バイクで拓く未来がある!ホンダと大学生の産学連携イベントを密着取材

バイクを建設的に考える姿勢は、若者たちに安全はもちろん、明るい未来への「夢」をもたらします。

そして「夢」は多くの賛同者を集め大きな「力」になる。

そのことを大学生たちが体現してくれました。

今回はメーカーと大学生が協働して開催した、モーターサイクルイベントをレポートします。
よくある警察や教習所イベントとは違った「学生たちのThe Power of dreams」、とくとご覧あれ!




目次

バイク業界大注目「大学生とメーカーのコラボイベント」

2017年5月13日、東京八王子市の中央大学多摩キャンパスで、ホンダと中央大学二輪愛好会(CMC)による「モーターサイクルフェスティバルby  中央大学二輪愛好会&HONDA」が開催されました。

前日までは快晴で、誰もが五月晴れを期待していましたが、当日はあいにく狙いすましたような雨模様。

 収まる様子もない雨にもかかわらず、中央大学には学内だけでなく帝京大学や東京情報大学、遠くは神奈川大学も参加して、総勢33名の学生さんが参加。

今回のイベントには名だたるバイク専門誌各社がもれなく取材に訪れ、注目度の高さに驚かされました。


↑ なんとあの有名なモーターサイクルジャーナリストの柏 秀樹先生も取材にお見えでした。柏先生と筆者、柏先生ありがとうございました。

主要メディアがこぞって注目しているのは、「若者のバイク離れ」の終焉と、新たなバイクブームがブレイクに向かう着実な足音。

特に今回は、大学生ユーザ団体である中央大学二輪愛好会が主催し、メーカーがハード・ソフト両面のコンテンツでサポートする協働開催です。

ようやくローソクの灯がたいまつになった状態ともいえる近年の若年新規顧客の増加。

学生からの働きかけで開催される今回のバイクイベントは、今後のさらなる起爆剤ともなるということで、メディアも盛り上がっているわけです。

応えるホンダも系列各社を動員して、力の入れようは半端ではありません。

バイクで将来を見渡す大学生

午前9:30から昼休憩を入れて17:00までの約8時間半に及ぶ長丁場で、午前は座学・午後は実技講習、最後がHondaの新車試乗会という3つの構成です。

午前の講習では本田技術研究所 二輪R&Dセンター上席研究員の林 徹(あきら)さんによる講義が行われました。


↑ この方が林 徹さん
心に熱いものを秘めた、しかし気さくで大変お優しい方。
これから技術畑を歩もうとする学生さんには「神」です。

林 徹さんは、初代Dio(AF-18)や2ストロークモデル、最近では本田のお家芸になりつつあるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)の開発に携わってこられ、ホンダの二輪開発の要として長年大きな活躍をされてこられた方です。

また、技術面だけでなく世界のバイク環境についてのマーケティングにも明るい方で、これからのバイク環境や技術の展望について非常に幅広い貴重なお話しを伺うことができました。

※(目からウロコのお話しがたくさんあり、これだけの紹介ではモッタイナサ過ぎるので、お話の各論的内容は近々別の記事としてお伝えします。関連記事はこちら!)

  • 「バイクを視点として、マーケティングで世界と未来を見つめ、そこで必要とされる「ありたき姿」を夢見ることが大事」
  • 「それを具現化していく中で起こる苦難に技術で立ち向かい、安全で豊かな世界をつくりあげていく。」
  • 「そこに「The Power of dreams」(夢こそが全ての源)というホンダの理念がある」

非常に大きななお話しに、受講した学生さんたちは皆、多感な心を打ち震わせていました。

とにかく講義を受ける学生のまなざしは真剣そのもの。

最後の質疑応答では、「アジアの戦略的マーケティングの有り方について」や「ほぼ全廃状態にある2ストローク復活のための環境適応技術はあり得るか?」といった、幅広く鋭い質問が飛び、講義終了後には、林さんのもとにはホンダ技術研究所へのインターン関係諸々の質問をする学生さんの姿もありました。

この講義全体の様子から特筆したいのは二つあります。

一つはこうしてバイクを出発点にグローバルに将来を変えていくことを夢見る学生さん達が数多くいるという現状。

もう一つは、商売以上に温かい気持ちを持って彼らと接するメーカーさんの心意気。

林さんが学生さんの質問に一つ一つを大変親切にお答えになる姿にも、バイクの将来を豊かにするために惜しみないメーカーの姿勢を感じ敬服しました。

危険と向き合う方法を学ぶ

午後は13:00より、中央大学第3駐車場につくられた特設コースを使っての安全実技講習となりました。

昼食を終えていざ実技というときに雨脚も強くなって心配されましたが、そこはチャンスととらえて全員レインウエアを着こんで実技に臨みます。


↑ 雨ニモ負ケズ…

実技講習を担当していただいたのは。ホンダ・モーターサイクリストスクールの方々。

バイクの動きは「曲がる・止まる・走る」の3つだけ。

しかし、このどれもがバイクを不安に導く危険要素をはらんでいて、逃れようもないもの。

そこで、リスクとのうまい付き合い方を学び、技術として体得するのがこの実技講習の趣旨です。

  • 「くるぶしからのニーグリップ」
  • 「引手より押し手のレバー操作」
  • 「後→前の順で瞬時にブレーキング」
  • 「セルフステアを殺さない視線と体の使い方」
  • 「ギクシャクさせないクラッチ・後ブレーキ」

