クリスマスになると、様々な場所に現れるサンタの格好をしたライダー達.
今ではいろいろな場所で見聞きするようになりましたね。
あるところでそれはコスプレランだったりもします。
2017年12月23日、筆者は千葉県内で行われた「Santaraiders 2017 9th 今年も行くよあの丘へ」に参加してサンタになってきました。
こちらは施設の子どもたちが楽しみに待っている奉仕活動として毎年行われているもので、実にちゃんとした「Toy Run(トイラン)※」なのです。
今回は児童養護施設で勤務した経歴を持つ筆者の目線で、サンタライダーズの素晴らしさをお伝えしていきます。
※トイランとはおもちゃなどをもって児童施設や病院に長期入院中の病児を慰問するボランティアツーリングのこと。
アメリカなどで盛んに行われています。
目次
RUN for KIDS!
今回のSantaraiders 2017 は「カフェクラブBig one風の村」のスタッフや常連のお客さん、それに彼らを中心としたネットコミュニティーが中心となって運営されている活動です。
今年で9年目を迎える活動で、千葉県内の児童養護施設に毎年おもちゃやお菓子を届ける活動をしています。
11月の児童虐待防止月間にも当TIMEWARP RIDERS CLUBではオレンジライダーズの話題をお届けしました。これも彼らによる活動。
運営スタッフは多方からおもちゃの寄付を募って仕分けをし、さらに手作りのお菓子をつくるなどしてこの日のための準備をしてきました。
参加台数は約70台長い長い車列になりましたが、綿密に打ち合わせを重ねたスタッフさんたちにより、しっかり誘導されています。
おかげで事故や目立った交通障害を起こすこともなく、7時間強に及ぶ長丁場のトイランを完遂できたのは流石だと思いました。
準備から実施まで、毎回緊張感をもってしっかりと運営されている姿に頭が下がります。
↑走行前のミーティングで説明をする運営スタッフさん。緊張感が伝わってきます。
出発直前、参加者は思いを一つにし、安全に目的を遂行させるため、一同が集まって「Run for Kids !!」と皆でこぶしを突き上げ、声を上げました。
安全に最大限注意を払いつつ朝8:30に集合場所を出発。
道中はパレードも兼ねているので、高速以外では沿道の方や対向車に手を振って走ります。
普段は対向車の搭乗者の顔まで興味を持って見ることはありませんよね。
でも、手を振ると大概の方が笑顔になって振り返してくれたり、車の中のお子さんが喜んでいる様子がわかるんです。
そんな笑顔に送られながら、こちらもサンタとしての気持がちさらに盛り上がっていきます。
施設の子たちが欲しいもの
施設の子どもたちが欲しいものは、一緒に遊んでくれる人や時間です。
筆者の現役時代にも、子どもたちは寄付でいろいろなものをいただきました。
でもその中でその子が退所するまで、あるいは退所後まで大事に持っているものというのはそう多くありません。
しかし、多くの子が一つだけそれこそ退所後も大切に持っていくものがあります。
何だと思いますか?
それはアルバムです。
そこには楽しい施設行事等でとったスナップや担当された職員の方に自分が大切にされた「よい思い出」がぎっちり詰まっています。
保育士さんや指導員の方もそれをわかっていて、写真を撮っては「このときこんなことがあった」と簡単なメモを入れながら、きれいにアルバムをを作ってあげていたものです。
もちろん永く大切にされるおもちゃもあります。
恐らくそれは、いただいた方と遊んで楽しかったとか、そういう「よい思い出」が刻まれたもの。
なので、安心して寄り添える人が、一時でもいいから定期的に必ず来てくれることは大切なことなんです。
Santa raidersはみんなの「よい思い出」
いよいよ施設に到着。
施設の入り口では、既に子どもたちが「来た来たー!」とニコニコしながら待ち構えています。
「ホーホーホー、メリークリスマス!」といってバイクを降りると、男の子も女の子も、バイクに寄ってきました。
「これカッコいいね、乗っても(跨っても)いい?」と興味津々。
横でシューズを履いてリフティングをしている高校生がいると、サッカーに心得のあるサンタさんが一緒になって遊んであげています。
普段から子どもと関わるのが上手なトナカイライダーもいて、子どもが凄い勢いで馴染んでいる姿は、経験者から見てさすがだと思いました。
お姉さんサンタもお菓子をあげながら子どもたちのお話をよく聞いてくれていましたね。
短い時間でしたが、子どもたちが私たちに良くなじんでくれていました。
