3月24~26日までの3日間、「第44回東京モーターサイクルショー2017」が江東区の東京ビックサイトで開催されました。
今回はショーを取材して見えてきたバイクの未来像について熱く語ってみたいと思います。
目次
大盛況だった2017年モーターサイクルショー
今回から展示エリアが4Fの西3ホールが追加になって広くなった展示スペース。
にもかかわらず開会時間に行ってみるととにかく人人人の壁。
そうして人が渦巻くそのどこかに「バイクがあるらしい」といった状況。
「人を観に来たんだかバイクを見に来たんだかわからない」そんな風に思った人も多かったはず。
筆者も「モーターサイクルショーでこんなに人酔いしたの初めてだな」というのが今回一番の印象です。
それもそのはず、主催者公式発表による今回の入場者数は下記の通り。
今回の日別来場者数内訳
参考元;http://www.motorcycleshow.org/report/report01.shtml
若者のバイク離れ?
5.6年くらい前までだったでしょうか?モーターサイクルショーを毎年見に行くと、毎回だんだん出展も減って会場が小さく来場者もまばらになり、一バイクファンとしても危機感を禁じ得ないような時期もありました。
バイク人口はバイクブーム時の1割がやっとという数にまでに落ち込み、その1割も当時のブームを支えたユーザーがスライドしている状況で「バイク人口の高齢化」が危惧されるといわれています。
その原因として一節には景気の低迷であるとか、ニーズの変容などという声もありました。
確かにそれらも間違いとは言い難い要因です。
ただこの30年バイクの変遷を追い続けている中で、若者の趣向に原因を求めるのはいささか違和感を感じています。
バイクの場合は80年代のバイクブーム直撃世代を核として、彼らのニーズに頼ってメーカーがそれを追いかけるあまり、若年新規需要の開拓が後手に回ったという指摘も各方面で見られます。
俳優の大鶴義丹さんがかつて「バイクは人の成長を助けるツール」と語っていたのですが、かつて多くの少年の手の中にあったバイクは様高額なり、気づけば、バイクは彼らが 若者から離れていったわけです 。
若者に歩み寄った魅力的な車種の登場
ここ数年、各排気量別の二輪の販売実績データーはこれまでの危機的状況にようやく一応のピリオドを打つことができたことを示唆しています。
詳しいデーターは他のWEBに任せることにして大まかに言えば、きっかけは2007年以降のガソリンの高騰を背景に日常の足として車から125ccスクーターにシフトする動きが好調になったことでした。
国内各メーカーとも、ココを足がかりに中型以降の車種に対して新規顧客獲得にしたいと悪戦苦闘していました。
そんな中、登場したのがシンプルな構造でありながら十分なプレジャー感を持つ250㏄スポーツバイク。
アジア新興国に生産の場を移し、これらをお値打ち価格で発売したことが起爆剤となり、ここにきてようやく悲願の若年新規顧客の獲得成功となったわけです。
(250㏄クラスを活況を呼び起こした功労者Kawasaki ninjya250 ↑ )
思い起こせば2014年の東京モーターサイクルショーを見たときから、筆者は展示されるバイクの傾向にある兆候を見ていました。
一番印象に残るのは、当時まだ発売予定車だったホンダのX400に跨ったとき。
展示してあったバイクをVFR800Xだと思って跨ったのですが、それにしては妙に足つき性がいい。
よく見るとエンジンが800㏄のV4ではなくCB400ベースの400㏄のパラレルツイン…。
ようやくそれが発売間近なX400であることを知ったとき「バイクが女性や初心者に歩み寄ってきた」と率直に思いました。
実際2014年の展示車両はGSR250に代表されるように、スピードを強調するよりもシート高に低さや乗りやすさ、親しみやすい価格を強調した車両が多かったように記憶しています。
暗中模索の末各メーカーがたどり着いたのは、次世代へのバイク文化の継承できるシンプルで親しみやすい小中排気量車だったのだなと感心しました。
今回の東京モーターサイクルショー2017では、ツーリングをはじめ生活のいろいろな場面で付き合っていけそうな車種、特に女性や若者をに親しみやすい車種が目白押しだったのが印象深いところです。
車種で言えばKawasakiのNINJYA 250やYAMAHAのYZF-R25に続くGSX250Rの発売。
こうしたバイトで買えるスーパーバイクは引き続き今後の活況をけん引していくと思います。
また、かつてのようにレプリカかネイキットかオフ車という単純な3択ではなく、それぞれの車種がある程度カジュアル使えて生活にフィットするようになっているところも、バイクのすそ野を静かに大きくしている一因でしょう。
CBR250RRの日本仕様の発表もありましたが、80万円近いとされる価格設定は他社3車種のそれからするとやや反則気味な気も…。
今回の展示の中で特筆的なのは各メーカーともに250㏄クラスに小柄なアドベンチャーバイクをデビューさせたことです。
元々は大柄な欧米人向けに大型車が主流で、初心者には難しい存在だったアドベンチャーバイク。
このクラスにおいても初心者や女性ライダーにグッと歩み寄った形となり、写真を撮るのが困難な程多くのファンに囲まれていました。
↑SUZUKI V-strom250 Kawasaki VERSYS-X250↑
Honda CRF250rally ↑ Yamaha セローツーリング ↑
既存のYAMAHAセロー250ツーリングに加え、以前から登場の待たれたHONDAのCRF250rallyや、SUZUKIのV-strom250、KawasakiのVERSYS-X250が登場。
この250㏄アドベンチャー、ついに役者がそろったという状況です。
やはりこうした中小排気クラスがエントリーモデルとして若いお客さんをたくさん獲得し、バイクの楽しさを広げていくことこそが大事ですよね。
バイクは必ずもう一山来る!
