TIMEWARP RIDERS CLUB

バイクは少年を大人に、大人を少年に還す。

ホンダモンキーついに生産終了!環境規制の功罪と原付の将来像とは?

2017年夏。

発売から50年という長きにわたって愛されてきたHondaのモンキーが今年生産終了を迎えました。

あんなちっちゃなエンジンに環境規制って必要なの?

「いじって楽しむ」というバイク文化の一端はどうなるの?

原付一種(50㏄)は今後と125㏄化しちゃうわけ?

この話題にはいろいろな疑問が絡んでくるわけですが、今回はそういった疑問についていろいろ考えていきます。




 モンキーは無二の文化

Hondaは先ごろ行われたモーターサイクルショー2017の会期中に「モンキーを今年発売分をもって生産終了とする」と発表しました。

モンキーの時代

Hondaのモンキーと言えばおもちゃのような可愛らしさが人気の小さな原付バイクですよね。

今年は初代の発売からちょうど半世紀。

参考元;http://news.bikebros.co.jp/event/news20090630-2/

東京日野市にあったホンダのテーマパーク「多摩テック」(2009年9月閉園)のいわば遊具として開発され、元々「おもちゃ」だったこのバイクを1967年に「ℤ50m」として市販化したのがはじまり。

今も複数のアフターパーパーツメーカーが無数のパーツ群が存在し、思い思いにカスタムを楽しんだり、年代ごとの違いを愉しんでコレクションしたり。

参考元;http://www.bikebros.co.jp/vb/fifty/fpc/fpc-119/

そういったマニアのコレクションの中には、相当のカスタムには時として100万以上の値が付くものまで存在します。

バイクファンだけでなく非常に多くの人々に愛され車以上に、「遊び心を形にする」というバイク文化の象徴ともいえる車種です。

モンキーを絶版に追い込んだもの

まだまだ人気のある車種。

当然ながら廃盤を惜しむ声も多く聞かれますが、なぜこのような決断に至ったのでしょうか?

その当たりを東京モーターサイクルショーのモンキーブースでホンダの技術説明員さんに伺いました。

「度々厳しくなる環境基準に適合するべく、これまでも様々な対策を盛り込んで改良を重ねてきました。

もともとモンキーは初期型が発売された50年前の交通法規に準じて作られたものなんですよ。

折り畳み式ハンドルとかこの小さなフォルムも当時の法規で造っていたからこそできるものなんです。

ただ環境基準の強化に待ったはありません。

今後の環境基準に合わせるには、モンキーを根底から作りかえる必要があるため、もうこの形式の更新という形で存続させることが不可能になったのです。」

大変解り易いお話しを本当にありがとうございました。

モンキーのような小さなバイクでも例外なく強化される環境基準っていったいどんなものなんでしょう?

最初は大気汚染防止が主眼だったのに…

1992年からヨーロッパではEU指導のもと、乗用車に対してガソリンエンジン・ディーゼルエンジンの排出ガス基準を設けて段階的に強化していくユーロ1という規制の枠組みができました。

日本でも大気汚染防止の観点から、日本独自の法規制を、主にトラックやバスを中心としたディーゼル車に対して厳格化していきました。

バイクに関しては主に、1998年125~250㏄の2ストロークのバイクを中心とする大きな規制があって、その翌年1999年には原付から250以降すべてのバイクが規制の枠組みに入ることとなりました。

この結果、4ストローク車種の場合は排気管に新鮮な空気を取り込むパイプを追加するなど、多くの車種でこうした小規模なマイナーチェンジが行われるだけで当時の規制をクリアできましたが2ストロークはほとんどの車種が廃盤となっていきました。

車体を軽く小さく造ることができ、高出力で機敏な走りができることで人気を博した2ストロークの人気車種でしたが、当時の温暖化への厳しい風潮が2ストローク車の煙と騒音を許さないのはある程度仕方ないというユーザーの声も多かったようです。

↑惜しまれながら俊足の2ストロークは終焉を迎えた。

こうして多くの人の目にもわかる形の排ガス規制はユーザーの側でもある程度納得のいくものでしたが、以降の環境規制は国連レベルの国際的な枠組みに組み込まれ、少々不可解なものになっていきます。

