マフラーの規制が強化され、街頭での抜き打ち車両検査なども行われている模様です。
「バッフルさえつければいいんだ」「いや、マフラー交換そのものがヤバい」
色々な噂が飛び交っていますが、真相はどうなっているのでしょうか?
今回はその辺りを公の担当部局の方に電話で直接伺ってみました。
目次
チョー難しい規制値の把握
筆者は昨年もこの規制の内容について別のブログに記事をまとめたことがあります。
その中で気づかされたのは、基準の内容を単純に理解するのは相当に難ということ。
そのときの執筆も難航を極めました。
バイクの騒音の基準に関してネット上の情報をあれこれまとめようとする。
と、そこで出会うのは基準値や適応範囲に関する非常に多岐に及ぶ記事たち。
その中から必要な情報を抜き出して「だからこうなっているんだね」と単純に理解するのは本当に難しいものです。
そこで今回は、マフラー音量の規制について当局を取材させて戴き、このあたりをすっきりさせていこうと思います。
マフラーを換えちゃいけないんですか?
結論から言いますと、マフラー交換そのものが禁止になったわけではありません。
ですが、平成28年4月20日から保安基準が厳しくなり、いろいろと条件が付くようになりました。
大きな変更点は「絶対騒音値」で測定していた騒音を「相対測定値」で測定するようになったことです。
「知ってるよ、ユーロ4でしょ?」
という方もおいでだと思いますが、その辺がそう単純でもありません。
要は「ノーマルであれアフターパーツであれ、公の専門機関で保安基準適合検査を受け、それに適合しているものじゃないとついてちゃダメ」ということです。
とはいっても年式によって計測方法がまちまちなので、凄く解りずらいんですよねぇ。
その辺は後程お話しするとして、
1990年からアフターパーツの環境基準証明のためにJMCA(全国二輪用品連合会)が基準適合認定をするようになりました。
適合の証としてマフラー本体につけられている刻印が「JMCAマーク」です。
筆者のSRXにもついてます。
以前はアフターパーツ団体の自主的な動きでした。
これが今は実質、車検時のにも通用する重要な認証聡明という位置付けになっています。
しかも、平成22年以降政策の新車からはいわゆる「ユーロ規制」の導入で、バイクメーカーも開発時に型式認定検査で同様の審査を受けます。
そして、ノーマルバイクのマフラーにも保安基準に適合認証に適合した証しがついてい来るようになりました。
この「証明があるかないか?」というのが今回一番大切なお話になってきます。
バッフル付けりゃいいんじゃない?
ネット上を徘徊していると、「サイレンサーにとりあえずバッフルをつけておけばいいんだよ」という人が散見されますね。
これは、現状大丈夫なんでしょうか?
その辺りを警視庁交通相談係の方に伺いました。
だそうです。
今回規制が厳しくなったと言われる一つの理由がこの「バッフル等」です。
規制の何がどう強化されたのか?
「バイクの音量規制強化」と一口に言われますよね。
保安基準に不適合なマフラーが摘発された際に、車両の所有者だけでなく取り付けたショップのメカニックやメーカーにも責任が及ぶという話は、確か前からあったようにも思います。
どういうところが今までより強化されているのでしょうか?
こちらは国土交通省自動車局環境政策課に直接伺いました。
お話によると、前章でご紹介したバッフル等の消音機構が容易に取り外せる状態ではNGになったことが一つ。
そしてバイクメーカーやアフターメーカーが規制値の適合が証明されているマフラーであるかどうか。
はい、ココまでは今まで通りですがここから!
それを運行状態で証明できるようになっていないといけなくなった。
これが大きく違うんです。
手っ取り早く言いますと、「車検の時だけ元に戻して、普段は非認証の爆音マフラーつけてます。」
例えばこういうのがアウトになって、「いつ調べても適合状態」じゃないとダメになったというわけです。
街頭車検はどんなもの?
さて、ここが一番皆さんの気になるところですよね。
実際どういう試験が行われるんでしょう?
