ヨーロッパでは大型車のカテゴリーとして定着している「アドベンチャー」。
アジアでは小排気量アドベンチャーが次々にリリースされています。
「KawasakiのヴェルシスX250」、そして「HondaのCRF250ラリー」の2台が相次いで新発売。
さらに「SUZUKIのVストローム250」も発売され、さらにはBMWなど外国勢もこの小排気量アドベンチャー市場に名乗りを上げましたね。
というわけで今回は、「アドベンチャー」に行きついたこのカテゴリーの変遷と、まだ見ぬ明日のアドベンチャー大胆予測もします!
何をいまさらアドベンチャー?
この「アドベンチャー」という言葉の響き。いかにもなんか夢心地な感じに誘ってくれそうな良い響きです。
そういえば菊池桃子もアルバムで歌ってたっけ、と言ったら歳がバレますか?(笑)かわいかったなぁ…。
それはさておき、アドベンチャーバイクってどういうバイクでしょう?
これまでも走破性の高いツーリングニーズに応えて「デュアルパーパス車」という形でいくつかの車種が売られたことがありました。
バイク歴30年の筆者にとっては何となくいまさら的に聞こえるこの「アドベンチャー元年」というフレーズ。
かつて出ていたバイクたちとはどこを仕切り「元年」というのでしょう?
目次
いつの間にアドベンチャー?
「アドベンチャーバイク」をウェキペディアで調べてみると、その内容については『「デュアルパーパス」を参照』と書いてあります。
「デュアルパーパス」が「アドベンチャー」の同義語として書かれているのですが、果たしてどうなんでしょうか?
スピードへの憧れともう一つの冒険
空前絶後のバイクブームと言われるのが1980年代の中盤から1990年はじめ。
この頃、多くの人々がゴールデンタイムに放映されるレース番組に熱中していて、サーキットにも今とはけた違いの観客動員がありました。
どこへ行ってもレプリカバイクだらけだったわけですが、実はいわゆるデュアルパーパス的なバイクの新ジャンルとして登場したのはこのころなんです。
モータースポーツの神髄は、苦難に挑んで乗り越える人と断念する人のコントラストが織りなす人間模様。
繰り広げられるドラマティックな冒険の数々と、つられて感情移入してをいく人々。
単にスピードを求めることだけがモータスポーツではないわけで…。
砂漠の「冒険」にその起源をみる
ロードレース以上に冒険ドラマの要素が色濃いレースが、その過酷さで知られる「パリ・ダカールラリー」。
スピードレースよりもこの壮大さに魅了された人も少なくはありません。
参戦するヨーロッパのメーカー各社が列強としてしのぎを削る中、HondaXRV750アフリカツインやYamahaのXTZ750テネレといった日本の大型ワークスマシンたちが大挙出場。
HondaNXR750 (アフリカツイン)
参考元;http://www.bbb-bike.com/history/data27_1.html
今日の「アドベンチャーバイク」のルーツは、砂漠に語り継がれるデザートレ―サーのドラマの中にあるのです。
日本でのガラパゴス的発展
数日間にわたり砂漠を征くパリダカモトクラスの勇猛果敢な姿は世界中でテレビ中継され、デザートレ―サーバイクに憧れる人は多かったものの、日本人がそうやすやすと乗れないいくつかのハードルがありました。
一つはわが国の免許制度。
1997年までは現在のように大型二輪免許が教習で気軽にとれなかったことは多くの人がご存知だと思います。
それに加えて、デザートレ―サー「巨体」が日本人の平均的体格よりも大きかったため、免許以前の問題として乗りこなすには身長、特に足の長さが必要でした。
つまりこのカテゴリーのバイクは日本人にはかなりハードルの高い乗り物だったので、そのままでは人々に受け入れられない事情があったわけです。
日本でこのカテゴリーのパイオニアは?