環境基準の独り歩き

二輪車に対して環境規制が求める数値の変遷を下記の表に大まかにまとめてみました。

CO値 HC値 NOx値

1998年
排出ガス規制値

←いずれも
126~250㏄
までを規制
13.0 2.00 0.30

1998年
(2スト)

(8.0) (3.00) (0.10)
2006年 排出ガス規制値
(京都議定書に準ずる)
2.0 0.30 0.15
2012年 排出ガス規制値
(ユーロ3)
2.62 0.27 0.21
2016年 排ガス規制値

(ユーロ4)

クラス1
(50~125㏄)
1.14 0.30 0.21
クラス2
(150~250㏄)
1.14 0.20 0.17
クラス3
(251㏄~)
1.14 0.17 0.09
2020年
排気ガス
規制値目標
(ユーロ5)
1.00 0.10 0.06

数値参照元;http://bike-lineage.jpn.org/etc/bike-trivia/gas_regulation.html

京都議定書は何を守りたかったのか?

2005年から2012年まで地球温暖化防止の為に温暖化ガスの排出に規制をかける京都議定書が発効されました。

これを受けた2006年の排ガス規制値は、排出ガスをなんと1998年の値の約1/6 に低減させるというもの。

参考元;http://www.plus-ondanka.net/c01_cop3.html

上記の表を見ていただくと、その規制目標は全くけた違いで尋常ではないほど厳しい値なのがお分かりいただけると思います。

これはいわゆる京都議定書が我が国に課したCO2総排出量―6%という実情よりも数値上位主義の政策で、ユーロ2・3規制とはまた別の枠組みとなり世界一厳しいと言われたものでした。

この基準をクリアするためには、すべてのバイクは結果的にNOxとHCとCO2を分解できる3元触媒と、多数のセンサーの情報をコンピューターで制御しながら燃料を電子的にエンジンに供給する「電子燃料噴射装置(以下インジェクション)」を備えなければなりません。

参考元;http://www.honda.co.jp/news/2000/2000119.html

(↑2000年当時最高水準の環境性能をうたって登場したVFR800 の3元触媒、これですら後に更新された基準では生き残れなかった。)

また当時、これらは乗用車を前提とした装備で小型化が進んでいなかったため、2輪車への搭載は技術的に難く膨大な開発費が必要になるものでした。

特に3元触媒は希土類を多く含むため高価かつ重量がかさむため、軽量化によって運動性能を向上させてきたバイクにはかなりの痛手となります。

2006年は既存車の規制対応期限を待って多くのメーカーが既存車種のマイナーチェンジで2008年までをしのいでいきますが、

これらの膨大な費用を伴う開発を急務とされたため、規制に対応し生き残これたのはメーカーの看板車種のうちの僅かのみ。

環境対応が行われないまま容赦なくほとんどの車種は更新されず廃盤になっていきました。

軽さやコンパクトさを売りにしてきた車種たちもこの時期のモデルチェンジから、触媒のおかげでマフラーが異常に大きく重たくなり、それを何とか小さく見せようとする車体自体もそれまでより大きいものになっていきます。

それ以上にバイクの値段が一気に値上がりし、中にはこの時期25万円~30万円も価格が上昇した車種も見られます。

原付であるモンキーでも触媒とインジェクションを備えトータル価格はほぼ30万円近辺となりました。

お上の言い分

一方、国土交通省の中央環境審議委員会はこの年の基準設定について「自動車排気ガスの総排出量30万トンのうち、20%は二輪車に寄与するところが大きい」と説明しています。

つまり、ただでさえ危機的なまでに販売が低迷している原付・自動二輪車が年間6万トンもの温室効果ガスを排出するという奇怪な論拠をうちたてて、ここまで無慈悲な規制を業界に課したわけです。

真相は定かではありませんが、一説に議定書に対し、産業・運輸業界の反発もあり、当たりの弱いバイクの数値を大げさに言うことでこのような無慈悲な規制が敷かれたともいわれています。

バイクが6万トンも温室効果ガスを排出するという話よりは信じやすい話に聞こえなくもないですよね…。

2012年以降のユーロ規制採用で斜陽感も一服?

