YAMAHA トリシティー300 9月30日に国内発売へ 新しいLMWの世界が走り出す!

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目次

LMWビックスクーター登場!

2018年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で発表された「3CT」という前2輪のスクーター。

当時、現地から配信されたこの映像を見て「おー、そう来たかぁ」と思った方も多いと思います。

シートにあしらわれたLEDのステッチがなかなかカッコいい!

昨年(2019年)秋の東京モーターショー(TMS)では「TRICITY300」として出品され、

「これなら今年春には発売では?」と期待値も高く待っていた方もおいででしょう。

いよいよこのTRICITY300が、9月30日に国内で発売されることがヤマハから正式発表されました。

ヤマハが初めてTRICITY125に搭載したフロント二輪のLMW(リーニング・マルチ・ホイールズ)機構。

2018年にはNIKENへと進化し、今回のTRICITY300ではさらに快適性を増すための独創的な機構が盛り込まれているようです。

今回はこれまでのLMW機構と比較しながら、最新のTRICITY300について解説し、その乗り味を予測いしたいと思います。



何で前2輪?

LMWは「転ばないバイク」というテーマに対して、ヤマハが具現化したひとつの回答です。

以前私は、ヤマハが主宰する試乗会でTRICITY155とMajyesuty-Sの試乗比較をさせていただいたことがあるのですが、この体験が私にLMWの存在意義を深く印象付けることとなりました。

この試乗は一本目にTRICITY155でご覧のようなスラローム走行を行い、二本目には同じコースをMajyesty-Sで走行するという内容。

LMW(リーニング・マルチ・ホイールズ)はその名の通り、操舵輪が車体と一緒に傾斜する構造です。

多少攻め込むように走ってみてもライダーの意思を阻害することなく、ヒラヒラと向きを変えるその動きはスクーターとは思えないほど鮮やか。

その自然な操舵性には大変驚かされました。

ところがです。

二本目のMajyesty-Sでこのコースを同じ勢いで走ろうとすると…、

これが怖くて全くできないんです。

とういうのも、このコースはオフシーズンのプールリゾートの駐車場を利用した臨時のコース。

舗装は粗く、うっすら砂利が浮いているかなりスリッピーな路面だったのです。

2輪だと簡単にフロントを救われてしまうところでも、それに全く気付かないほど、フロント2輪のTRICITY155では思い切った走りができてしまうんですね。

その上、コーナー途中に段差があったとしても大丈夫。


映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/feature.html

例えばお店に入るために曲がりながら縁石を乗り越えるといった場面でも段差によろけることが無いので、ライダーは進行方向に視線を送り、安心してアクセルを開けることができます。

左右どちらかのタイヤがミューを失っても、もう一方のタイヤで車体を支えながら操舵を保つのがLMWの主な役割。

そのうえ、安全性を底上げしながら、「リーンする」というバイクの愉しみをしっかりと味合わせてくれるのがLMWの真骨頂だと言えるでしょう。

「LMWアッカーマンジオメトリ」とは?(LMW3兄弟の違い)

ヤマハのLMWシリーズも、今回のTRICITY300が加わって(大きく分けて)3車種目。

一口にLMWと言っても、違いは外見のみならず、与えられた特性も3車3様です。

TRICITY125/155のLMW

例えば、TRICITY125/155のLMWは乗用車などに採用されている一般的なアッカーマン・ジオメトリを応用した、言わば第一世代のLMW。

一般的なアッカーマン・ジオメトリでは下の図のように、フロント2輪のうち、コーナーの内輪を鋭角に切りながら同心円を描く形になっていて、


画像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/niken/feature.html

TRICITY125/155のLMWでは、これを左右の操舵輪をバンクさせながら機能するように工夫されています。

TRICITY125/155の最大バンク角は38°なのですが、

もしもこの形式でバンク角をさらに45°まで深くしたとすると下の図のように、


画像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/niken/feature.html

左右の操舵輪の方向が開く形になり、ハンドリングに悪影響が及ぶのだそうです。

NIKENのLMW

そのため、NIKENでは新たに「LMWアッカーマン・ジオメトリ」を開発。

この「LMWアッカーマン・ジオメトリ」は、バンク角に影響されずに左右の操舵輪を平行を保ったままリーンさせるので、高速旋回時でもスムースな旋回性が得られのが特長です。