デザートレ―サーを日本に導入するには400㏄以下のコンパクトなクラスに設定する必要がりました。
そこでHondaはしっとりとした走りで定評のあったオンロードバイク、ブロス・プロダクトⅡの400㏄V型2気筒エンジンを、欧州の600㏄デザートレ―サー由来のタフな車体に搭載して「トランザルプ400V」を1987年に発売しました。
ご覧のようにデザートレ―サーの逞しい風貌が与えられ、渋めのカラーデザインは大人のツーリングライダーを魅了しました。
カジュアルバイクへの方向性も模索?
また同じ年、Hondaは「AX-1」という250㏄のバイクを登場させています。
当時の広告のキャッチコピーは「生活コンポAX-1」。
そのコピー通りカジュアルでフレンドリーなバイクとの付き合い方を提案した意欲作でした。
トランザルプ400の重厚なイメージとは違って、オフロードバイクの軽さと機敏さを街乗りバイクとしての気軽に活かしてもらおうというコンセプトだったのだと思います。
このコンセプトがす彼らのストライクゾ―ンだったのか、バイク便のお兄さんたちによく愛された車種でしたね。
こんなふうに、街乗りを重視するコンセプトは今の250アドベンチャーバイクに活かされています。
当時「デュアルパーパス」という言葉こそ浸透していませんでしたし、多少方向性に違いはありますが、日本においてはこのトランザルプ400ⅤとAX-1の2台がその後の「デュアルパーパス車」の先駆けとなりました。
その後もヤマハが2ストの爆発的なパワーでTDR250 というじゃじゃ馬を造り 、KawasakiはKLE400・250シリーズで一層カジュアル感を演出した異才のツアラーをリリースして人気を得ていました。
↑ Yamaha TDR250
参考元;http://www.bbb-bike.com/history/data300_2.html
これらは欧州車の砂漠イメージから少々離れた形となりましたが、それぞれのメーカーの個性が良く出て面白いものでした。
250㏄に求められた「冒険」
メーカーが250㏄クラスにこうした街乗り+ロングツアラーとしてデュアルパーパス車を次々に提案していった90年代初頭。
このころはメディアで紹介されていたBAJAカルフォルニアラリーレイド大会に注目が集まっていました。
これは1,603キロものコースを夜通し走る過酷なレースで、そのマラソン的な過酷さに共鳴する人も少なからずだったのです。
そしてメーカーもHondaXLR250 BAJAやYamahaのTT-R250 Raid、そしてSuzukiのJEBELなどのいわゆる「レイド系」のバイクをリリースしました。
これらのバイクはBALA参戦の為に既存のバイクのタンク容量を増大させたり、水やオイルなどの予備装備を装着するために車格を少し大き目にとったモデュファイスタイルを市販車に盛り込んだものです。
この巡航距離の増大と積載能力のアップが、ツーリングライダーのニーズに合致して人気を得ました。
オフ車の強化モデルという位置づけなのでオン・オフ両用をうたう「デュアルパーパス」には数えらるものではありません。
しかしオフ車ベースの250㏄で道を選ばずに長距離走行したいというニーズをふんだんに掘り起こしてくれたバイクたちでした。
欧州のデュアルパーパスのさらなる進化
デザートレ―サーを生んだヨーロッパ諸国では、もともと国をまたいでの長距離ツーリングが盛んです。
フリーウェイで訪れる街々には古い石畳から砂利の道もあり、タフで大柄なデザートレ―サーが彼らのニーズにフィットするのは必然。
さらに、平均身長が190㎝以上の欧州人には日本のように身長マターや免許制度的なプロべリムはナッシング。
そんな環境で、それらは大型デュアルパーパス車としてより洗練されていくのでした。
「アドベンチャー」を定義づける王者の登場
砂漠の勇者から派生した「デュアルパーパス」そして「アドベンチャー」へとして進化を遂げる中で最も注目すべきは車両。
それが2014年に登場した「BMW1200GS アドベンチャー」です。
このバイクの元となったのは「R80GS Paris Dakar」という1984年に発売されたバイク。「Paris Dakar→アドベンチャー」というのは実に解り易い系譜ですよね。
33リットルもの容量を持つ燃料タンクやバンパーなどの装備がいかにも頑丈そうで、見る人の冒険心を掻き立ててくれます。
見かけにたがわず、実力も相当のもの。500㎞・600㎞といった連続高速巡航が可能で、270㎏以上の装備重量を持つ巨漢でありながら、ライダーはほとんどストレスを感じることなくスムースで快適な走りを実現します。