日本の規制が海外の規制より厳しくなったため、それまで輸出仕様車を逆輸入してそのまま国内で販売することもまた難しくなりました。

海外と日本の両方の規制を課され、メーカーはコストをかけて日本の法規に合わせた「国内仕様車」を用意することになるのですが、重たくてパワーの無い国内仕様車には人気が集まらず、相当数の不良在庫を発生させるメーカーもあったほどです。

しかしその足かせとなっていた京都議定書が2012年に失効。

これ以降は二輪業界の主張もかなって国連の諮問機関WMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycleによりヨーロッパを中心とした基準(ユーロ4)に一本化されました。

これによりヨーロッパの基準=ほぼ日本の基準となったことでメーカーのコスト負担が減り、同時にクラス分けによる基準が設定されたので、規制の数値目標が例年よりが幾分か緩和されることになりました。

このことも要因してか保有台数から見るバイクの現象もやや歯止めがかかったように見えます。


環境規制導入からのバイク出荷台数の推移

原付Ⅰ種 原付2種 軽二輪 自二 合計
1998 740,702 177,314 64,428 74,642 316,384 1,057,086
1999 609,943 104,463 50,417 58,173 213,053 822,996
2000 564,881 101,008 74,335 46,545 221,888 786,769
2001 535,690 78,355 79,202 48,587 206,144 741,834
2002 538,220 94,792 94,056 46,241 235,089 773,309
2003 539,004 87,893 88,455 43,148 219,496 758,500
2004 495,999 63,250 97,777 39,169 200,196 696,195
2005 476,341 87,734 98,926 47,743 234,403 710,744
2006 465,003 84,001 91,341 48,738 224,080 689,083
2007 451,497 103,742 86,164 40,831 230,737 682,234
2008 299,544 117,705 54,450 47,900 220,055 519,599
2009 248,928 70,997 36,294 21,703 128,994 377,922
2010 234,845 95,055 27,003 26,025 148,083 382,928
2011 255,513 94,166 32,211 20,911 147,288 402,801
2012 248,060 88,748 41,035  25,294  155,077 403,137
2013 237,104 103,629 48,971 33,413 186,013 423,117
2014 229,318 93,566 52,206 37,849 183,621 412,939
2015 185,969 96,372 47,868 35,220 179,460 365,429
2016 165,741 100,365 39,925 34,186 174,476

参考元;http://www.jama.or.jp/industry/two_wheeled/two_wheeled_3t1.html

大まかに解説するとこういうことです。

国産バイクの総出荷台数は既にバイクブーム終焉から時間が経過していた1998年の35%と猛烈に減少したことがわかります。

本文の趣旨から見て興味深いのは、2005年ころから続く原付1種(50㏄)が大幅に衰退と原付2種の躍進です。

世界的に厳しい環境規制に加え、社会情勢の変化で原油価格高騰という要因も加わり、バイクだけではなく乗用車の使用傾向にも大きな変化がありました。

2006年の規制に合わせ、多くの50㏄スクーターの主力車種が2007年に4スト化されると、翌々2008年にはなんと一気に約15万2千台も需要が落ちていきました。

そのかわり、原付Ⅱ種の中でも100㏄のスクーターは125㏄に排気量を増して、俊足性はそのままに少しゆとりのある車体になって置き換えが進みました。

125㏄の盛況ぶりとは裏腹に毎年数万台単位で出荷数を減らしていく50㏄。

危機的状況と言われるその状況が実に深刻であることが分かりますね。

メーカーも原付125㏄化に期待?