子どもたちの笑顔を見ると我々の来訪が子どもたちにとって「よい思い出」になっているのを感じます。
こうして双方向の関係を定期的に築いてくれている大人たちの来訪は、子どもたちからしてもこれはとてもうれしいことです。
子どもの中に小さな事件を
今回のサンタランダーズにはBIKEJIN誌や「週刊バイクTV」でおなじみの末飛登さん、そしてピンストライプアーティストのビートンさんも参加されました。
↑左からビートンさん・右が末飛登さん
施設の広場の真ん中で、ビートンさんが何やら模造紙に一筆書きで絵を描き始めます。
「おー、モヒカンサンタが何か書き始めたよ、いったい何の絵になるんだろうね?」
末飛登さんが即興MCでその場を強力に盛り上げていきます。
一人、二人と子どもたちが集まって、いつの間にかみんなかぶりついてビートンサンタのペン先を見つめています。
「下書きは一切ないよ、一筆書きの動きが素早い!!」
参照元;千葉テレビニュースより
「おーっとぉ?あれは何だぁ?」
「あっ、サンタだ!」
「トナカイだ」
「いや、バイクだ!!」
素早い動きのペン先から次々に現れる造形。
そのユニークさや鮮やかさに子どもたちもくぎ付けです。
トナカイバイクとサンタを書き終えると、ビートンサンタは子どもたちにリクエストを聞きました。
「よし、今度は何を描いたらいい?」
「雪だるま!」
「クリスマスツリー!」
「さぁ、みんなからリクエスト、ビートンサンタこれをどうする?!」
「さぁ、できたよ!」
「うわぁ、凄い!!」
「あんなことができるんだぁ」
模造紙一面に繰り広げられた魔法のようなペン裁き。
「これはみんなにプレゼント、色はないからみんなで塗り絵にしてください。」
「今日の記念に色を付けた絵を描いてきたのでこちらもプレゼントします。今日は本当にありがとう!」
「ビートンサンタに拍手―!」
この間も末飛登サンタは、周囲の状況をうまく捕まえては楽しいトークにして場を盛り上げ続けました。(この人は天才だなぁっていつも見るたび尊敬してます。)
筆者は大学の児童福祉の授業で、「子どもの心に小さな事件を起こすことが大事だ」と教わってきました。
何もない広場で、二人のサンタのペン一本と話術に引き付けられた子どもたち。
その瞬間、多くの子どもたちの心の中で小さな事件が起きていたことでしょう。
全ての旅程を完遂した閉めの会の中で、ビートンさんはこのときのことを振り返ります。
「僕は絵描きなので、絵を描くことを子どもたちにプレゼントさせてもらいました。
目の前でそれをかじりついて見てくれる、そして喜んでくれる子どもたちの姿に、『絵を描く意味』を改めて見つけさせてもらった気がします。」
そうなんです。
実はビートンさんの心の中にも「小さな事件」は起きていたんですね。
筆者も普段は穴倉のような自室で昼も夜もなく執筆をつづけているわけです。
サンタライダーズに参加して、自分たちの来訪を待っている子どもたちがいること、とびきりの笑顔で喜んでくれること。
そこに何とも言えない感激があり、形のないもの、つまり「豊かな心」をもらったプレクリスマスイブでした。
まとめ
クリスマスになると筆者は、児童指導員時代に里親さんのお宅で冬休みを過ごす小2の男の子を、電車で送り届けた時のことを思い出します。
ワクワクした様子で彼は、
と筆者に訊いてきます。
小2のその子が指さすのは、向かいの席にお母さんと楽し気に座る同じくらいの男の子。
両親を知らないその子には、大人はみんな施設の職員か児童相談所の先生にしか見えないらしいのです。
さらに向かいの男の子の楽しげな顔も、自分が一番楽しみにしている里親さんのお宅への訪問をしているように思えたようです。
児童養護施設には2歳から18歳まで、様々な理由でそこに暮らす子どもたちがいます。
しかし、そんな彼らに私たちが普段できることというのは少ないのかもしれません。
でも多くの人に知ってもらって、彼らの味方になってほしいと思います。
クリスマスの一時、多くの大人がサンタになって寄り添う時間をつくること。
そこに行けば、子どもたちにも大人にも、みんなが豊かな気持ちと共に本当のクリスマスがやってきます。
取材御礼
主宰された皆様
施設の職員の方々・子どもたち
お疲れ様でした。本当にありがとうございます。
ビートンさんのお店「虹色屋」はこちら、ヘルメットや車体などへのピンストライプギャラリーやイベント情報もありますよ。
「カフェクラブBig one風の村」のHPはこちらでFacebookアカウントお持ちの方はこちらでより詳しくお店のこと、サンタライダーズのことなどを知ることができます。