをガっと大きく開いた時には高揚感のある音になり、
さらに回転数を上げていくと、音の主体が排気音から吸気音に代わって耳に冴えるというユニークな演出が施されています。
ヤマハはこれまでもレクサスとの協働でLFAで音の演出を担当し、二輪では現行SRにおいて「らしさ」を考え抜いた音の演出で高く評価されているところ。
「音のヤマハ」としてMTの世界観をどう表現しているのか?
ひとつのArtとしてもこれは楽しみですね。
最新の電脳を手に入れたMT
車体・エンジンが硬度のアップデートされた2021年型のMT-09。
今回最も注目されるべきギミックは、新たにIMU制御の電脳を手に入れたことでしょう。
今さら聞けない「IMUって何?」
そもそもIMUとは何ぞやという方のためにお伝えすると、これは「inertial measurement unit」つまり慣性計測装置の略称。
身近なところでこれはスマホにも入っていて、例えばスマホ本体を振ったり、向きを変えたりしながらゲームアプリをコントロールできるのもIMUのおかげ。
ドローンが安定して飛べるのもそうですね。
そんな風に、本体に加わる加速度の強さ・速さなどから慣性力を計測し、本体が今どんな方向でどんな姿勢を取っているかを把握しながら制御する仕組みがIMUだと認識できればだいたいOKです。
今ではサスの動きやブレーキのかかり方もIMUで制御できるようになった車種もありますが、姿勢変化に応じたエンジン出力制御がIMUの基本的な仕事。
例えばフルバンク中にアクセルを開けすぎてリアタイヤが滑り始めたならば、それを即座に検知して出力を最適化したり、低速からアクセルをワイドオープンしてもウイリーしないようにしてくれるわけですね。
ヤマハでは2015年型以降のYZF-R1 に6軸IMUユニットが採用されていることが広く知られています。
映像参照元;グローバルヤマハ
何が6軸かというと上の図のように、「上下」「前後」「左右」の3方向とに加え、「ロール」「ヨー」「ピッチ」の3つの回転方法を合わせた慣性の方向を計測しながら、常に最適な姿勢を保てるようエンジンを制御するのが6軸IMUのお仕事。
2021年型のMT-09では、新開発の6軸IMUを搭載していて、YZF-R1のそれよりも50%小型化と40%の軽量化を実現した最新ユニットとなっています。
このECUは次の3つの制御システムを持っていて、
- [TCS]バンク角連動型トラクションコントロールシステム
- [SCS]旋回サポートのためのスライドコントロールシステム
- [LIF]ウイリー防止のためのリフトコントロール
を統合制御し、個々の制御は相互に連動して運転操作を支援。
各システムの介入レベルの調整やシステムの入/切をハンドルの左ボタンで設定することができるようになっていて、
これらの調整のインターフェイスとなる液晶メーターも、視認しやすい実用的な形になりました。
また、YZF-R1同様の電子スロットルが採用されたことで右手周りはワイヤー類が少なく、
さらにニッシン製のラジアルマスターシリンダーが新採用されたことで、よりスマートな外観を得ています。
そして今回からクイックシフターはUPとDOWN両方向に使えるタイプに進化。
実は私はMT-10SPのオーナでもあるわけですが、ここまで進化した電脳の搭載は相当にはちょっとジェラシーを感じますね。
MT-09には、トレーサー900やXSR900等シャーシやパワーユニットベースにした派生モデルがあることから、これらのモデルへの進化の波及も楽しみです。
スタイリングはもはや孤高の域に?
これまでお伝えしたように、あらゆるパーツが大胆な発想のもとに造り込まれ、それらが一台のバイクの車体を構成しています。
そのスタイリングもまた極めて前衛的なもの。
上向き下向き切り替え可能な一灯LEDが睨みを利かせ、日本のダークサイドを鋭く照らしています。
発表されたカラーバリは3パターン
現在欧米のヤマハサイトで発表されているカラーバリエーションは次の3パターン。
※写真は北米仕様のもので、今後発売される国内仕様とは異なる点がある可能性があります。
この3パターンをもっとよく見たいという方はこちら。
車体をくるくる回しながら360°いろいろな角度から見ることができますよ。
古い型紙なんか、破り捨てちまえ!
新車情報では、初めにその車両の外観をドーンとお見せして「かっこいいね」と褒めちぎり、おまけのように諸元に触れるというのがセオリーとしてあるのかもしれません。
しかし今回のMT-09の場合は、まず十分に「中身」の凄さをお伝えし、「故にこの形なのだ」とお伝えするのがベストだと考えました。
というのも先述の通り、私自身MT-10SPに乗っていて、保守的?なバイクを型紙に考えるライダーから、「カッコ悪い」「美しさがない」などと言われてしまうことも少なくなくありません。
MTシリーズは前衛上等。
造り手の情熱を感じながら、その質感に乗るのがMTの惚れ方だと考えます。
流行りすたりや、他人の同調圧力をつんざいて往くの姿がこのスタイリング。
MT-09は真の自由と独創性を愉しめる最高のマシンになるはずです。
その価格は北米で9,399ドル。
今のレートで約98万円ほどですが、諸々110万円前後になるものとみています
このくらいの価格でIMU制御のハイパーネイキッドを手にすることができるとなれば、お買い得だといえるでしょう。
日本発売は2021年春以降と発表されていますので、現車にお目にかかるのが楽しみですね。
映像・文献参照元
https://www.yamahamotorsports.com/hyper-naked/models/mt-09
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/mt-09/
https://www.yamaha-motor.eu/gb/en/products/motorcycles/hyper-naked/mt-09/
https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2020/1028/mt-09.html