などなど、講師をされた林さんの軽妙なトークと共に、普段から癖をつけるべきポイントについて改めて講義がありました。

話を聴いてそれを理解し、どれだけ実践できるかという力も求められます。

なので、実技講習というよりもう一歩進んで「実習」でしたね。

特設コースの内容は、あえてバイクが不安定になりやすい低速時の旋回や、ストップ&ゴー直後の旋回など、基礎的でいながら実は多くの人があいまいにしている部分を煎じ詰めたようなもの。

特に鉄製のグレージング(排水溝)約30m上を一本橋として通過するセクションは雨で余計に滑りやすくなっており、見た目にも怖かったですね。

しかし講義内容を忠実に再現できれば何とかクリアできるハズ…。

でもこれがなかなか難しい。

実技は受講する33名の学生さんたちを2グループに分けて、後半のグループが前半のグループの動きを、前半のグループは後半のグループの動きをそれそれ観察するという具合で行われました。


↑ スピードは幼児が歩く程度、連続する鋭角コーナーしかも雨、自ずと募る恐怖心

実は筆者も後半グループに混ぜてもらい、前半の人たちの動きをみながら「これなら自分にもできるかも」と鷹をくくっていました。

しかしいざ自分の番になると、きれいにまとめるのは猛烈に難しく、できない自分にまた燃えてみたり…。

実はこうして「人の走りを見て学ぶ」というのも講習の狙いで、

  • 基礎の基礎程難しく地味だが極めて重要。
  • 一目置かれるきれいで安全なライディングは基礎を征することから。

これらを目と体でしっかりと体得できる内容になっていました。

免許歴からしてもまだ数年という学生さん達にとってはややハードな面もある実技講習でしたが、みんな口々に「楽しっかった」を連発していました。

腕を鍛えられてうれしい面もあり、この際雨は味方に付いたと考えていいのかもしれませんね。

筆者も彼らの歳からバイクに乗って30年(←恐ろしい~!)になりますが、己の慣れの怖さを痛感し、認識を新たにする良い機会となりました。


みんなで奏でた「夢の音」は2,600万円+α

雨だからこそ多くを学んだ実技講習に続いて、最後はホンダモーターサイクルジャパン(以下HMJさん)による新車試乗会が行われました。

用意されたのは次のバイクたち。


↑ 旧多摩テック生まれのモンキー、中大は旧多摩テックの隣にあり、ある意味これは50年目の里帰り?


↑ CRF250Lの素直で優しい特性にはWR250Rに乗っていた筆者もびっくり。


↑ REBL250 、カスタムベースとして今年来そうな予感、CB1300は王の風格。


↑ 何もかもが斬新なアドベンチャーバイクX-ADV、ヨーロッパのマーケティングから生まれたフォルムは半端なくカッコいい。
そしてDCTでハードなオフもATで快適なCRF1000L アフリカツイン。

普通の学生向け講習会ならこのラインナップだけでも相当なものですが、何と何と今回は公道を走れるGPマシンRC213Vsまでやってきました!

ご承知の方も多いと思いますがこのRC213Vsは販売価格が2,600万円ともいわれ、滅多やたらとお目にかかれるマシンではありません。


↑ 雨ざらしなんてモッタイナサすぎ!

こんなマシンが学校の駐車場に雨にさらされて置かれているなんてもの凄いことです。

しかもなんと、エンジンをかけて気前よく学生さんたちに次々と跨らせてくれるではありませんか!!


↑ 流石にどんなモーターショーや展示会でもこのマシンに限っては「跨り+エンジンかけOK」なんて聞いたことがありません。
とっかえひっかえ跨ってアクセルを開けていく学生さんに、各メディアの記者さんたちも盛んにシャッターを切ります。
それにしても2,600万円の音色、いい音だったなぁ。

きっと2,600万円もするバイクを買える学生はいないと思います。(いたらちょっとびっくりしますけど…)。

なので、「買ってください」という形でHMJさんもこの会場にRC213Vsを持ち込んでいるのではないと思います。

ホンダモーターサイクルジャパンの粋な計らい以上にこれは、創始者である本田宗一郎氏の「夢」(The Power of dreams )が全社員に徹底されている表れだと思いました。

『若い人たちにまず「夢」をプレゼントする』、HONDAさんカッコ良すぎて泣けてきます。(涙)



小さな愛好会の大きなイベント

今回イベントを主催した中央大学二輪愛好会は他の部よりも小さい「愛好会」。


↑ 中央大学二輪同愛好会の3役の皆さん
左から会長の福島宏昌さん、副会長の大滝博貴さん、副会長兼広報担当の正田啓人さん

彼らはサークルボックスも地下の部屋を他の団体と共同で使うほどの、学内でも小さな団体です。

そんな小さな彼らがどうしてこんなに大きなイベントを成し遂げたのでしょう?

