素晴らしいバイクだと感嘆しながら、後になってふと見た驚愕の積算距離。
CB1100の造りの良さへの驚きから、筆者は新車状態のCBがどんなバイクなのかが大変気になるようになりました。
今回は(前編)に続き、試乗車をお借りして、CB1100の更なる魅力を探っていきたいと思います。
目次
惚れたぜCB1100
加速は素直でのびやか。
セルフステアの舵の入り方も絶妙で、曲がって気持ちいい。
とにかくストレスなく楽しませてくれる。
「これが空冷なのか?」
「これが18インチホイールの走りなのか?」
バイクを降りてもその美しい佇まいに、もはや気持ちを奪われつつあります。
しかしその個体の走行距離は9万1千㎞オーバー。
CB1100のまとまり良さにも驚かされましたが、
多走行にして、これだけ満足させてくれるバイクであることが最も筆者を驚かせました。
『ならば、新車のCB1100ってどんなバイクなんだろう?』
そのあたりが気になり、HONDA WING 立川さんに試乗車のご協力いただきました。
関連記事;【試乗レポート前編】ホンダ CB1100その堅実で美しい魅力に親しむ
発展したCB1100シリーズ
他のメーカーが空冷シリーズの存続をあきらめるほど、空冷に厳しい環境規制。
ホンダはCB1100をその規制を乗り越えて、登場から8年が経過した今も継続販売され、今や「孤高の空冷」ともいうべき存在になりました。
スタイリングは?
マフラーが2本出しになって、スタイリングがより美しくなった印象ですね。
これは空冷然とした音をつくって、ライダーがそれを楽しめるようにするためだとか。
創業者の本田総一郎氏は大の空冷ファンだったといいますから、これは相当お喜びでしょう。
そのほかは、外見上違いとしてはの写真のホワイト一色ののみの設定となり、サイドパネルが黒塗装に変わったところがポイントです。
2014年からシリーズにCB1100EXが追加されています。
ワイヤースポークホイールの採用など、渋みを増していますね。
ベースとなっているCB1300が6速化したことから、この代でCB1100シリーズもミッションを6速化。
そして、同様にシフトダウン時にマシンの挙動を安定させるスリッパークラッチも装備しました。
2,017年モデルではこれまでのスタイルを継承するスタンダードモデルに加え、スポークモデルのEXではタンクのデザインも変わったんですね。
EXのタンクはよく見ると、溶接の継ぎ目がない「フランジレス」という新しい技術で造られているんです。
ライトもLEDになっていますね。
この辺りは「レトロ」の一言ではもったいない、「空冷4発の最先端」としての存在感を感じさせます。
さらにこの代から、サスを強化して17インチホイール化、アライメントにも最適化が施されたスポーツモデルのCB1100RSも加わっています。
キャリパーだってRSだけラジアルマウントですよ。
今回このRSには乗っていませんが、この本気度がますます気になりますね。
CB1100RSについては、また機会があればまた試乗レポートをしたいと思います。
こうして幅広いライダーの趣を受け止めるべく、一車種3タイプとなってその守備範囲を広げたホンダ。
いざ購入となったなら、一台に絞るのに時間がかかりそうです。
跨ってみての感想
今回HONDA WING 立川さんにご用意いただいたのはCB1100EXのType1(Eパッケージ)。
ポジションやシート高など
お店に到着すると、パールホワイトの美しい機体が待っていました。
かつてCB1100には、ハンドルポジションがゆったりしたType1と、ややスポーティーなポジションになるType2とがありました。
2012年にType2 が廃止されていたのですが、現行モデルではこのCB1100EXにそのタイプ分けが復活しています。
先述の3タイプから、ライダーの趣向をさらに細かく受け止めていこうというこのバリエーション設定も素晴らしいと思います。
カタログ的にはCB1100がシート高765㎜でCB1100EXは780㎜重量的にはCB1100EX(Eパッケージ)のほうが2㎏軽いようです。
タンク容量はCB1100が14リットルで、CB1100EX/RSでは16リットルと2リットルの容量増。
これはツーリングにうれしいですね。
スタイリングを比べてみると、CB1100EXのほうがタンク前方がやや横に張り出した形。
初期型からすっと乗り換えてみると、CB1100EXにはひざ周りすっきりした印象がそのままで、シリーズ特有のコンパクト感が共有されているのがわかります。
特にシート高20mmアップといっても足つき性は抜群。
身長162㎝の筆者にして、両足をべったり接地させることができ、さらにヒザも若干曲げられるのでかなりゆとりがありました。
筆者が乗ってきた代車同様、お借りした試乗車もハンドルがType1。
跨ったポジションは、上体はまっすぐ起きていて疲れにくい自然なポジションをキープできます。
跨った段階でわかる差としては、CB1100EXのソフトでコシのある座り心地。
預かった代車のCB1100ではシートは固い印象でした。
しかし、9万キロ越えの個体なだけに、比較としては参考にならないのかもしれませんね。
その使い勝手は?