オフロードにあってもしっかりしたフレームワークが安定性を引き立たせ、滑らかなサスペンションがしっかりと追従するためライダーに不安を与えないと言います。
単に「オンロードとオフロードをある程度走れます」ということではなくて、どんな路面状況においても上質な走りで常にライダーを平常心に保ちながらサポートする実力を持っていること。
それをこれまでの「デュアルパーパス」と一線を画いて「アドベンチャー」と呼ぶのだというなら、このBMW1200GS アドベンチャーは間違いなくその定義づけをなすベンチマーク的な存在です。
小排気アドベンチャーのジャパニーズドリーム
ヨーロッパではアドベンチャーがぬくぬくと発達していく一方、日本の市場には逆風が吹き荒れバイク需要そのものが極端に縮小してしまいました。
様々な要因が大型バイクを中心とした市場を形成し、エントリーモデルとなるべき小排気量のラインアップを衰退させてしまいます。
気つけばバイクは相当な贅沢品として、多くの人には手の届きにくいものになっていました。
’80年代のブームから一割に落ちたといわれるバイク人口の脆弱化、そこに課されるえげつないほどの環境規制が襲い掛かります。
この規制がさらに強化される2008年はバイク市場にとってかなりの正念場となり、相当数の車種(特に中型車)が粛清され、それがまたビギナーを減らすという悪循環に…。
この負のスパイラルを脱出するために急務とされたのは、若年層や女性にも扱いやすく、手に入れやすい車種を育てることでした。
それだけに、ヨーロッパのアドベンチャーバイクがいくら素晴らしくても、贅沢な大型車のままでは受け入れられないやるせなさがありました。
そこで大型クラスでしか味わえないテイストを、400・250のクラスでビギナーでも味わえるようなバイクが必要になったわけです。
80年代のバイクブームでは、スピードニーズに偏っていた250㏄クラスでしたが、その反省もあるのでしょう。
近年発表される250㏄ロードスポーツは大型スーパースポーツの名を冠しつつも生活の中にも親しみやすいモデルとなりました。
幅広いニーズに対応できたことでバイク環境の縮小化にようやくブレーキが利いてきたところでしょう。
2015年にヤマハ発動機が20~30代の女性600人を対象に行った調査では、免許を持っていない若い女性の多くが女性ライダーに憧れを持っているると回答し、あるいは海山へ異性とタンデムしてみたいと多くの方が答えていました。
こんなニーズには、タンデムが得意なアドベンチャーバイクが適任ですよね。
アドベンチャーを小排気量車シリーズに加えるというのは妙案だと言えます。
700㏄の人気車種 ↑ が ↓ 400㏄クラスにも新登場!
バイクの敷居を下げてビギナーを迎えにいった?
各メーカーともにこうした動きが加速し、マーケティングの結果にコミットしていきました。
そうした中、既存のセローに「アドベンチャーキャリア」等を標準装備にしたヤマハの場合を含めれば、国内各社が「アドベンチャー」をそろえたことになるわけです。
巷ではそれを「元年」と呼んでいるようですが、もっと深読みすればバイクの新たな楽しみ方をビギナーに提案していく準備が整った「元年」なのかもしれませんね。
明日のアドベンチャー大予想
KawasakiのヴェルシスX250とSUZUKIのVストローム250はこれまでの「デュアルパーパス」と同じく既存オンロードバイクとエンジンを共有する流れの中にあります。
↑ KawasakiのヴェルシスX250
↓ SUZUKIのVストローム250
ホンダのCRF250ラリーはかつてのレイド系のようにオフ車を増強するような形になっていますよね。
↑ Honda CRF250ラリー
確か「デュアルパーパス」=「アドベンチャー」なんじゃないの?というツッコミも聞こえてきそうですね。
確かに「デュアルパーパス車」は旧トランザルプのように、もとになるオンロード車があって、それにオフ車っぽく生まれ変わった形になることが多いものです。
Kawasaki・Suzukiは今回その方法を踏襲したわけです。
Hondaは今回CRF250ラリーをアドベンチャーのメインに立てていますが、すでにHondaはインドの Auto Expo 2016において CX-02コンセプトを「新しいアドベンチャーバイク」として発表しています。
エンジンは近日発売されるCBR250RRのパラレルツインを搭載するということですが、すでに2chでは「CBR250RR欲しい奴ちょっと待て、こっちの方が面白そうだ」という噂がチラホラ…。
まだ詳しい販売スケジュールはわかっていませんが、CBR250RRの国内仕様正式導入のタイミングでその後半年以内にアジア向けに発売といったところでしょうか?