画像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/niken/feature.html

NIKENのフロントフォークが外側に配置されているのは、冷却効率を考慮しつつ45°という深い最大バンク角を実現するためにたどり着いた形。

これは、スポーツバイクとしてのエキサイトメントを安全に愉しめるようにした、いわばスポーツバージョンのLMWです。

ですので、「刺激も安定も手に入れろ」というNIKENのキャッチコピーの真意は、乗れば必ず受け入れられるものだと思いますね。

TRICITY300のLMW

そして今回新しく登場したTRICITY300のLMW。

外観上はTRICITY125/155と同様、サスペンションを内側に配したタイプになっていますよね。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/color.html

しかし、TRICITY300のLMWには、NIKENと同じく「LMWアッカーマン・ジオメトリ」が採用されているのです。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html

これはNIKENのように深いバンク角は求めるものではなく、TRICITY125/155よりも速度域も速くなることに対応し、重量の増した車体の動きをスムースにするための形。

TRICITY300では、新しいLMWの採用に合わせて車体各所に快適性を追求する設計がなされています。

操安性については具体的に

  • フロント2輪がしっかり路面に接地していることが強く感じられること
  • 旋回時にはとてもしなやかでこれまでのヤマハ史上最高の安定感を持った上質なハンドリングを目指すこと

という目標が立てられました。

それに向けてフロントには、ブリヂストンとの共同でLMW専用に14インチタイヤ「BATTLAX SC」を専用開発。

ブレーキは前後効力配分を最適バランスさせる前後連動ブレーキ、UBS(ユニファイド・ブレーキ・システム)とABSを共に装備していて、LMWにマッチするよう最適化が図られています。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/feature.html

開発陣はこうしてタイヤ径を大きくしながらも、ライダーのフットスペースを確保できるようにするという難しい課題にあえて挑戦することになるのですが、

彼らはLMWのパラレルアームの角度をNIKENよりも立てながら、周辺パーツの角度やサイズを幾度も調整することで見事にこの相反課題をクリア。

さらにフレームワークにおいても剛性と軽量化という課題を克服し、ライダーがゆったりと足を投げ出したライディングポジションを実現させることに成功しています。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html


LMWの集大成、TRICITY300で採用の新機構

TRICITY125やNIKENのデビュー当時、ネット上の質問箱には、

「ミニカーやトライク(3輪自動車)として登録し、4輪の普通免許で運転することは可能か?」

という質問がよく載っていました。

しかし、結論から言ってこれはできません。

普通二輪以外の登録には、足をつかなくても車体が自立できる構造であることが必要なのですが、

LMWは足を着かなければ転倒してしまい、完全に自立することはできないので、3輪自動車としての登録はできないのです。

今回のTRICITY300では車体の傾きを制限し、自立をサポートするスタンディングアシストが、ヤマハの市販モデルとして初めて採用されました。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/feature.html

この作動には条件があり、

  1. 車速10km/h以下であること。
  2. スロットル全閉状態であること。
  3. エンジン回転数2,000r/min以下であること。
  4. スタンディングアシストスイッチがONであること。

という4つの条件下で作動するようになっています。

お分かりのように、これも恒久的な自立機構ではなく、パートタイムでLMWをロックして自立を補助する機構であるため、やはりTRICITY300も3輪自動車登録をすることはできません。

これは例えば、信号待ちでこのスイッチを押すと停車時にマシンを自立させることができ、その間フロアに両足を置いたままにできるというラクチン機構。

立ちごけする心配からも解放され、しかも青信号と共にスタートすれば自動的に解除されるので、走行中は一般のバイクと同様にリーンしながらひらひらとした動きを楽しめるわけです。

