「若者のバイク離れ」につける薬はオジサンの思考停止にも効くらしい

筆者は今年の10月でバイクに乗り出してからちょうど30年になります。

確かに筆者が「若者」だった時の空前絶後のバイクブームから比べれば、今の若者のバイク熱っておとなしいのかも知れません。

でも今、250㏄を中心にバイク人気が盛り返していますし、身の回りに「バイク+若い人」って逆に増えてきている気がするんです。

近年嬉しいことに、モーターサイクルショウも鈴鹿の8時間耐久レースも、来場者数が昨年を上回っていますよね。

そんなことから「若者の~離れ」という言葉というが本当なのかどうか、筆者は極めて懐疑的です。

今回はMOTONAVI誌の特集記事に思ったことや、バイクラブフォーラムを取材して得た情報をもとにしています。

皆さんもご一緒に「若者のバイク離れ」を缶蹴り鬼の缶のように、はるか彼方へ蹴っ飛ばしてやりましょうよ!




目次

MOTONAVI誌に突き動かされて

そもそも、このブログを書き始めたのも、元の職場に来ていたアルバイトの学生さんたちに本当にバイクが好きな子が多かったからなんです。

「おっちゃんの若い時みたいなバイクバカ」達を可愛く思いながら、この子らにもバイクで楽しい経験いっぱいしてほしい。

自分の歳になってもそれが続いて、またそいつらが次の世代につないでいく。

「世代を貫いてバイクってものがずっと楽しく愛されているといいなぁ」。

ブログの名前を「TIMEWARP RIDERS CLUB」と名付けたのはその願いがあったからなんです。

「若者のバイク離れ」と言われるにに反して、筆者の周りではバイクラブな若者ってこれまでになく増えている。

そんな「実感」があるんです。

そんな中目に飛び込んできたMOTONAVI誌(2017年10月号)の表紙。

MOTO NAVI (モトナビ) 2017年 10月号 [雑誌]

表紙に大きく書かれた「若者がバイク嫌いなわけないだろう。」という文字が…。

それを見たとき、思わず「おぉぉぉぉー!!!」と声を上げてしまいました。

「やっぱり、自分と同じことを考えてる人っているんだぁ」と妙に安心しましたし、こんなストレートに言えるのってカッコいい。

自分もバイクの物書きの端くれとして、「そうだそうだ、そうに違いない!」と発信しようと決めました。

しかし妻には、「こんなにしっかり書かれた記事、あんたごときに同じ真似は出来ないわよ」と釘を打たれてしまいます。

言語学や広告に関する著作を複数もち、大学の商学部で教鞭をとる妻に言われればグウの音も出ません。

確かにアマチュアライターには到底太刀打ちできない取材力・そして構成力。

読むすすむにつれ、それは妻の言う通りだと思いました。

若者の声を「飛行石」にしたMOTONAVI誌

端的にMOTONAVI誌の凄いのは、「若者」に実際に数多く話を聞いてその「声」を集め、それらを力強くまとめ上げているところです。

例えば「若者がバイク嫌いなわけないだろう」というこのコピー。

これは確固たるデーターに基づいた話ではなく、 「願望であって、結論ではない」 のだそうです。

巻頭で河西啓介編集長は、

バイクはかつて将来を熱く夢見る若者たちの手の中にあったもの。

若者の貧困」「将来への不安」といった切実さを抱える現代の若者にも現状に風穴を開ける「武器」そして「相棒」としてともにあるべきだ。

と力強く語っておられます。

今のネガティブな傾向は、実は当の「若者」を差し置いて、周りの大人が購買データーをそのまま若者の傾向として勝手に同期させたもの。

若者が離れた?離れたくて離れたの?

つまり、買う買わないという行動には主人公たる若者の意思のあり方を傾向としてとらえる必要があると筆者にしても思うわけです。

MOTONAVI誌では、若者そのものの中に分け入って声を集めることで、その矛先が少しでも変わるのではないか?