中央大学二輪愛好会CMCのポリシー

4月のはじめ、彼らを尋ねて訪れた中央大学多摩キャンパスには新入生の勧誘のプラカードがひしめいていました。

他のサークルが忙しく1年生を「タダ飯勧誘」で拉致る?中、そこに彼らの姿はおろかポスター一枚張っていません。

「他のサークルに出遅れているのでは?」そう聞く筆者に会長を務める3年生の福島宏昌さんがその理由をこう話してくれました。

『バイクは誰かに乗ってくださいといわれて乗るものではないし、自分にも他人にも責任をもって乗らなくてはいけないものだと思うんです。

なので、最低限そう言う姿勢の人でないと事故も起きやすいですし、後々面倒なことも起きてくるんですよ。』

『むしろバイクを通して何がしたいかがはっきりしている人が自発的にこの地下の部屋まで僕らを探し当ててやってくるようなのがいいですね』。

この正論を聴いて、筆者は頭にトンカチで目から星が出る思いがしました。

確かにバイクという性質上何かあれば愛好会も簡単におとりつぶしにもなりかねないし、ましてや全学生のバイク使用自体を危うくしかねない。

そんな中で大学の看板を背負って走る以上、いい加減で他力本願な人は困るというわけです。

少なくともバイクを持っていれば誰でもいいということではないんですね。

普段から彼らはツーリングや、サーキット・オフロード走行はもちろん、警察署主催の交通安全大会にも積極的に出場しています。

昨年では鈴鹿サーキットで行われた第49回二輪車安全運転全国大会で、なんと団体優勝・個人準優勝に輝く実力を持っているのです。

バイクだけに、楽しさと責任は両輪一体のもの。

責任をあいまいにして、楽しいだけではバランスが保てないことを彼らはよく知っています。

確かに「事故」はバイクのステレオタイプイメージですが、それ以上に彼らはバイクを文化として発信していきたい、「そのためにどうするか」?

そんなスタンスでリスクとに真剣に向き合えるだけの技術磨いている彼らだからこそ、安全に対する認識や技術を自分たちと同じバイクを愛する若い世代に、体得してほしいと考えたのです。

中央大学二輪愛好会の「夢」と「力」

自分たち以外の若い世代にもバイクと共に末永く豊かな人生を歩み続けてほしい、また愛するバイクがさらに発展してほしいというのが彼らのバイクに描く夢。

夢の力で構想から4カ月をかけて、イベントの実現に向けて大学への調整に奔走し、「営業」のごとくOBや法人を駆け巡る日々。、

その甲斐あって、遂にはRedbullのスポンサーまで獲得してホンダとの協働開催にまでこぎつけたのです。

バイクを通じ、夢をかなえようと人の心に訴えることで、多くの人々が賛同し動いてくれる。

今回彼らにとってもそれは確信となり、それは彼らの生涯にわたって自身の背中を押す力となるでしょう。

ココがまさに彼らの「 The Power of dreams」なのです。



まとめ

今回の「モーターサイクルフェスティバル by 中央大学二輪愛好会 & Honda」は、学生たちがバイクを文化として創造していく一つのムーブメントとなり、多くの人々から注目されています。

筆者はそこに、「バイクから世界と未来を拓いていこうとする真剣な若者の姿」を数多く見ることができ、とても幸せな気持ちになりました。

筆者自身も大学時代からバイクを一つのゴーグルとして世の中をみてきた一人なので、バイクという乗り物が実は非常に多くの視点を若者にもたらすということを知っています。

近年、全国的に高校から

バイクに

  • 乗らない
  • 乗せない
  • 免許を取らない

といういわゆる「3ない」が撤廃されました。

「危険と向かい合うために何が必要か、必要な責任を果たすにはどういう考えを持つべきか?」

その主語がバイクでなくても、若いうちからそういった思考傾向を持つことは生活技術を格段に向上させ、困難に打ち勝つ強い力を育みます。

また興味を突き詰める力は世界と未来を切り拓く力になるのです。

かつてはこの「3ない」に+1を付けて「バイクに興味を持たせない」という項目までわざわざ付け加え、それこそがまともであるとしていた県教委もありました。

今回の彼らの真剣な姿をもってあえて言いますが、「それがいったい何の教育だったのでしょう?」

今回のイベントが成功したように、他にもバイクを愛する若者には洗練したポリシーを持ってぜひ後に続いてほしいと思います。

さらには他メーカーや販社の皆さんにもこの動きをサポートして若いハートをぶん回してあげて欲しいと思います。

何より私たちが歩んできた道を彼らの為に、もっとぶっとくしてあげようじゃありませんか。(と、おじさんは思います。)

中央大学二輪愛好会の今後のますます活躍にも期待しましょう!

 

CMC、大学関係者、Honda各社、尊敬するバイク誌、柏先生、Redbullのお姉さま方、みなさま、お疲れ様でございました!!

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