スタンディングアシストスイッチを2回押すことでも解除が可能です。

設計・テストの段階では、この解除のタイミングがライダーの感覚を阻害しない自然なものになるよう試行錯誤が繰り返されたと言いますから、今後試乗するチャンスが訪れたらその作り込みのほどを試してみたいですね。

また、こうしてタンデム走行時にパッセンジャーが乗り込む場面でも、

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html

パッセンジャーの動きに振られたりすることが無いので、ライダーにもパッセンジャーにも不安を与えませんし、連泊のロングツーリング等で荷物をたくさん積む時も、この機構はきっと便利な味方になってくれるでしょう。

ラチェットレバー式リアブレーキロックを採用

スタンディングアシストが働いている間、ライダーはフロアに足を載せたままにできるわけですが、そのままでは前後に車体が動いてしまう可能性がありますよね。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html

もちろん、ブレーキを握っていればよいのですが、左のパネルに設けられたラチェットレバー式のリアブレーキロックを引けば、坂道の停車も楽々です。

実は記事の初めに、昨年出展されたプロトタイプのTRICITY300があったと思いますが、

お分かりいただけますでしょうか?

この段階ではまだ、踏み込み式のブレーキロックになっていたんです。

ここは開発陣が最後の最後まで協議を重ねた部分だそうで、

「ライダーには足を投げ出してゆったりと乗ってもらいたい」

というゴールを最後まであきらめず、


映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html

サイドパネルにスッキリと納めてくれたのは素晴らしいと思います。

※2020年9/2追記; 欧州の法律により、3輪の乗り物にはフットブレーキの装着義務があるとのこと。

 ですので、欧州仕様車にはフットブレーキがついているとのことでした。

 UKの試乗動画を見て気づきましたので、その旨追記にてお知らせします。

国内仕様につけなかったところを見ると、やはりメーカーとしてはデザイン、そして機能的にも本当はフットブレーキなんてつけたくなかったのでしょうね。

TRICITY300乗り味をX-MAXの走りから予測してみる

ここではTRICITY300が、X-MAXをベースに発展したものと捉え、X-MAXの試乗経験をもとにTRICITY300の走りを予測してみることにします。

エンジンは、「BLUE CORE(ブルーコア)」思想に基づく単気筒249cm3水冷エンジンで、最高出力は23ps/7,000rpm。

X-MAXのBLUE COREエンジンは、

  • 熱強度に優れた軽量アルミ鍛造ピストンを軽量かつ放熱性に優れたDiASilシリンダーに搭載。
  • ボアセンターとシリンダーセンターをオフセットして搭載。
  • 一体鍛造クランクシャフトの採用。
  • セミドライサンプのエンジンオイル循環方式。

という構成で徹底的にロスの低減を図りながら、「燃費と環境性能」と「走りの楽しさ」とを高次元で両立をさせたものになっています。

スクーターの加速は、アクセルを開けはじめてから加速開始までに一瞬のラグがあるものですが、BLUE COREエンジンではアクセレーションに対する反応が非常にリニア。

ライダーの意思に沿った形でスムースな加速が得られ、それがのびやかに続いていくフィーリングが好印象です。

また、33㎜径の成立サスペンションは、強度・剛性をバランスさせた意欲作。


映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/xmax/feature.html

ハンドリングに関してはワインディングでも、スクーターらしからぬスポーティーな走りを味わうことができ、

大柄な車体をコンパクトに感じるほどの車体全体のバランスの良さは、軽快な走りを楽しませてくれます。

外観的にもシャープなX-MAXに対し、TRICITY300は全体にボリューム感のある印象を受けますね。


映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/feature.html

これまでお話してきたように、TRICITY300の車体はLMW機構を備えたことに伴い、車体のすべてを新作として造り上げたものになっています。

映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/story.html

TRICITY300のエンジンは、海外仕様のX-MAX300をベースにしたBLUE COREエンジンで、排気量は292cm3となっています。

これは車重ではX-MAXが179㎏であるのに対し、TRICITY300では237㎏と大人約一人分ほど重量が増化した中、フィーリングを第一に考えて選択された排気量。