やはりこの方法で各社揃うのであれば、気になるのはヤマハです。
既存車であるセローをアドベンジャーとして涼しい顔をしているYamahaさん。
既にYamahaはMT-09には主要パーツをほぼ共有するアドベンチャーモデルとして「トレイサー」のラインナップがあり、同様にMT-07 にもすでに同じコンセプトのバイクが設定されています。
筆者は十中八九ここに、MT-25/3をアドベンチャー化した小型のトレーサーが来るはずだとに睨んでいます。
恐らく秋のモーターショーまでには何らかの動きがあるのではないかと思います。
今後のアドベンチャーの展開としてはそれが一番自然で楽しみな展開でなないでしょうか?
今後何か情報が入り次第お伝えしようと思います!
まとめ
日本でもタレントとして活躍しているマーティー・フリードマンというギタリストをご存知でしょうか?
元メタリカのスーパーギタリストで、彼のギターは「マーティー・フリードマンモデル」として市販されています。
普通、外国人ギタリストモデルのギターというのは数十万円になるものですが、「マーティー・フリードマンモデル」の値段はわずか6.5万円に設定されています。
参考元;http://www.ikebe-gakki-pb.com/new_product/?p=1789
これはマーティーの考えによるもので、
- 「高いギターが必ずしもいい音とは限らないジャン」
- 「安いギターでも弾きまくってうまくなってもらった方がいいジャン」
と彼は言うんです。
バイクの傾向もようやくそこに行きついたということだと思います。
- 高いバイク、大きなバイクだけが楽しいわけじゃない。
- 小さくて安いバイクでもどんどん付き合っていけば相当に楽しめる。
「そもそもバイクは、もっともっと多くのビギナーにかわいがってもらえるようなものじゃなきゃダメじゃん?」
きっとマーティーがライダーだったらそんな風に言うと思います。
「アドベンチャー元年」、その2年3年とこれからが楽しみです。
期待しましょう!
「そもそもバイクは、もっともっと多くのビギナーにかわいがってもらえるようなものじゃなきゃダメじゃん?」
ほんとにそう思います!
最近は今は昔と違ってバイクが売れないから高くても仕方ない、という言い訳のもとで、また高性能化、高価格化に向かってる気がしています。
250ニンジャがCBR250RRと同じ価格だったら250の人気が今のように盛り上がることはなかったと思います。
無理かもしれませんが、ぜひ、若者が欲しがるデザインで、なおかつ、年寄りがうんちく垂れても耐えられる程度の性能の安いバイクをたくさん作ってほしいです。
たかパパさん
コメントありがとうございます。
当サイト初めてのコメント。とてもうれしいです。
CBRが高い一方で、CRF250は安かったり…。
でも、オートバイ誌によるとこのCBR250RR、20~30代の若い人に売れているんだそうです。
私の身近にも大学生ライダーがたくさんいるんですが、この子たちはバイクブーム直撃世代のご子息。
親が「これに乗れ」って買ってきて親子で楽しんだり、そんな子たちも割といるんですよ。
そこまでホンダがマーケティングリサーチしたというなら、それもまたすごいなぁと驚いています。
いずれにしても、ちっちゃなバイクブームが一山来そうな予感がします。
これからも書いてバイクシーンを盛り上げていきますので、TIME WARP RIDERS CLUBをよろしくお願いいたします。