メーターパネルはシンプルながらも視認性の良いもの。
スピードメーターとタコメーターの間には、デジタルの燃料計、シフトインジケーターなどが機能性良く配置されています。
また、こちらにはアンテナ分離型のETC車載器が搭載されています。
そして冬のライディングにはありがたい、グリップヒーター等も備わっていますね。
このグリップヒーターは5段階調整可能なスポーツタイプで、スイッチも小さめで夏にも邪魔にはなりません。
これらについては、CB1100EX/RSでは標準で装備されますが、CB1100においては「Eパッケージ」という仕様を選べば装備することができます。
今回の試乗は晴天ながら冷え冷えした日だったので、この装備は大変ありがたいものでした。
ゆったりとしたポジションで元々ツーリング性能には定評があるCB1100シリーズ。
こうした装備の充実でホンダの掲げるイメージコピー通り「もっともっと自分を連れ出すんだ」という気持ちになりますね。
その乗り味を堪能す
スターターボタンを押すと、空冷4発が目を覚まし、やや低めの穏やかなサウンドで歌い始めます。
柏秀樹先生に教わったクラッチスタートで、クラッチをゆっくりとつないで速度が乗ったあたりでアクセルを開け始める。
この走らせ方をこのバイクは実に素直に受け入れてくれます。
今回の試乗はお店の周囲約1㎞程度を3周する極限られた走行範囲。
角を曲がるだけしかないコースの中でも、コントローラブルな車体の出来の良さをしっかり感じることができました。
代車のCB1100で感じたように、加速は非常にのびやか。
2本出しのマフラーは狙い通り、「トゥオロロロ」という空冷の味を残したサウンドを耳に届けてくれます。
今回、5速から6速になったことで、常用域でも巡航時にはエンジンの回転を抑えて静々と走らせることもできますね。
さらに、スリッパークラッチの効果は絶大で、ギア操作そのものが格段に楽になっているほか、ハードなシフトダウンでも挙動が乱れる心配から解放されます。
また、カタログ上の燃費も、5速の初期型の27㎞/liteから、31.3㎞/lite(60㎞/h定地走行)へと向上しているのはうれしいですね。
初期型でも相当ツーリングがら楽だったのですが、もしこのCB1100EXでツーリングができたなら相当楽に距離を延ばせるのは間違いないと思います。
静かに走ってくれて、ゆとりあるポジション。
「本当はバイクってそんなに気負って乗らなくていいんだよ」と言われているかのような気持になりました。
のびやかな走りで豊かな気持ちがどんどん筆者の中に広がっていきます。
「渋みのある道先案内人」
CB1100が持っていたキャラクターの奥行きが広がり、より細やかな走らせ方ができるようになった印象を得ました。
まとめ
CB1100はネオレトロバイクの中に数えられることもありますよね。
でも、今回の試乗を通して感じたのは懐古主義ではなく「先進性」。
空冷の味を出すことにこだわって、バルブタイミングをずらし、音をあえて若干ばらつかせてみたり。
細々したところにはしっかり新しい技術で造っている。
つまり、『CB1100は初代「K」からの伝統を正当進化させたものなんだなぁ』とつくづく思いました。
そう思いながら、
「これからもホンダは空冷を残す」
というかつて取材でお会いしたホンダ二輪R&Dの林さんの言葉を思い出します。
↑ ホンダ技研二輪R&D 上席研究員 シニアエキスパートの林 徹(あきら)さん
環境規制によって惜しまれながら消えていく車種が非常に多かった昨今。
CBはやっぱり平成が終わってもずっとCBであり続けてほしい。
とヤマハ最後の空冷4発に乗る筆者はエールるを送るのでした。
CB1100シリーズ各諸元
CB1100 EX/CB1100 RS/CB1100 の主要諸元は以下の通り
CB1100 EX〈Type I〉 【 】内は〈Type II〉 |
CB1100 RS |
〔 〕内はE Package |
|||
---|---|---|---|---|---|
車名・型式 | ホンダ・2BL-SC65 | ||||
全長(mm) | 2,200 | 2,180 | 2,205 | ||
全幅(mm) | 830【800】 | 800 | 835 | ||
