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若い世代とバイクで交流するのは本当に楽しい
「お久しぶりです、山本さん。実は今乗っているバイクに新しいパーツを手に入れたんですが、取り付けるの一緒にやってもらえませんか?」
これはかつて務めていたレンタカー店で当時アルバイト学生として働いていたN君から久しぶりに届いたLineコメント。
このコメントをもらったら何だかとてもうれしい気持ちになったので、万障繰り合わせて手伝うことにしました。
今日はその時の話を思い出しながら、バイクの夢などについて語ってみたいと思います。
若い人たちは決してバイクに冷めてなんかいない
以前、私はとあるレンタカー会社の営業所に務めていました。
そこは某有名私立大学の正門のほぼ隣に位置する営業所。
Google mapより
ここでは隣の大学の自動車部の学生さんたちがアルバイトで多数活躍しています。
日常的に車の組みバラシに親しんでいる彼らは同時にバイク好きであることも多く、彼らとバイク談義に花を咲かせるのが当時の私にとって一番の楽しみ。
所帯持ちの私以上に自由に時間を使える彼らだけあって、ツーリング先の最新情報などは彼らの方が詳しく、パーツの組み方についても、より良い組み方を教えてもらうこともありました。
こうして私の目の前にはバイク好きの若者たちが日常的に複数いて、彼らのバイク熱も相当なものでしたが、世の中では「若者のバイク離れ」が現代の若者の傾向として当然のことのように語られています。
私からすると、
「これはどこのネガティヴキャンペーンだろう?」
と思うほど現実と乖離しているように見え、
「いやいや人口比で確かに減っているかもしれないけれど、若い子たちのバイク熱ってむしろオッサンたちよりすごいんだぞ!」
と言いたくなったのが、このサイトを開くそもそものきっかけでした。
バイクで繋がるってホントにうれしい
当時のN君は営業所の近所の実家から他県の大学に通う愛すべき「バイクバカ」の一人。
私がレンタカー店を退職した後も一緒に走りに出かけたり、サーキットにレースを見に行ったり、
さらには彼が就職した後に「営業先が近くだから」とわざわざ顔を見に訪ねてきてくれたりと、私のようなオッサンの良き遊び相手になってくれていました。
ところが私も彼もそれぞれに紆余曲折忙しく、連絡も取り合わないまま1年以上の月日が経過。
この間は何かと毎日気ぜわしく、「バイクって楽しいですよ」というブログを作り続けているくせに、たいして触れることもできない「仕事」としてバイクへのモヤモヤ感から、なんとなく心を休めたい気持ちにもなっていたところでした。
そんな中でもらったN君からのLine。
コロナのせいで大っぴらにバイクに乗るわけにもいかず、いじって楽しむ機会を得たことも、何かの救いのようでうれしかったのです。
たとえしばらく会っていなかった人ととでも、こんな風にバイクで繋がれるって本当にうれしいもの。
やっぱりバイクに乗ってて本当に良かったなと思います。
「バイクバカ」かく受け継がれり
♪そんな時代もあったねと…
こんな私もかつて、サーキットに通い詰めていた時期があり、今回こうして彼の依頼を受けられる道具がそろっているのもそのころの名残。
GPライダーだった故若井伸之選手の全日本時代のチームメイトだったS氏による厳しい指導を受けながら、走り方や整備の方法を学んだ若い日々を思い出します。
若気の至りで、いわゆる峠のあんちゃんだった私ですが、無謀な走りをする私を某峠に連れていくとS氏は、
「ココにもうすぐ路線バスが来る。バスのペースで十分だから、その後ろでゆっくりと走行ラインを覚え、それに必要なブレーキングやアクセルのポイントを頭に叩き込めよ。」
というと、S氏はバスの後ろについて、バックミラーの中で後続についた私の動きを事細かにチェック。
「あのコーナーの入りで、あそこまでフロンをサスを沈ませるなんて何考えてんだ!
もっと力を抜け!