これも先ほどの国土交通省の方に伺いました。
お話を担当官のお耳もとで復唱させていただきながらまとめたのは次の通り…
- バッフルの有無やその状態のチェックが行われます。
- どの年式のバイクについても近接騒音測定で測定します。
- そこでの基準も小型・軽二は 94db以内 であればOKです。
ということでした。
また平成28年から規則が変わって、経年や改造を想定して、そこから+5dbまではOKになっているそうです。
先ほどの警視庁の方にも、街頭での検査内容を伺いましたが、
実際はノーマルであれば年式・車種に応じたマフラーの刻印の有無、リプレイスマフラーはJMCA認定が確認できれば大丈夫です。
しかし例えそれらの刻印があってもなくても、係員が明らかに「うるさいな」と思ったものについて保安基準内かどうかを審査するために近接音量測定を実施するんですよ。
なので逆に、ワンオフマフラーでもいい場合があるんですね。
メーカーさんが審査機関に審査してもらって、保安基準適合を証明してもらって、それがいつでも解るようになっていたらワンオフでも大丈夫なんです。
(※官庁担当部局の方の保安基準細目に沿ったご見解ですが、実際の現場での運用については現地の警察官の指示に従ってください)
「ワンオフでもOK」はいいことを聞きましたが、審査代込みのワンオフって高そうですね。
騒音測定のあれこれ
既に「近接測定」など、測定方法の名称が出てきていますが、この辺で測定方法の種類と内容についてご説明しておきましょう。
定常走行騒音測定とは
これは暖機した状態で、最高出力の60%の回転数(50km/h まで)速度を上げ、7.5m離れた場所からその音量を測定するものです。
近接騒音とは
音量を測定するマイクをマフラーの後端から45°の角度・高さ50㎝に設置して測定するものです。
エンジンを十分暖気し、ニュートラル状態で停止状態から最大出力発生回転数の7.5%まで回転を上げ5秒間保持。そしてアクセルから手を離したときの音量(原付は5,000回転以上で最高出力に達する車種はその50%で計測します。)
車検でも街頭車検でも、この方法が計測方法ということになります。
こんな商品があるので、気になる方は参考にご自分でもこの方法で計測されてみてはいかがでしょうか?
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加速騒音とは
これは、定常走行騒音の測定条件からフル加速して10m走行した地点で、7.5m離れた場所から測定される音量を図るものです。
下の図のように決められた速度でマイク前を通過したときの音量の上限を超えていないかということが重要になります。
車両区分 | 進入速度 | マイク前速度 | 試験時重量 | 音量測定値 |
原付第一種 | 25km/h | 40km/h | 自重 +75㎏ |
79db |
原付第二種 | 40km/h | |||
計二・小二 | 50km/h | 50km/h | 82db |
保安基準の適応範囲は?
では、車検や街頭車両検査などの時、どういう基準で審査が行われるのか?
これは気になりますよね。
これについては、警視庁交通相談係に伺ってみました。
お話しによると、国土交通省の定める「保安基準細目」というのが検査の基準となっているのだそうです。。
いろいろ複雑な測定方法の詳細については後述しますが、先にどういうお話があったのかお伝えしますね。
お話をそのまま書いてみると、
- 平成13年10月以降に製造されたバイクには近接騒音測定で94dbをクリアしていること。
- 平成26年1月1日以降に制作されたの新型車の場合は違う測り方ですが94dbをクリアしていることが必要です。
- 上記以外それ以前に制作された車両ついては詳しい測り方の記載がないのですが、84dbをクリアしていれば大丈夫ということになっています。
ということでした。
お話をまとめると、やはり近接騒音測定で94db以内だったらOKということだそうです。
84dbのことが気になったので調べるとちょうど、JMCAさんのホームページに恐らくそれを説明しているであろう表がありました。
下記に一部引用させていただきます。
バイクの初年登録によっても適応される値が違うのですが、この表でわかりますね。
平成10年 |
平成10年 |
平成13年 |
平成22規制 |
||
原付 |
一種 50㏄ |
近接95db |
近接84db |
近接84db |
近接騒音※;84dB 加速騒音※;79dB 対象は 継続販売される車種 |
二種 51~125㏄ |
近接95db | 近接95db | 近接90db | 近接騒音; 90dB
加速騒音; 79dB 対象は H22.4.1以降の新車の輸入車 |
|
二輪自動車 | 軽二輪
125~250㏄ |
近接99db |
近接94db |
近接94db |
近接騒音 94dB 加速騒音 82dB 対象は H22.4.1以降の新車の輸入車 |
自動二輪 ~250㏄ |
近接99db | 近接99db | 近接94db | 近接騒音 94dB
加速騒音 82dB 対象は H22.4.1以降の新車の輸入車 |
この表で見ると84dbというのは原付のことですね。
出典元;音量規制値について(一般社団法人 全国二輪車用品連合会)
JMCAさんの表も恐らく、その細目に準じた表記だと思います。
平成10年以前はさすがにちょっと緩くしてあるんですね。
ところでユーロ4って何?