ということで確実にその声たちをまとめ、バイクを「未来への希望の象徴として」描き出しています。

それはまるで、宮崎駿のラピュタに出てくる「飛行石」のごとく一筋の光で行くべき道を指し示しているかのよう。

そう思わせてくれるところが凄いんですよ。

「大げさだろ」と思う方は是非じっくりと読んでみて欲しいと思います。

生意気ながら当TIMEWARP RIDERS CLUBも弱小ばがら、積極的に取材を行っています。

それはやはり、「生の声」以上に勝る力はないと思うから。

故に今号のMOTONAVI誌には猛烈に共感しているのです。

「若者ライダー」の声に「おじさん」の在り方をみた

MOTONAVI誌文中、おじさんとして思わずハッする文章に出逢いました。

それは4人の20台のライダーの会談をまとめた記事の見出し文。

「今こそ世のおじさんたちは責任をもって自分の世代のツケを清算して、若い世代のライダーを引っ張っていって欲しい」

一番付箋が多いのが実はこのページだったりします。

この表題はおじさんにとってはちょっと手厳しい意見。

「エー、なんでぇ?」と心が騒いだり、色々な感情が湧いてきて、どんどん引っ込まれていきました。

あくまでそれは、この記事に登場する4人の若者とその周辺の意見なのかもしれません。

でも結局、「なるほど、若い子たちは今こういうふうにバイクを愉しんでいるのだね。」

というイメージというか「若い世代の輪郭?」、そしてその受け入れ方が分かった気もします。

でも面白いのは「若者だってバイクが好きだよね」という答えを探るうちに、気付くと「なるほど、おじさんとしても考えを新たにせねば」と奮起させられている点。

「バイクは一歩上をいくためのツール」

例えば「バイクを持つと、モテるのか?」という話題。

これについてある若者が「ヤツは周りよりも一歩上の道具を持ったと一目を置かれ、それが大人ぽさに見えてモテる感じはある」と言います。

モテることにつながれば羨ましい限りですが、「大人っぽさを醸し出すツール」としてのバイクが、彼らの間にも まだ あるんだなぁと懐かしく思いました。

これは筆者の昭和の青春のお話し。

中学からつるんでいた友達が、一人また一人と進学の奨学金を得るために新聞配達をはじめたことで、仲間の間にスーパーカブやタウンメイトがやってきます。

いつしかそれがFZ400やらSRX-4に化け、その背中に乗りながら彼らの自活するアパートに遊びに行った二十歳前。

親元を離れ、バイクに乗って大人になっていく友達の背中を追いかけたことが、筆者にとってバイクとの関わりの始まりだったんです。

「少年を大人にするツール」として、今もバイクは若者の傍らにあり続けているんだとこれを見てうれしく思いました。

モテるかどうか?はおじさん考えなかったなぁ…。

ただ、世代の背景もいろいろ違うので、そのままの尺度で見るのは彼らにしたらやはりウザいらしいですね。

バイクは自分を表現する手段

記事の中である若者が、「自分を表現する手段としてバイクと付き合っていきたい」と言います。

やはり「自分を周りよりちょっととびぬけたところに置いておきたい」という気持ちが若い筆者にもありましたし、痛くそれはわかりますね。

ただ、耳の痛い話としては、「年上のライダーはスタイルであったり乗り方であったり、自分たちの作ったルール?をお仕着せてくるのにはうんざりだ」というわけです。

「金八世代」でもある我々にとって、ある時バイクは管理教育で上から覆いかぶさるものへのアンチテーゼであったりなかったり…?

しかし今では「好きに乗らせてくれよ!」と言われ、ウザさを醸し出す立場になっている。

バイクで自ら世間の風を感じて、自分で選んでいきたい。

思い出してみればそれって今も昔も関係ないですよねきっと。

いつものまにかおじさんになって若い世代を型にはめてみるようになっているとしたら、ちょっぴり悲しいですね。

もう一回、尾崎豊の「遠い空」を聴き直したくなったりして…。

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彼らが考える前世代の「ツケ」

文中には、「80年代の若者が峠で事故って交通規制や3ないなど、社会にバイクへの悪印象を与えた」という意見もありました。

白状すれば筆者にしても、名だたる峠に遠征までしていたのは一昔前?ふた昔前?

二輪が通れない道があるのは、確実に若い彼らのせいではありませんね。

若い世代はしっかり見ていますから、そこは懺悔と共にこの先のおじさんとしてしっかりしようと思います。

辛いご批判もありますが、甘んじて建設的にとらえていくと、おじさんの在り方についてもその「飛行石」がピッと光を指している。

そんな風にも思えます。

おじさんには「見られている意識」が必要?

確かにちょっと色々耳の痛い話もあります。

でも「おじさん達には見られているという意識を持ってほしい」この意見には射抜かれましたね。

これはファッションセンスとしてもそうだと思うのですが、バイクに乗ってる人をみて、「あ、この人自分のスタイルちゃんと持っててカッケーなぁ」って、同世代から見ても思うことってあると思うんですよね。

「『バイクに乗る人ってカッコいいなぁ』と思わせてくれる大人なライダーが増えれば、バイクにあこがれる若者だって増えるはず」

つまりこれが「若いライダーを引っ張ってほしい」、そう彼らがおじさんたちに願うことなんだそうです。

うーん、「見られている意識」を?

その辺は適当すぎたなぁ。

ひとまずビールとラーメンで造った腹を引っ込める?