全高(mm) | 1,130【1,110】 | 1,100 | 1,130 | ||
軸距(mm) | 1,490 | 1,485 | 1,490 | ||
最低地上高(mm) | 135 | 130 | 135 | ||
シート高(mm) | 780 | 785 | 765 | ||
車両重量(kg) | 255 | 252 | 252 〔253〕 | ||
乗車定員(人) | 2 | ||||
燃料消費率*1(km/L) | 国土交通省届出値: 定地燃費値 (km/h) |
31.3 (60) 〈2名乗車時〉 |
31.1 (60) 〈2名乗車時〉 |
31.3 (60) 〈2名乗車時〉 |
|
WMTCモード値(クラス) | 18.9(クラス 3-2)〈1名乗車時〉 | ||||
最小回転半径(m) | 2.7 | ||||
エンジン型式 | SC65E | ||||
エンジン種類 | 空冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 | ||||
総排気量(cm³) | 1,140 | ||||
内径×行程(mm) | 73.5 × 67.2 | ||||
圧縮比 | 9.5 | ||||
最高出力 (kW[PS]/rpm) |
66[90]/7,500 | ||||
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) |
91[9.3]/5,500 | ||||
燃料供給装置形式 | 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 | ||||
始動方式 | セルフ式 | ||||
点火装置形式 | フルトランジスタ式バッテリー点火 | ||||
潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 | ||||
燃料タンク容量(L) | 16 | 14 | |||
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング式 | ||||
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | ||||
変速比 | 1速 | 3.083 | |||
2速 | 1.941 | ||||
3速 | 1.478 | ||||
4速 | 1.240 | ||||
5速 | 1.074 | ||||
6速 | 0.964 | ||||
減速比(1次/2次) | 1.652/2.222 | ||||
キャスター角(度) | 27゜ 00′ | 26゜ 00′ | 27゜ 00′ | ||
トレール量(mm) | 114 | 99 | 114 | ||
タイヤ | 前 | 110/80R18 M/C 58V | 120/70ZR17 M/C(58W) | 110/80R18 M/C 58V | |
後 | 140/70R18 M/C 67V | 180/55ZR17 M/C(73W) | 140/70R18 M/C 67V | ||
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク | |||
後 | 油圧式ディスク | ||||
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 | |||
後 | スイングアーム式 | ||||
フレーム形式 | ダブルクレードル |
引用元;http://www.honda.co.jp/CB1100/spec
取材協力店のご紹介
今回、試乗車をご協力いただいたのは、東京都立川市にあるホンダウイング立川様。
こちらにはCB1100EXのほかCBR1000RRからグロムまで、注目の最新機種の試乗車を体験していただくことができます。
一日3台までのご試乗が可能ですが、ご試乗には予約が必要とのこと。
ご希望の方は、あらかじめこちらまでご連絡ください。
また関東県外の方もこちらからお近くのホンダウイング店の試乗車在庫をチェックできますよ。
クラス・カテゴリー別では今一番人気だというCB1100.
この新しさに皆さんも一度ぜひ、試乗車で触れてみてください。