峠で速さなんてどうでもいい、ここは頑張るところじゃない、感覚掴んで楽しむことが大事なんだ!」
全日本を転戦したS氏の厳しい言葉には含蓄があり、未だに耳から離れないわけですが、中でも絶対に忘れないのは、
「いいか?俺に関わった以上はなぁ、せっかくバイクで楽しもうってお前の頭に(天使の)輪っかなんて着けてほしくねぇんだよ」
という言葉。
危ないことをすれば厳っしく叱り、うまく走れれば「山本くーん、今日の山本君はすごくいいいね」と、我がことのように喜びながら、しり上がりのいわき弁でほめてくれるのでした。
S氏はとにかく志がある人にはそれに対する応援を惜しまない人で、専門的な整備の知識なども全てこの方から学んだものです。
厳しいまなざしのS師匠(写真左)に指導を受ける当時の私。 FISCOにて
また、必要なものがあると言えば「おー、そんならコレお前が使え」と気前よく譲ってくれたりもして、
実は今回N君の作業に使うKTCのミラーツールのセットも、かつてS氏がたったの5千円でが譲ってくれたものだったりします。
時は流れて、気が付けば私は当時のS氏の歳を超えていて、目の前にはバイクの愉しみを極めたいという若いN君がいるわけですね。
さて、今度は私の番かな?
今回彼が依頼してきたのは、彼の愛車であるKTM DUKE690の前後サスを同車種用のホワイトパワー製のスペシャルサスへ換装する作業。
※写真は換装後のものです。
傷も多くて若干くたびれた感もある外観のDUKEですが、これは彼のバイクに対する直向きな情熱の証でしょう。
サーキットに通う彼にとって、傷だらけのDUKEは技のための練習機で、このほかの一張羅としてDUCATI PANIGALE900を所有しているといいますから恐れ入谷の鬼子母神です。
※写真は展示車のPanigale1299ですが、彼はちゃんと900を持っています。
小さなスペースになかなか収まってくれない副室式のリアサスに四苦八苦しながらも、なんとか前後サス交換完了。
作業が終わった時、いみじくもNくんは、
「いやぁ僕って人に恵まれてます。
この他にもいろいろ走りを教えてくれる年配の方にもいつもお世話になっていますし、
整備のことは、こうやって山本さんから教われる。
僕は本当にラッキーです」
と言ってにこりとほほ笑んでくれました。
ただただ私は先輩S氏のモノマネをしたにすぎませんが、そういってくれたのは率直にうれしい限り。
加えて私のほかにも、若いライダーを応援している方がいらっしゃるんですね。これもまたうれしいことです
今後N君を慕う後輩ライダーが現れたとき、N君も惜しみなく彼の夢を応援してほしいと願った51歳の夏でありました。
バイクってタイムマシンだと思うんです
今でこそ、URLにその名を残すのみとなりましたが、当サイトは2017年の2月、「timewarpriders(タイムワープライダーズ)という名でオープンしました。
この名は「高(光)速移動物体の乗員は歳を取らない」というアインシュタイン博士の相対性理論の一説になぞらえ、
バイクを一種のタイムマシンとしてとらえながら、バイク文化が未来永劫続いていってほしいという願いからつけたもの。
サイトのタグラインを「バイクは少年を大人の王国に迎え入れ、大人を少年の国へ還す」としていたわけですが、
バイクに乗ることで大人に仲間入りをしたいと考えていた少年期の私は、いつの間にかバイクに乗ることであの頃を取り戻したいと思う歳になっていたりして…。
時の流れは速くて恐ろしいものですね。(笑)
前稿では、大学生ライダーの板倉君の記事をご紹介しました。
こんな風に若いライダーのバイクに対する純粋な気持ちは、バイクに対する思いを今一度想起させ、時に見る人をひきつける力を持つのですね。
この後の世代の人たちが末永く安全にバイクを愉しんでもらえるよう、私はこれからも若い彼らを応援していこうと思います。
編集後記
お気づきのようにこの記事には、肝心なサス交換中の作業中の写真がありません。
実は作業に夢中になっていたのと、そもそもこの話を記事化するつもりがなかったので、写真を撮っていないんです。
ただ、作業後にN君がしみじみと語った「僕は人に恵まれています」という言葉から自分のバイク遍歴のいろいろな場面が怒涛のように思い出され、
バイク文化の継承の一例としてこの想いを私のような経年ライダーの方々と共有したいと考えて、N君本人にも協力を得ながら思い切って記事にしてみた次第です。
経年ライダーに皆様、今時はあんまり上から目線で物を言うと嫌われますが、若い人から教わる気持ちでいろいろ交流してみるといろいろ発見もあり、刺激になってなかなか楽しいものです。
私たちが楽しんでいる、いえもっと言えば私たちを育ててくれたバイクへのお因返しとして、若いライダーがバイクにもっと親しめるように陰になり日向になり手伝っていきましょうね。