いや、もっとトータルな話?

実はこの言葉に、筆者は最も刺激を受けていたりします。

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平成÷昭和末期=「ワカモノの~離れ」

筆者の若い時分、周りの大人たちは我々に「新人類」というあだ名をつけ、奇異な目を向けたものです。

新人類」が「ステルス」を語ってはいけない

今の若者を巷では「ステルス世代」と呼ぶのだと、どこかのラジオが言っていました。

「なかなか心のありかが掴みずらい?」、ということでレーダーに感知されにくいステルス戦闘機に倣ってそういうのだそうですが、そんなどうなんでしょう?

どうせなら我々も「ニュータイプ」くらいがよかったなぁ…。

というのは冗談で、新人類」って呼ばれたことだって、十把一からげにされるのは大きなお世話じゃなかったですか?

だから「ステルス」だなんて、古くなった「新人類」に言われる今の若者も、きっと不愉快に違いありません。

いつの世もこうして、古い人たちは若者を観ているようでいて、実は若者の姿そのものを観ずにグロスでくくってどっかに放り投げようとする癖があるよう。

それも、自分の若い時の記憶を尺度にキャッチコピーを考えては毎回それをとり替える。

例えば「若者のバイク離れ」という言葉もそのうちの一つなんだろうと思います。

「若者のナントカ離れ」と実感の差

若者をかつての価値観で語ることが到底無理な場合があるということを知っておいてほしいんです。

その初級理解としては「世代の姿とその違い」を見ることが近道でしょう。

下のグラフはわが国の人口ピラミッド。

この中では特に、免許を取り始める10代後半から30歳手前の層の変化に注目してください。

まずは「新人類」がまだ新たしかった1990年のグラフ、筆者もまだ大学生でした。

それが25年経った2015年はこうなっていました。

参考元;(上)http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/1990.png
(下)http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2015.png

多いところをとっても男女でなんと100万人近くも減少し、恐ろしいことにこの先、もっともっと減っていきます。

要するに、「バイクに乗る若者が減った」のではなく分母たる若者そのものが激減しているのを忘れてはいけないんです。

おじさんたちが「若者のナントカ離れ」と騒いでも、その原因を若者の意思だけに求めるのは無理があります。

だから筆者の周りにもたくさんいるように、この割合の中でもバイク好きの若い子たちだって一定数ちゃんといるわけです。

「ナントカ離れ」と実感の差ってきっとそういうことなんだろうと思います。

「若者のバイク離れ」につける薬とは

こうして世代の姿が変わっていることは購買に対する思考に大きく影響を及ぼしていると言えます。

しかしそれ以上に、「若者のナントカ離れ」の原因ではいつも大きな要因が見過ごされています。

「若者のナントカ離れ」その核心構造

2017年9月16日、一般社団法人日本二輪車文化協会が主催する第5回「バイクラブフォーラム」(BLF)が群馬県高崎市で行われ、筆者はこれを取材しました。

今回のBLFについてはまた別の稿で詳しくお話をすることにします。

この中で、「若者のバイク離れとは何か?」について大変に意義深いお話を伺いました。

「三ない運動」を撤廃した群馬県条例をモデルに、安全教育をどう推進するかというのが今回のBLFフォーラムのメインテーマでした。

メーカー関連団体幹部職員・県教育委員会・省庁・県警などの高官が集まり、バイクを若者に振興し安全を高めていく「仕組みづくり」を中心に話が進んでいきます。

そんな中、株式会社リサーチ・アンド・ディベロップメント ビジネスプロデューサーの堀 好伸 氏の講演が会場の関心を集めます。

堀 氏は若者との2000時間を超える対話し、「主人公たる若者の声」から消費行動にまつわるデーターを解析し、「若者のナントカ離れ」の核心構造を詳細に説明してくださったのです。

ちなみに、堀  氏は『若者はなぜモノを買わないのか(「シュミレーション」消費という落とし穴)』という本の著者でもいらっしゃいます。

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結論から言えばそれは、デジタルツール(特にスマホ)が若者の思考の中に、リアルとバーチャルに分かれた世界観を形成したことが大きいと言います。