いろいろ難しいのですが簡単に言うと…。
ユーロ規制はこれまでのように、排気量別に絶対値で決めてい音量上限を、バイクごとの相対値にする点が特長です。
ユーロというからにはヨーロッパのEU加盟国の基準ですが、日本では「基準の国際化」ということで採用されるようになりました。
既に4度の規制強化が行われ、今はユーロ5に移行する前のユーロ4の規制に準しています。
日本でのユーロ4の適応範囲は平成26年1月1日以降制作されたの新車からで、この日以前から継続販売される車種は平成27年1月1日から、輸入車は胚性28年1月1日から適用です。
更に、騒音審査方法も変わり、それまで採用していた定常騒音と近接騒音の審査が対象から除外されました。
おおむねヨーロッパ仕様に基準を合わせて加速音だけを型式登録時に登録すればいいことになったので、国内仕様にコストをかけたくないメーカーには救いになったようです。
相対値の決め方
相対値の決め方はちょっと難しいんですが、バイクの最大出力と重さを基準に計算される数値、PMR(パワートゥマスレシオの略)という数値によりクラス分けされます。
※PMR=最大出力(kW)/(車両重量<kg>+75kg)×1000
これによると、各音量は加速音のみで計測され、
PMRクラス | バイクの大きさ | 加速音上限 |
クラス1 | 50㏄相当 | 74db |
クラス2 | 125㏄相当 | 74db |
クラス3 | 126以上 | 77db |
に相当すると言われています。
検査方法は緩和されたもの、JMCAさんの表から見ると、ちょっと厳しくなってるようにも見えますね、
こうして基準が色々になってしまっていることが、一般的にマフラー規制の把握を難しくしている原因なのではないかと思います。
ユーロ適応車の車検や街頭検査はどうするの?
警視庁も国交省も言っていましたが、結局のところ、加速騒音を測定するはずのユーロ4車でも、車検や街頭検査では近接騒音測定だけで計測されるのだそうです。
「加速音量でデーターが出ているのですから、移動式のシャーシダイナモなどで走行を模した形で計測するのではないですか?」
とも伺ったのですが、どちらの方も「そんな話は聞いたことがない」というでした。
ちなみに、この近接騒音測定上限値も、やっぱり小二・軽二で94dbだそうです。
原付等はお答えありませんでしたがこの数値がJMCAの表と符合しているので、参考にすると、
原付一種84db・二種90db になりますね。
まとめ
日本ではセミが鳴けば「蝉しぐれ」として鑑賞したりもしますよね。
しかしアメリカではうるさい害虫として駆除される対象なのをご存知でしょうか?
同じように、バイクに乗る我々には「いい音」と感じるエキゾースト音というのはいろいろあります。
しかしバイクに乗らない側からすれば、どの音も単に「騒音」でしかないということになります。
例えば家族で行った風光明媚で厳かな神社、そこに全く似つかわしくない音を立てるバイクが…。
あくまで一例ですが、そんな風にバイクに乗らない人の反感を買う状況をあえてつくらないことは重要です。
しかし、マフラーの音質を愉しんだり、スタイリングの変化を愉しんだり。
或いは車重を軽くして、馬力を上げて操作性をUPさせる。
マフラー交換は言わずもがな、バイクの楽しみとしては大きな部分を占めるもので、多くのライダーにとっては失われたくない楽しみですよね。
厳しい規制はあれどアフターメーカーは、個性豊かなマフラーでバイクの愉しみの幅広さを守る努力を重ねておられます。
「音マナーで大人なライダーを目指すこと」
事故を起こさないことに並んで、これがバイク環境全体をより豊かにする最も重要なことだと思いました。