こうした努力が功を奏したのでしょう。
2014年から見ても東京モーターサイクルショーの来場者数は確実に増えています。
入場者数大幅アップ!
年間来場者数2014~17年
参考元;http://www.motorcycleshow.org/report/report01.shtml
ご覧のように前年から1万4千人強の増加があり、2014年からは実に約3万3千人もの増加があったわけです。
歩み寄っていったバイクたちの姿は一層具体的な形になってきました。
先述のように「バイク人口の高齢化」ということも近年言われているわけですが、今回2017年の会場で展示以上に印象深かったのは、筆者と同等なおじさんライダーはある程度メインでありつつも、ぱっと見20台から30台の若い層の来場者が例年に増して多かったこと。
なかでも若い女性も大変多かったように感じました。
この辺は詳しい統計や数字はありませんが、どこかに性別年齢のデーターをとった数字があるとしたら確実に変わってきているのではないかと思います。
ともかく今回の東京モーターサイクルショーは本当に若者の多いショーでした。
爆発寸前の若者のバイクニーズ
筆者は1980年代に大学生だったいわゆる「バイクブーム直撃世代」。
今回会場で多く見かけた若い方々について考えると、ちょうど友達のご子息方の年齢に相応な人がほとんど。
つまりここでバイクに食いついている若者たちは言ってみれば「バイクブーム直撃ジュニア」世代です。
物心ついたときからおうちの人がバイクに乗っていて、何らかの形でバイクにかかわった経験を持つ世代。
それだけに何となく自然な形で自分のバイクを持ってみようという人も多くいるようです。
職場のバイトの大学生とつるんで走る機会も多い筆者ですが、やはりその手の話は多く聞かれるようになりました。
Facebookの中でも「娘がバイクの免許を取った。」「息子をそそのかして一緒にツーリングに行く」「モータースポーツファンの父の影響でサーキットデビューします」といった書き込みが毎日のように入ってきます。
妻が大学の教員をしている関係で、若者との接点も多い筆者。
バイクブーム当時のように「石を投げればライダーに当たる」というほどにはまだなっていませんが、各大学のバイクサークルや同好会の動きも活発で、メーカーと共催で学内で大きな試乗会イベントを企画しているところもあります。
(この様子は今後レポートしますね。)
少なくともバイクが大好きで結構乗りこなしている学生さんや新卒の若者が多くなってきているのを肌で感じている今日この頃です。
まとめ
1960年代に世界一のバイク生産国になった日本。
しかしながらバイクは心無い使われ方から社会的に暴走行為がバイクのイメージとして一人歩きするに至りました。
そうして本質とは裏腹に社会的に問題視され、度重なる規制強化を課せられてきたオートバイ。
バイクに対する社会の悪しき認識を是正し、バイクの本質を世に知らしめたいという情熱から、モーターサイクルショーは1971年7月に大久保力(おおくぼりき)という日本のモータースポーツの草分け的な人物が創設したものです。
かつて筆者も直撃を受けた80年代バイクブームでは、スピードやパワーがメインのバイクブームでした。
この中で数多くの死亡事故がおこり、バイクは相当の規制を余儀なくされた経緯があります。
しかし今回記録的な来場者数を迎え、若い来場者を多数獲得した現状には、単に「かつてのブームの焼き直し」という印象はありません。
バラエティーに富んだ親しみやすいバイクが用意され、若者たちの生活の友として迎え入れられ、彼らの可能性を広げていく。
バイクをあらたな潮流にのせることができたモーターサイクルショー2017の役割は大きかったのではないかと思います。
全てのおぜん立てがそろって新たなブームのスタートラインが見えてきた状況。
今後のモーターサイクルショー、ビックサイトでは手狭になるかもしれませんね。