デジタルワールドに育つこと自体、昭和世代の経験では描けない世界。

かつて若かったはずの中高年が今の世代を一括りにして、言ってしまえば異星人的に扱おうとするのはそれが原因だというわけです。

確かに今の若者たちはデジタルツールにかなり依存した形で育っていますよね。

我々中高年もだいぶ染まってきてはいますが、これは人生の中途からなはずです。

しかし、そうした環境で生まれ育つのは中途からとはわけが違ってくるんです。

彼らが何か行動を起こすにはまず、「良いのか悪いのか、損なのか得なのか」をスマホで情報を確かめてからということになります。

例えば「買う」という行動の前に、文字や画像として情報を仕入れて、ヘタをすればたくさんの情報を見ただけで満足したり飽きてしまったり…。

結局それで、『生活に必要なものだけは手に入っているからいいや』ということにもなるわけです。

しかし彼らがその時手に入れるのは、あくまで文字・映像による情報であって、例えば商品そのものを手に取って吟味するわけではないですよね。

つまりそれはバーチャルな中でいい悪いを判断して終わってしまい、彼らの感覚には実感を伴わないものの割合が多くなっていくわけです。

でも、当の若者はツールを使ってそう判断するという常識に倣っているだけ。

若い時にそんなツールがなかった大人がこの世界を想像できるでしょうか?

要は大人の思った通りの消費傾向とは違った形でになるのは当然だというわけです。

つまりこの大人と若者の感覚のズレが「若者のナントカ離れ」の核心構造。

しかもそれは紛れもなく大人が作り上げた「仕組み」で、「若者のナントカ離れ」をつくったのは大人の側ではなかと堀 氏は問いただします。

「オトナを見つめ直す」という良薬

堀 氏の調査によると、彼らは話を聞く中で口々にそれを「満足」と答えるけれども、実感を元にしっかりとイメージできる満足感には至っていないのだと言います。

つまり、情報はデジタルに変換可能なものしか彼らには入らない。

例えばバイクというものもそうで、「生活に必要か」・「損か得か」という極めてデジタルな情報で、実物の感想を得る前に終わってしまうことになります。

しかし今実際には、東京・大阪ともにモーターサイクルショーの入場者は右肩上がりに増加し、高校生の占める割合も大きくなってきています。

またバイクの販売台数も各社の250㏄スポーツが好調で、購買層のほとんどは若年初心者です。

この結果に至るロジックは何か?

それはSNSで、バイクについての話題で共通項が持てることを彼らが見つけ出し、しかもそれを拡散していけるようになったことだ堀 氏は言います。

例えば「バイクでツーリングをして景色がきれいだった」とか、「バイクで美味しいものに出逢った」などいずれも実体験を伴う情報。

バイクの性能や値段ということよりも、「バイクでこんなに楽しめる」というリアルの体験が、若者を強く引き込んでいるというわけです。

端的に言えば、バーチャルに飽きたというか、実体験で楽しむ機会に飢えていたことに若者たちの前に、バイクはリアルな発見をするためのツールとして相当に刺激的なものなわけです。

「若者のバイク文化の再燃は始まっているので、業界の方々はどうか自信をもって欲しい」と、堀 氏は集まった業界関係者、そしてバイクファンにエールを送ってくれました。

まとめ

年代構成的に、今若者と呼ばれる人たちは、80年代バイクブーム直撃世代のジュニアたちです。

MOTONAVI誌の中にもそういう方がいらっしゃいますし、小さい時から家にバイクがあるのが自然だったという人はこれまでになく多いはず。

実際、筆者の元の勤め先にバイトに来ていた子たちも、お父さんはやはりバイクや車が好きで家に親のバイクがあると口をそろえて話していました。

SNSなどでも、高校を卒業したくらいのご子息と一緒にバイクに乗ってきた人の投稿を以前より多く目にしますよね?

つまり、バイクの楽しみをリアルに知っている若者がこれまでになく多い時期に差し掛かったということも言えると思います。

一方で経済的な面や、社会保障の先細りが心配される中で、バイクに出逢うことができない若者も多くいるのも事実です。

MOTONAVI誌の冒頭で河西啓介編集長がおっしゃっていましたが、「バイクは確実に若者をそんな現状から連れ出し、明日への光となりうる最高のツール」

実体験というかリアルへの冒険を今の若者は望んでいるわけです。

それは実に筆者の「体験」でもあります。

新聞奨学生に時代から、SNSへ。

「バイクの入り口は相当違うけれど、結局バイクで手にモノつかみたい若者がたくさんいる。

それは、昔とそう変わりがないんじゃないでしょうか。

しかし反面、「三ない」の後遺症か「バイク⇒危ない」で終わる人も大勢います。

それでも、今バイクってやっぱり来てるんですよ。

BLFで堀 氏は、『大人には昔を尺度にして「昔はこうだった」ということよりも、「今、どうなっているのか」を見通す力が必要です』とおっしゃって講演を結ばれました。

かつて「金の卵」とか「新人類」と呼ばれた中高年ライダーの皆さん!

「聞き手に回って、背中で魅せる」

そんなライディングで若い人たちを応援しましょうよ。

そうすればバイクはまた、もう一山もふた山も盛り上がり、未来につながっていきます!!


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