さらに専用FIセッティングなど、燃焼速度の向上やロス馬力の低減を図る最適化仕様になっているとのこと。

なのでこの2台を比較しても、58㎏もの重量差をそう大きなものとして感じさせず、X-MAXが持っている鮮やかなヒラヒラ感をさらに昇華させたものになっているのではないかと思います。

また、この2台の比較ではTRICITY300のLMWにどうしても目を奪われがちですが、

テールまわりに注目してみると、X-MAXの2段巻きのリアサス(調整機構付き)が、TRICITY300では等間隔のピッチで巻かれたタイプに変更されているのがわかりますね。

恐らくここにも、2台のキャラクターの差というのが現れているような気がします。

TRICITY300のコンセプトは、“The Smartest Commuting Way“、(賢い移動手段)。

これが乗り味全般を言い得ているものであるならば、リアサスも初期からしなやかな感触で、タンデム性能も考慮した腰のあるフィーリングに仕上がっているのではないでしょうか。

これまで私はMT-09とNIKENとを比較しながら試乗した経験もありますが、LMW車は取り回しの重さこそ感じてしまうものの、走り出してしまえば臆することなく乗れるLMWの方が圧倒的に楽。

キーレスイグニッションは僅かしかないというX-MAXとの共通部品。


映像参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2020/08/20200824-001.html

こうした上級装備や、ゆったり感を重視した車体構成を見る限り、TRICITY300は開発陣の狙い通り、LMWシリーズの中で最も上質でしなやかなモデルに仕上がっていることは間違いないようです。



カラーバリエーションは3色

TRICITY300には3つの車体色が用意されています。

ブルーイッシュグレーソリッド4(グレー)

マットグレーメタリック6(マットグレー)

マットダークグレーメタリックA(マットグリーニッシュグレー)

 

上記3枚ともにhttps://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/xmax/color.htmlより参照。

どの色も、スーツやレザーファッションが似合いそうなフォーマルな色合い。

フロントホイールのワンポイントもチャーミングですね。

価格は957,000円 [消費税10%含む](本体価格 870,000円)

このクラスのスクーターとしてはやや高価に感じますが、ここまでお伝えした造りの緻密さを想えば、100万円を切ったことがむしろ良心的に思えるでしょう。

新機構を加えたLMWのビックスクーター、TRICITY300。

9月30日はお近くのヤマハ車取扱店へGOですよ!

TRICITY300 諸元

認定型式/原動機打刻型式 2BL-SH15J/H344E
全長/全幅/全高 2,250mm/815mm/1,470mm
シート高 795mm
軸間距離 1,595mm
最低地上高 130mm
車両重量 237kg
燃料消費率 国土交通省届出値
定地燃費値
38.4km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 31.5km/L(クラス2, サブクラス2-2) 1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 292cm3
内径×行程 70.0mm×75.9mm
圧縮比 10.9:1
最高出力 21kW(29PS)/7,250r/min
最大トルク 29N・m(3.0kgf・m)/5,750r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 セミドライサンプ
エンジンオイル容量 1.70L
燃料タンク容量 13L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V, 7.0Ah(10HR)/YTZ8V
1次減速比/2次減速比 1.000/7.589 (48/18 X 37/13)
クラッチ形式 乾式, 遠心, シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.386〜0.746:無段変速
フレーム形式 バックボーン
キャスター/トレール 20°00′/68mm
タイヤサイズ(前/後) 120/70-14M/C 55P(チューブレス)/ 140/70-14M/C 62P(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式ディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名

諸元参照元;https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity300/spec.html

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