流石にこの状況をバイク業界も静観しているわけにもいきません。

2016年初め、これまでライバル関係にあったヤマハ発動機とホンダが業務提携発表したニュースはバイクファンのみならず多くの人々を驚かせました。

参考元;http://response.jp/article/2016/10/05/283046.html

これは明らかに危機的な原付50㏄の市場を動向を見て、トップメーカー2社が部品供給などで協働し、OEMで共通車種の販売を行い、市場を死守しようとするものです。

既にここまでしなければ原付一種は生き残ることができない状況。

主にスクーターについてはこの方法で温存?させることになりました。

昨今の原付の状況から、国やメーカーは「原付の枠組みを125㏄まで拡大する」、あるいは「乗用車免許に125㏄までの二輪免許を付帯させる」ことをという噂もまことしやかに流れています。

それを象徴するかのように、2016年にバンコクモーターショーにおいて125㏄のグロムをベースとしたモンキーの125㏄版がコンセプトモデルとして発表されています。

参考元;http://kojintekibikematome.blog.jp/archives/57449338.html

これまでもホンダは50㏄で廃盤とした車種を110㏄以上の原付2種モデルとして主力に据える動きを見せています。

この動きからもメーカーとしては原付50㏄にいつでも見切りがつけられる体制を整えているかのようです。

このまま環境規制が強化され続けると、50㏄ではそのコスト増に耐えうる車種はなくなってしまうのは確実でしょう。

確かにこの動きはある程度現実的だとも思います。

原付=50㏄という思考停止状態

現在も原付や大型以外の普通二輪の免許が16歳で取得可能なのは、戦後まもなく「金の卵」と言われて地方から大都市にやってきた集団就職の若者の仕事の幅を広げるべく便宜が図られた名残です。

時代はめぐって日本は豊かになったと言われますが、一方では若者の貧困の問題が新たに起きています。

おそらく原付が登場した当時の貧しい時代のように、ある一定数の中卒就労者の為にも講習のみで簡単に取得できる免許制度の保全は必要でしょう。

また現状、グローバルに展開できセールスも好調な125㏄クラスですが、特に日本人の主婦層の平均的な身長を思えば125㏄より小ぶりで安価な車両は潜在的な需要を持っていると筆者は考えます。

排気量の数字に目を向けるのであれば、原付一種の枠組みを50㏄⇒85㏄というように柔軟に改められないかと思います。

例えば、90㏄~100㏄の2ストロークを主軸においていた規制前の原付2種は、125㏄まで拡大して4ストローク化することでそれまでの動力性能を確保したわけです。

そもそも50㏄のまま4ストローク化した上、吸排気機構にデバイスを課したのが間違いです。

これがコスト増と動力性能の低下、ひいては出荷台数の大幅な低下を招いたと言って過言ではないでしょう。

EUと国交省にモノ申す(まとめ)

先日筆者はホンダの4ストローク25㏄エンジンのついた草刈り機を買いました。

「そんなに言うならこの草刈り機だってインジェクションと重たい触媒マフラーを付けて水冷にしたらどうだ?」

参考元;http://www.keiyo-parts.co.jp/honda_trimmer_umk425_uvjt.html

本当に規制が環境本位のだというなら、この主張も単なる冗談ではないはずだと思ったりします。

実際そんなものは重たくて扱えないでしょうけどね…。

新たに規制を設けなくとも原付50㏄は毎年数万単位で数を減らしているので、すでに環境対策の進んだ50㏄の原付が地球温暖化に影響する脅威にはなり得ないのは明々白々ではないでしょうか?

国際的なグローバリズムの中で、包括的に統制されていますが、目標とする数値目標は各国の実情において柔軟に猶慮されることがあってもいいのではないかと思います。

モンキーに話を戻せばもう少し頑張れば250㏄が買えてしまいそうなほど高価なおもちゃになってしまいました。

今回のモーターサイクルショーのモンキーブースにはたくさんの人々が押し寄せ、懐かしんで仲間に自分のモンキーとの思い出を語る人もあれば、「初めて見たけどこれ超カワイイ!」といろんな角度から写メを撮ってる若い女の子。

悲喜こもごもの思い出を持っている人が集まりました。

「原付ならば日常の足」それでも十分ですが、モンキーのように最初からおもちゃの要素を持って誕生し、カスタムベースとしてもそうですが、ある意味「モノづくりの国の文化の象徴」として他のどんな乗り物よりも愛されていたものだと思います。

モンキーを含め、多くの人の相棒としての原付バイクが、グローバルな環境規制の設定数値によってなくなってしまうというのは実に切ないことです。

あるいはそれは過度で根拠の不明瞭な環境規制が当該産業を大きく衰退するという端的なモデルケースなのかもしれません。

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